ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん

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「仕方ない。仕方ない。言い訳しない。人のせいにしない」
 私がそう呟くと、横にいたイブが「何か言った?」と私の方を見る。
「ううん、独り言。それよりごめんね。わざわざ我が家へ来てもらって。なるべく家から出ない方がいいと思って…」
 マルセル公爵家の厨房で、私はスコーンの生地を混ぜていた。
「私もクラリッサと会いたいと思ってたから大丈夫よ。それに仕事中のジョーンズ様を見られてラッキーだわ」
 私の隣で同じく生地を混ぜていたイブは、私の耳元に顔を寄せて小声で言う。
 私の護衛に付いているジョーンズ様は、今は厨房の外の廊下に立っていて、イブはそちらに視線をやると嬉しそうに肩を竦めた。

「んー!自分で焼いたスコーンは格別に美味しいわ。それにこのベリージャムも美味しい!」
 焼けたスコーンと紅茶でお庭の四阿でのお茶会開始。
 ジョーンズ様は私たちの話声が聞こえない位置で待機している。
「ジャムも作ったの。外に行けないから良い気分転換になったわ」
 それから近況を話し合ったりしていると
「お姉さま~」
 と声が聞こえた。
「ロレッタ」
 屋敷の方から銀の髪をなびかせて、もうすぐ九歳になる妹のロレッタが駆けて来る。
「どうしたの?ロレッタ」
 やって来たロレッタは私の腿に手を置いて私の顔を見上げた。
 はあ~かわいいわ!さすが末っ子、甘え方を心得てる。
「あのね、わたしイブお姉さまに聞きたいことがあるの」
「私?」
 イブが自分を指差すと、ロレッタは照れたように口元を押さえた。
「イブお姉さま、あのね、わたしも騎士さまと結婚したいの。どうしたら結婚できますか?」
 モジモジしながら言うロレッタ。
「え?」
「だって…ルカがこのえ騎士になるって言うの」
「ルカ?」
 首を傾げるイブ。
「ルカって、ロレッタのお友達のルカリオくんの事よね?」
 あーそういう事か、と思った私がロレッタに聞くと、ロレッタは恥ずかしそうに頷く。
 ルカリオくんはロレッタより一つ歳上の子爵のご子息だ。教会の慰問などで仲良くなったロレッタにとっては幼なじみの男の子。
 つまりロレッタはルカリオくんの事が好きなのね。
 公爵令嬢であるロレッタと子爵令息のルカリオくん。例え好き合っていたとしても結婚は難しい。
 でもルカリオくんが近衛騎士団に入れば、結婚もあり得る話になる。それくらい近衛はエリート集団なのだ。
 ルカリオくんがロレッタのために近衛を目指してるのかはわからないけど…
 ルカリオくんについてイブに説明すると、心得たとばかりにイブはロレッタに向き合った。
「そのルカくんが近衛騎士になるなら、ロレッタちゃんはそれまで他の人と婚約とかしないで待ってると良いわ」
 イブが人差し指を立てて言うと、ロレッタの顔がパァッと明るく輝く。
「本当!?」
「本当よ。ルカくんにもロレッタちゃんを好きになってもらわなきゃ駄目よ?」
「うん!がんばる」
 拳を握るロレッタはとてもかわいかった。

 ………あ、もしかして、伯爵令息のネイト様も、格上の侯爵令嬢であるレオノーラ殿下を娶るために近衛騎士になったんじゃ…?
 幼なじみだもん、ネイト様は幼い頃からずっと…私がアルヴェル殿下を好きだったようにレオノーラ殿下を好きなのかも知れないわ。
 私がそう思って落ち込みそうになった時、屋敷の方からザウル様がやって来るのが見えた。
 あら?もう交代の時間かしら?
 夕方が交代で直帰だってジョーンズ様仰っていたから、学園で放課後デートしてる他の生徒を羨ましがってたイブと一緒に帰るように促そうと思ってたのよね。
「どうしたんだ?」
「それが…」
 ジョーンズ様がザウル様に声を掛けると、ザウル様は私の方をチラッとみてからジョーンズ様に耳打ちをした。
 それから、真剣な表情で、二人で私たちのいる東屋へ来る。
「…ロンダムの姿が見えなくなったそうです」
「!」
 ジョーンズ様が低い声で言う。
「マルセル公爵家の敷地内へは容易には入れないでしょうが、念の為すぐに中へ」
 ザウル様に促されて、私たちは急いで屋敷へと戻った。


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