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「ダンヴァーズ分団長!」
馬を駆けて王都へ戻る途中、向かいから駆けて来た単騎に名前を呼ばれる。
「ザウル!?」
こちらへ向かっていたザウルと行き合った。
ザウルはロンダムがいなくなった事を俺に教えるためにレオノーラの領地へ向かっていたと言った。
「ようやくわかったんです」
ザウルが手短にした説明では、ロンダムは北の国の諜報機関から教師として学園に潜入させていた間諜で、ロンダム男爵家の次男が王都で事故死したので、その次男に成り代わっていたそうだ。
ロンダムはクラリッサに惚れて、諜報機関の命を破りクラリッサを攫った。
諜報機関からの圧力でロンダムが釈放され、それはロンダムを消すため。それから逃れるためにロンダムはクラリッサを連れて国外へ逃亡しようとしている、と。
……嫌な予感はこれか。
ここから王都まで休まず駆けても丸一日。
間に合うか?
いや考える暇があれば走れ!
-----
身体に縄を巻かれ拘束されたロンダムがジョーンズ様やザウル様と騎士様たちに抱えるようにして部屋から出て行くと、部屋の中にはネイト様と私だけになった。
安堵した途端、私の足から力が抜けて、ヘナヘナと床に座り込んでしまう。
「クラリッサ嬢!」
ネイト様が剣を収めて駆け寄って来て、私の前でしゃがみ込んだ。
「ロレッタは…大丈夫ですか?」
震える手を差し出すと、ネイト様がその手を両手でギュッと握ってくれる。
「ああ。薬で眠らされているだけだろう」
「良かった…」
安心して息を吐くと、涙がポロリと落ちた。
「クラリッサ」
あ…呼び捨て……
そう思うと同時に手を引かれ、ネイト様の胸元に額がぶつかる。
「……え…?」
いつの間にかネイト様に抱きしめられていた。
「ネイト様…?」
ぎゅうっと抱きしめられて、息苦しいくらいに心臓がドキドキと脈打っている。
「クラリッサ…遅くなってすまない」
耳元で声がして更に心臓のドキドキが大きくなった。
「そんな事!全然遅くないです」
それどころか、絶妙なタイミングで……困った事にますます好きになってしまったわ。
腕が緩んで身体が離れると、ネイト様が私の顔を覗き込んだ。
何だか切なそうな表情…泣きそうと言うか…
「本当に…俺は間に合った…?」
呟くような声。
「もちろんです。私もロレッタも助けていただいてありがとうございました」
泣きそうな顔をしてもらいたくなくて、明るい声で笑いながら言うと、ネイト様の眉間が緩む。
「クラリッサ」
「はい!」
「俺と結婚してくれ」
「は……」
はい?
「俺は今度の事件を表に出し、あの男を処罰したい。しかしそうなると…」
「ああ…」
事件は私の醜聞になる。表沙汰になれば今後の私の縁談に差し支えるから…
でもネイト様と結婚するならその心配はないものね。
「クラリッサ?」
私の表情が暗くなったからか、ネイト様が心配そうに私の顔を見た。
「あの…ネイト様、無理して私と結婚する事はないですよ?私、縁談がなくなっても醜聞で世間に噂されても平気ですし、そこまでネイト様が責任感じてくださる必要はないかと…」
「……」
ネイト様が眉を顰める。
あれ?どうしてそんな表情を?
そんなに責任を感じてらっしゃるのかしら?
「えっと、私はネイト様が好きだから嬉しいですけど、ネイト様には好きな方がおられますよね?そりゃ相手が王太子妃では諦めるしかないですから仕方ないんでしょうけど…」
「待て」
私の言葉を遮って、ネイト様が私の両方の二の腕をガシッと掴んだ。
「?」
「俺の『好きな方』が王太子妃?……俺がレオノーラを好きだと?」
あ、「レオノーラ」って。やっぱり心の中では呼び捨てなんだわ。そうよね。幼なじみだもん。
私の事もさっきからずっと呼び捨てだけど…
「いや、その前に、クラリッサは俺が好きなのか?」
あー……思わず言っちゃったけど、聞き流してくださらなかった…
ものすごく驚いた表情で私を見ているネイト様。
ああ!もう覚悟を決めるのよ、クラリッサ!
