15 / 25
14
しおりを挟む
14
「仕方ない。仕方ない。言い訳しない。人のせいにしない」
私がそう呟くと、横にいたイブが「何か言った?」と私の方を見る。
「ううん、独り言。それよりごめんね。わざわざ我が家へ来てもらって。なるべく家から出ない方がいいと思って…」
マルセル公爵家の厨房で、私はスコーンの生地を混ぜていた。
「私もクラリッサと会いたいと思ってたから大丈夫よ。それに仕事中のジョーンズ様を見られてラッキーだわ」
私の隣で同じく生地を混ぜていたイブは、私の耳元に顔を寄せて小声で言う。
私の護衛に付いているジョーンズ様は、今は厨房の外の廊下に立っていて、イブはそちらに視線をやると嬉しそうに肩を竦めた。
「んー!自分で焼いたスコーンは格別に美味しいわ。それにこのベリージャムも美味しい!」
焼けたスコーンと紅茶でお庭の四阿でのお茶会開始。
ジョーンズ様は私たちの話声が聞こえない位置で待機している。
「ジャムも作ったの。外に行けないから良い気分転換になったわ」
それから近況を話し合ったりしていると
「お姉さま~」
と声が聞こえた。
「ロレッタ」
屋敷の方から銀の髪をなびかせて、もうすぐ九歳になる妹のロレッタが駆けて来る。
「どうしたの?ロレッタ」
やって来たロレッタは私の腿に手を置いて私の顔を見上げた。
はあ~かわいいわ!さすが末っ子、甘え方を心得てる。
「あのね、わたしイブお姉さまに聞きたいことがあるの」
「私?」
イブが自分を指差すと、ロレッタは照れたように口元を押さえた。
「イブお姉さま、あのね、わたしも騎士さまと結婚したいの。どうしたら結婚できますか?」
モジモジしながら言うロレッタ。
「え?」
「だって…ルカがこのえ騎士になるって言うの」
「ルカ?」
首を傾げるイブ。
「ルカって、ロレッタのお友達のルカリオくんの事よね?」
あーそういう事か、と思った私がロレッタに聞くと、ロレッタは恥ずかしそうに頷く。
ルカリオくんはロレッタより一つ歳上の子爵のご子息だ。教会の慰問などで仲良くなったロレッタにとっては幼なじみの男の子。
つまりロレッタはルカリオくんの事が好きなのね。
公爵令嬢であるロレッタと子爵令息のルカリオくん。例え好き合っていたとしても結婚は難しい。
でもルカリオくんが近衛騎士団に入れば、結婚もあり得る話になる。それくらい近衛はエリート集団なのだ。
ルカリオくんがロレッタのために近衛を目指してるのかはわからないけど…
ルカリオくんについてイブに説明すると、心得たとばかりにイブはロレッタに向き合った。
「そのルカくんが近衛騎士になるなら、ロレッタちゃんはそれまで他の人と婚約とかしないで待ってると良いわ」
イブが人差し指を立てて言うと、ロレッタの顔がパァッと明るく輝く。
「本当!?」
「本当よ。ルカくんにもロレッタちゃんを好きになってもらわなきゃ駄目よ?」
「うん!がんばる」
拳を握るロレッタはとてもかわいかった。
………あ、もしかして、伯爵令息のネイト様も、格上の侯爵令嬢であるレオノーラ殿下を娶るために近衛騎士になったんじゃ…?
幼なじみだもん、ネイト様は幼い頃からずっと…私がアルヴェル殿下を好きだったようにレオノーラ殿下を好きなのかも知れないわ。
私がそう思って落ち込みそうになった時、屋敷の方からザウル様がやって来るのが見えた。
あら?もう交代の時間かしら?
