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監視を掻い潜ってロンダム先生が姿を消したのは一時間くらい前らしい。
「四階建ての三階にある寮の部屋へ侵入し、クラリッサ嬢を担いで無傷で逃げられるくらいなので、ロンダムが全くの素人とは思えず、色々調べてみたんですが背後関係も何も出なくて……やっぱりダンヴァーズ分団長の危惧した通り、やはり釈放は早かったんだ」
応接室の扉の側に立って事情を説明してくださったザウル様は悔しそうに拳を握りしめる。
「ザウル様…」
第四分団の騎士様の監視を掻い潜れるんだもの、確かにただの教師とは思えない。
「クラリッサ」
隣に座るイブが震える私の手を握ってくれた。
-----
「お兄様にもセシリアお義姉様にもご迷惑をお掛けしてすみません」
「いや、クラリッサが悪い訳ではない。それよりクラリッサこそ充分気をつけろよ」
知らせを受けて直ぐに王城から帰って来てくれたお兄様に頭を下げると、お兄様が私の肩をポンと叩いた。
「そうよ。一番迷惑を被ってるのはクラリッサじゃないの。私たちは大丈夫だから気にしないで」
お兄様を迎えに出たセシリア様もそう言ってくれる。
「それより一人にならない方がいいわ。イブ様はお帰りになったんでしょう?私たちの部屋に来る?」
「お父様たちもそう言ってくださったけど、騎士様方がいてくださるから大丈夫よ」
あれから応援の騎士様が三人来てくれたので、ジョーンズ様がイブを家まで送って行ったのだ。
先生が来るとしたらまた夜中かしら…?
ここは二階だけど、また窓から?
部屋に一人になるとやっぱり心細い。少しの物音でもビクビクしてしまうわ。
アンにいてもらえば良かったかしら。
でも一緒にいる人にまた怪我をさせるのも嫌だし。
廊下や屋敷の外にも騎士様がいるから寮の時みたいに侵入できないとは思うけど…
そして、まんじりともしないまま、夜が明けた。
-----
結局、その夜は何もなく、ロンダム先生は見つかっていないまま二日が経ち、また夜が来る。
「ネイト様が王都に戻るまで、あと五日もある…」
小声で呟く。
ネイト様がいてくだされば心強いのに、なんて思ってしまう自分に苦笑いが浮かぶ。
心細いからってネイト様に依存しちゃだめ。この件に片が付いたらネイト様との接点もなくなるんだから。
私はただのファンよ。
寝室のカウチに座って自分に言い聞かせていると、窓の外が明るくなった。
「…え?」
カーテン越しに灯りがゆらゆらと揺れている。
窓に近付くのは怖い。
でも確かめなきゃ。あれは、もしかして……炎?
カウチから立ち上がり掛けた時、寝室のドアが激しくノックされた。
ドンドンドン!
「クラリッサ嬢!火事です!」
ジョーンズ様の声が聞こえる。
火事!
やっぱり炎だったんだ!
いつでも逃げられるように寝衣じゃなく部屋着を着てて良かった。
寝室の扉を開けると、続きの部屋の扉を開けたジョーンズ様の姿が見えた。
「外に団員もいますし、屋敷の者も消火に当たっていますから、すぐ消し止められると思いますが、念の為脱出できるように準備してください」
「私はすぐにで」
ガシャーンッ!!