気合いを入れる意味で顔を横にブンブンと強く振る。
「…違うのか」
ネイト様の眉が下がった。
「ああ!違います。そういう意味で首を振ったんじゃ…え、違うって、好きなのが違うんじゃなくて、好きです」
何を言ってるのか、自分でもよくわからなくなったけど、とりあえずネイト様を上目遣いで見上げる。
新緑のような薄緑の瞳が私を見ていた。
「クラリッサは俺の事が好き。で合ってるか?」
確かめるようにゆっくりとした口調でネイト様が言う。
「合ってます」
私がそう言うと、薄緑の眼が細められ、私はまたネイト様の腕に閉じ込められた。
「ダンヴァーズ分団長!」
馬を駆けて王都へ戻る途中、向かいから駆けて来た単騎に名前を呼ばれる。
「ザウル!?」
こちらへ向かっていたザウルと行き合った。
ザウルはロンダムがいなくなった事を俺に教えるためにレオノーラの領地へ向かっていたと言った。
「ようやくわかったんです」
ザウルが手短にした説明では、ロンダムは北の国の諜報機関から教師として学園に潜入させていた間諜で、ロンダム男爵家の次男が王都で事故死したので、その次男に成り代わっていたそうだ。
ロンダムはクラリッサに惚れて、諜報機関の命を破りクラリッサを攫った。
諜報機関からの圧力でロンダムが釈放され、それはロンダムを消すため。それから逃れるためにロンダムはクラリッサを連れて国外へ逃亡しようとしている、と。
……嫌な予感はこれか。
ここから王都まで休まず駆けても丸一日。
間に合うか?
いや考える暇があれば走れ!
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身体に縄を巻かれ拘束されたロンダムがジョーンズ様やザウル様と騎士様たちに抱えるようにして部屋から出て行くと、部屋の中にはネイト様と私だけになった。
安堵した途端、私の足から力が抜けて、ヘナヘナと床に座り込んでしまう。
「クラリッサ嬢!」
ネイト様が剣を収めて駆け寄って来て、私の前でしゃがみ込んだ。
「ロレッタは…大丈夫ですか?」
震える手を差し出すと、ネイト様がその手を両手でギュッと握ってくれる。
「ああ。薬で眠らされているだけだろう」
「良かった…」
安心して息を吐くと、涙がポロリと落ちた。
「クラリッサ」
あ…呼び捨て……
そう思うと同時に手を引かれ、ネイト様の胸元に額がぶつかる。
「……え…?」
いつの間にかネイト様に抱きしめられていた。
「ネイト様…?」
ぎゅうっと抱きしめられて、息苦しいくらいに心臓がドキドキと脈打っている。
「クラリッサ…遅くなってすまない」
耳元で声がして更に心臓のドキドキが大きくなった。
「そんな事!全然遅くないです」
それどころか、絶妙なタイミングで……困った事にますます好きになってしまったわ。
腕が緩んで身体が離れると、ネイト様が私の顔を覗き込んだ。
何だか切なそうな表情…泣きそうと言うか…
「本当に…俺は間に合った…?」
呟くような声。
「もちろんです。私もロレッタも助けていただいてありがとうございました」
泣きそうな顔をしてもらいたくなくて、明るい声で笑いながら言うと、ネイト様の眉間が緩む。
「クラリッサ」
「はい!」
「俺と結婚してくれ」
「は……」
はい?
「俺は今度の事件を表に出し、あの男を処罰したい。しかしそうなると…」
「ああ…」
事件は私の醜聞になる。表沙汰になれば今後の私の縁談に差し支えるから…
でもネイト様と結婚するならその心配はないものね。
「クラリッサ?」
私の表情が暗くなったからか、ネイト様が心配そうに私の顔を見た。
「あの…ネイト様、無理して私と結婚する事はないですよ?私、縁談がなくなっても醜聞で世間に噂されても平気ですし、そこまでネイト様が責任感じてくださる必要はないかと…」
「……」
ネイト様が眉を顰める。
あれ?どうしてそんな表情を?
そんなに責任を感じてらっしゃるのかしら?
「えっと、私はネイト様が好きだから嬉しいですけど、ネイト様には好きな方がおられますよね?そりゃ相手が王太子妃では諦めるしかないですから仕方ないんでしょうけど…」
「待て」
私の言葉を遮って、ネイト様が私の両方の二の腕をガシッと掴んだ。
「?」
「俺の『好きな方』が王太子妃?……俺がレオノーラを好きだと?」
あ、「レオノーラ」って。やっぱり心の中では呼び捨てなんだわ。そうよね。幼なじみだもん。
私の事もさっきからずっと呼び捨てだけど…
「いや、その前に、クラリッサは俺が好きなのか?」
あー……思わず言っちゃったけど、聞き流してくださらなかった…
ものすごく驚いた表情で私を見ているネイト様。
ああ!もう覚悟を決めるのよ、クラリッサ!
気合いを入れる意味で顔を横にブンブンと強く振る。
「…違うのか」
ネイト様の眉が下がった。
「ああ!違います。そういう意味で首を振ったんじゃ…え、違うって、好きなのが違うんじゃなくて、好きです」
何を言ってるのか、自分でもよくわからなくなったけど、とりあえずネイト様を上目遣いで見上げる。
新緑のような薄緑の瞳が私を見ていた。
「クラリッサは俺の事が好き。で合ってるか?」
確かめるようにゆっくりとした口調でネイト様が言う。
「合ってます」
私がそう言うと、薄緑の眼が細められ、私はまたネイト様の腕に閉じ込められた。
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