夕方が交代で直帰だってジョーンズ様仰っていたから、学園で放課後デートしてる他の生徒を羨ましがってたイブと一緒に帰るように促そうと思ってたのよね。
「どうしたんだ?」
「それが…」
ジョーンズ様がザウル様に声を掛けると、ザウル様は私の方をチラッとみてからジョーンズ様に耳打ちをした。
それから、真剣な表情で、二人で私たちのいる東屋へ来る。
「…ロンダムの姿が見えなくなったそうです」
「!」
ジョーンズ様が低い声で言う。
「マルセル公爵家の敷地内へは容易には入れないでしょうが、念の為すぐに中へ」
ザウル様に促されて、私たちは急いで屋敷へと戻った。
「仕方ない。仕方ない。言い訳しない。人のせいにしない」
私がそう呟くと、横にいたイブが「何か言った?」と私の方を見る。
「ううん、独り言。それよりごめんね。わざわざ我が家へ来てもらって。なるべく家から出ない方がいいと思って…」
マルセル公爵家の厨房で、私はスコーンの生地を混ぜていた。
「私もクラリッサと会いたいと思ってたから大丈夫よ。それに仕事中のジョーンズ様を見られてラッキーだわ」
私の隣で同じく生地を混ぜていたイブは、私の耳元に顔を寄せて小声で言う。
私の護衛に付いているジョーンズ様は、今は厨房の外の廊下に立っていて、イブはそちらに視線をやると嬉しそうに肩を竦めた。
「んー!自分で焼いたスコーンは格別に美味しいわ。それにこのベリージャムも美味しい!」
焼けたスコーンと紅茶でお庭の四阿でのお茶会開始。
ジョーンズ様は私たちの話声が聞こえない位置で待機している。
「ジャムも作ったの。外に行けないから良い気分転換になったわ」
それから近況を話し合ったりしていると
「お姉さま~」
と声が聞こえた。
「ロレッタ」
屋敷の方から銀の髪をなびかせて、もうすぐ九歳になる妹のロレッタが駆けて来る。
「どうしたの?ロレッタ」
やって来たロレッタは私の腿に手を置いて私の顔を見上げた。
はあ~かわいいわ!さすが末っ子、甘え方を心得てる。
「あのね、わたしイブお姉さまに聞きたいことがあるの」
「私?」
イブが自分を指差すと、ロレッタは照れたように口元を押さえた。
「イブお姉さま、あのね、わたしも騎士さまと結婚したいの。どうしたら結婚できますか?」
モジモジしながら言うロレッタ。
「え?」
「だって…ルカがこのえ騎士になるって言うの」
「ルカ?」
首を傾げるイブ。
「ルカって、ロレッタのお友達のルカリオくんの事よね?」
あーそういう事か、と思った私がロレッタに聞くと、ロレッタは恥ずかしそうに頷く。
ルカリオくんはロレッタより一つ歳上の子爵のご子息だ。教会の慰問などで仲良くなったロレッタにとっては幼なじみの男の子。
つまりロレッタはルカリオくんの事が好きなのね。
公爵令嬢であるロレッタと子爵令息のルカリオくん。例え好き合っていたとしても結婚は難しい。
でもルカリオくんが近衛騎士団に入れば、結婚もあり得る話になる。それくらい近衛はエリート集団なのだ。
ルカリオくんがロレッタのために近衛を目指してるのかはわからないけど…
ルカリオくんについてイブに説明すると、心得たとばかりにイブはロレッタに向き合った。
「そのルカくんが近衛騎士になるなら、ロレッタちゃんはそれまで他の人と婚約とかしないで待ってると良いわ」
イブが人差し指を立てて言うと、ロレッタの顔がパァッと明るく輝く。
「本当!?」
「本当よ。ルカくんにもロレッタちゃんを好きになってもらわなきゃ駄目よ?」
「うん!がんばる」
拳を握るロレッタはとてもかわいかった。
………あ、もしかして、伯爵令息のネイト様も、格上の侯爵令嬢であるレオノーラ殿下を娶るために近衛騎士になったんじゃ…?