私の言葉を遮るようにガラスの割れた音が響く。
私の部屋───ではなく、離れた場所から。
「キャーッ!ロレッタ様!!」
女性の声。
「俺が様子を見て来ますので、クラリッサ嬢はあの団員と一緒に避難してください」
ジョーンズ様が廊下で控えていたもう一人の騎士様を指して言った。
「でもロレッタが…」
「もしもロンダムなら、クラリッサ嬢の方が危ない」
だからって私の代わりにロレッタが危険な目に遭うのは嫌。
「クラリッサ!出て来てください」
廊下にロンダム先生の声が響く。
「!」
「クラリッサ嬢!駄目です!」
ジョーンズ様の静止を振り切り、弾かれるように私は廊下を駆け出した。
監視を掻い潜ってロンダム先生が姿を消したのは一時間くらい前らしい。
「四階建ての三階にある寮の部屋へ侵入し、クラリッサ嬢を担いで無傷で逃げられるくらいなので、ロンダムが全くの素人とは思えず、色々調べてみたんですが背後関係も何も出なくて……やっぱりダンヴァーズ分団長の危惧した通り、やはり釈放は早かったんだ」
応接室の扉の側に立って事情を説明してくださったザウル様は悔しそうに拳を握りしめる。
「ザウル様…」
第四分団の騎士様の監視を掻い潜れるんだもの、確かにただの教師とは思えない。
「クラリッサ」
隣に座るイブが震える私の手を握ってくれた。
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「お兄様にもセシリアお義姉様にもご迷惑をお掛けしてすみません」
「いや、クラリッサが悪い訳ではない。それよりクラリッサこそ充分気をつけろよ」
知らせを受けて直ぐに王城から帰って来てくれたお兄様に頭を下げると、お兄様が私の肩をポンと叩いた。
「そうよ。一番迷惑を被ってるのはクラリッサじゃないの。私たちは大丈夫だから気にしないで」
お兄様を迎えに出たセシリア様もそう言ってくれる。
「それより一人にならない方がいいわ。イブ様はお帰りになったんでしょう?私たちの部屋に来る?」
「お父様たちもそう言ってくださったけど、騎士様方がいてくださるから大丈夫よ」
あれから応援の騎士様が三人来てくれたので、ジョーンズ様がイブを家まで送って行ったのだ。
先生が来るとしたらまた夜中かしら…?
ここは二階だけど、また窓から?
部屋に一人になるとやっぱり心細い。少しの物音でもビクビクしてしまうわ。
アンにいてもらえば良かったかしら。
でも一緒にいる人にまた怪我をさせるのも嫌だし。
廊下や屋敷の外にも騎士様がいるから寮の時みたいに侵入できないとは思うけど…
そして、まんじりともしないまま、夜が明けた。
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結局、その夜は何もなく、ロンダム先生は見つかっていないまま二日が経ち、また夜が来る。
「ネイト様が王都に戻るまで、あと五日もある…」
小声で呟く。
ネイト様がいてくだされば心強いのに、なんて思ってしまう自分に苦笑いが浮かぶ。
心細いからってネイト様に依存しちゃだめ。この件に片が付いたらネイト様との接点もなくなるんだから。
私はただのファンよ。
寝室のカウチに座って自分に言い聞かせていると、窓の外が明るくなった。
「…え?」
カーテン越しに灯りがゆらゆらと揺れている。
窓に近付くのは怖い。
でも確かめなきゃ。あれは、もしかして……炎?
カウチから立ち上がり掛けた時、寝室のドアが激しくノックされた。
ドンドンドン!
「クラリッサ嬢!火事です!」
ジョーンズ様の声が聞こえる。
火事!
やっぱり炎だったんだ!
いつでも逃げられるように寝衣じゃなく部屋着を着てて良かった。
寝室の扉を開けると、続きの部屋の扉を開けたジョーンズ様の姿が見えた。
「外に団員もいますし、屋敷の者も消火に当たっていますから、すぐ消し止められると思いますが、念の為脱出できるように準備してください」
「私はすぐにで」
ガシャーンッ!!
私の言葉を遮るようにガラスの割れた音が響く。
私の部屋───ではなく、離れた場所から。
「キャーッ!ロレッタ様!!」
女性の声。
「俺が様子を見て来ますので、クラリッサ嬢はあの団員と一緒に避難してください」
ジョーンズ様が廊下で控えていたもう一人の騎士様を指して言った。
「でもロレッタが…」
「もしもロンダムなら、クラリッサ嬢の方が危ない」
だからって私の代わりにロレッタが危険な目に遭うのは嫌。
「クラリッサ!出て来てください」
廊下にロンダム先生の声が響く。
「!」
「クラリッサ嬢!駄目です!」
ジョーンズ様の静止を振り切り、弾かれるように私は廊下を駆け出した。
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