ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん

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「レオノーラ」
 俺は久しぶりに幼なじみを呼び捨てで呼んだ。昔のように。
 レオノーラの実家である侯爵家の領地屋敷で、ここはレオノーラの部屋。周りにいるのは昔から良く知る侍女たちだけだ。
 部屋に入ったばかりのレオノーラが振り向いて、良く知る青い瞳で俺の方を見る。
「嫌な予感がするんだ…あの時のように」
 そう言うと、レオノーラは眉を寄せた。
「…あれから…十五?十四年?ネイトは充分義理を果たしたと思うわ」
「……」
「早く行きなさいな。今度何かあったら、ネイトもう立ち直れないわよ?」
 レオノーラが腰に手を当てて苦笑いしながら言う。
「ありがとう。レオノーラ」
 軽く頭を下げて、俺は踵を返した。

-----

「ロレッタ!」
 ロレッタの部屋に駆け込むと、割れた窓を背にロンダム先生が剣を持ち、ぐったりしたロレッタを小脇に抱えて立っていた。
「ああ…クラリッサ、やっと会えましたね」
 ロンダム先生…いえ、ロンダムが笑う。
 部屋の中には短剣を持つ侍女や剣を抜いた騎士もいるが、ロンダムはそちらは気にもしていないようだ。
「ロレッタを放して!」
 私の後ろからジョーンズ様が出て来て、私を庇うように前に出ると剣を構える。
「クラリッサが私と一緒に来てくれればこのに用はないですよ?他の男の背に隠れるクラリッサを見るのは不愉快でしかない。早くこちらへ来てください」
「一緒にって、どこへ行くつもりなの?」
「遠い国へ。ここには私とクラリッサの愛を邪魔する輩しかいない」
 ロンダムの橙の瞳が暗く光る。口元だけが笑っているのが怖くて堪らない。
「……愛なんてないわ」
「そう言わされてるんですよね?わかっていますよ。私には」
 そう言いながら、ロンダムは剣をロレッタの方へ近付けた。
「ロレッタを傷付けないで!」
「クラリッサさえ素直になってこちらへ来てくれれば、妹は無傷でお返しできるんですがねぇ」
 目を瞑るロレッタの顔の近くで剣を揺らし、刃が光を反射してキラッと光る。
「やめて!」
「それともクラリッサの代わりにこの娘を連れて行きましょうか?数年後にはクラリッサそっくりの美しい娘になるでしょうから。…ああでも私が愛しているのはクラリッサですから。私はこの娘をどこかへ売ってしまうかも知れませんね。これだけの美少女だ、どこの国でも高く売れるでしょう」
 歌うように滔々と言い募るロンダム。
 どうしよう。ロレッタが…
 ロレッタが連れ去られるくらいなら私が……
 ロンダムがロレッタから剣を離し、剣を横にし私の方へ手を差し出した。
 そして剣のつかを握る指を私を手招きするように動かす。
「さあ、クラリッサこちらへ」

 ロンダムの方へ一歩足を踏み出そうとした時、ロンダムがバッと勢いよく窓の方へ振り向いた。

 割れた窓から黒い影が出て来て、振り向いたロンダムにぶつかる。
 早すぎてその時には詳細がわからなかったが、黒い影は男性で、窓枠に手を掛け、鉄棒の飛行機飛びのように勢いをつけながら外から飛び込んでロンダムを蹴ったのだ。

 ロンダムが床に倒れると、部屋の中にいた騎士様が素早く駆け寄ってその腕からロレッタを奪う。
 そしてロレッタを片手で抱えたまま侍女の腕を掴み、部屋を飛び出した。
 外から飛び込んでロンダムを蹴った男性は倒れる事なく片膝をついた姿勢で着地した。
「…ネイト様」
 その男性は……ネイト様で…
「ジョーンズ!」
「は!」
 立ち上がったネイト様が剣を抜きながら叫ぶと、ジョーンズ様が構えていた剣を投げる。
「ぐぁあ!」
 切先がロンダムの剣を握る手首を切り裂き床に刺さり、手首から鮮血が吹き出した。
 手から離れた剣の柄をネイト様がブーツの底で踏む。駆け寄ったジョーンズ様が真っ赤に染まった手とさっきまでロレッタを抱えていた手を背中の後ろで纏めて、背中を膝で押さえた。
「…ぐっ…またお前か」
 眉を顰めながらネイト様を見上げるロンダム。
 ネイト様は冷ややかな表情でロンダムを見下ろす。
 窓から入って来たザウル様や他の騎士様たちがロンダムの足や首を押さえた。
「クラリッサは…私のもの…だ…」
 ジョーンズ様が縄を掛けようとロンダムの手を捻り上げると、ロンダムはまた顔を歪める。
 ネイト様は目を眇めて言った。
「今度こそお前に厳罰を与える」



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