幼なじみだもん、ネイト様は幼い頃からずっと…私がアルヴェル殿下を好きだったようにレオノーラ殿下を好きなのかも知れないわ。
私がそう思って落ち込みそうになった時、屋敷の方からザウル様がやって来るのが見えた。
あら?もう交代の時間かしら?
夕方が交代で直帰だってジョーンズ様仰っていたから、学園で放課後デートしてる他の生徒を羨ましがってたイブと一緒に帰るように促そうと思ってたのよね。
「どうしたんだ?」
「それが…」
ジョーンズ様がザウル様に声を掛けると、ザウル様は私の方をチラッとみてからジョーンズ様に耳打ちをした。
それから、真剣な表情で、二人で私たちのいる東屋へ来る。
「…ロンダムの姿が見えなくなったそうです」
「!」
ジョーンズ様が低い声で言う。
「マルセル公爵家の敷地内へは容易には入れないでしょうが、念の為すぐに中へ」
ザウル様に促されて、私たちは急いで屋敷へと戻った。
8
あなたにおすすめの小説
私が育てたのは駄犬か、それとも忠犬か 〜結婚を断ったのに麗しの騎士様に捕まっています〜
日室千種・ちぐ
恋愛
ランドリック・ゼンゲンは将来を約束された上級騎士であり、麗しの貴公子だ。かつて流した浮名は数知れず、だが真の恋の相手は従姉妹で、その結婚を邪魔しようとしたと噂されている。成人前からゼンゲン侯爵家預かりとなっている子爵家の娘ジョゼットは、とある事情でランドリックと親しんでおり、その噂が嘘だと知っている。彼は人の心に鈍感であることに悩みつつも向き合う、真の努力家であり、それでもなお自分に自信が持てないことも、知っていて、密かに心惹かれていた。だが、そのランドリックとの結婚の話を持ちかけられたジョゼットは、彼が自分を女性として見ていないことに、いずれ耐えられなくなるはずと、断る決断をしたのだが――。
(なろう版ではなく、やや大人向け版です)
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。
楠ノ木雫
恋愛
若くして亡くなった日本人の主人公は、とある島の王女李・翠蘭《リ・スイラン》として転生した。第二の人生ではちゃんと結婚し、おばあちゃんになるまで生きる事を目標にしたが、父である国王陛下が縁談話が来ては娘に相応しくないと断り続け、気が付けば19歳まで独身となってしまった。
婚期を逃がしてしまう事を恐れた主人公は、他国から来ていた縁談話を成立させ嫁ぐ事に成功した。島のしきたりにより、初対面は結婚式となっているはずが、何故か以前おにぎりをあげた使節団の護衛が新郎として待ち受けていた!?
そして、嫁ぐ先の料理はあまりにも口に合わず、新郎の恋人まで現れる始末。
主人公は、嫁ぎ先で平和で充実した結婚生活を手に入れる事を決意する。
※他のサイトにも投稿しています。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
【完結】令嬢憧れの騎士様に結婚を申し込まれました。でも利害一致の契約です。
稲垣桜
恋愛
「君と取引がしたい」
兄の上司である公爵家の嫡男が、私の前に座って開口一番そう告げた。
「取引……ですか?」
「ああ、私と結婚してほしい」
私の耳がおかしくなったのか、それとも幻聴だろうか……
ああ、そうだ。揶揄われているんだ。きっとそうだわ。
* * * * * * * * * * * *
青薔薇の騎士として有名なマクシミリアンから契約結婚を申し込まれた伯爵家令嬢のリディア。
最低限の役目をこなすことで自由な時間を得たリディアは、契約通り自由な生活を謳歌する。
リディアはマクシミリアンが契約結婚を申し出た理由を知っても気にしないと言い、逆にそれがマクシミリアンにとって棘のように胸に刺さり続け、ある夜会に参加してから二人の関係は変わっていく。
※ゆる〜い設定です。
※完結保証。
※エブリスタでは現代テーマの作品を公開してます。興味がある方は覗いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる