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「近衛騎士団を辞めろと言ったのは、王太子妃殿下とクラリッサ、どちらもを護ろうとすると、結局どちらも中途半端になるのではと危惧したからだ」
マルセル公爵家のお父様の執務室で、執務机の前に立つ私にお父様はそう言った。
「要はネイト君が王太子妃殿下を選ぶか、クラリッサを選ぶか、という選択だよ。ロンダムがクラリッサを奪いに来た時も、間に合う間に合わないに関わらず、最終的に妃殿下を置いてでもクラリッサの元に駆け付けるかどうか。ここでクラリッサを選ばない男に愛娘はやれん」
肘をついて手を組み合わせニヤリと笑う。
「ネイト様は今すぐ辞める訳ではないと言われましたけど…」
「それは構わんよ。後進にお任せすると心を決めたという事ならな」
そう言うと、お父様は引出しから一枚の紙を出し、机の上に置いた。
【学園の教師が逮捕!その恐るべき素顔とは】
「あ…」
「夕刻に出る新聞だ。良い気はしないだろうがクラリッサも目を通しておきなさい」
「はい」
新聞を手に取る。
ロンダムの似顔絵が載っていて「あんまり似てないな…」と他人事のように思った。
「ネイト君がクラリッサを選ばなければ…クラリッサを隣国へ嫁がせようと考えていた」
「え?」
「マジョリカが隣国へ嫁いだ縁で隣国の王太子と騎士団にも伝手ができたからな」
確かに。
もしネイト様が私を好きになってくださってなければ、レオノーラ殿下を護り続けるネイト様を見るのも辛いし、隣国に行くのも良かったかも知れないわ。
何て、マジョリカが隣国にいるのを知ってるから言えるのよね。
一人で知り合いもいない隣国へ行ったマジョリカはきっと心細かったし、寂しかっただろうな…
-----
夕方の新聞でロンダムの逮捕が報じられた翌日、イブが我が家へ来てくれて、ロンダムが監視を掻い潜って姿を消したと知らせがあった日から会ってなかったイブは「無事で良かった」と私に抱きついて泣いてくれた。
「ダンヴァーズ分団長は王太子妃殿下を迎えにまた領地へ行かれたそうね?」
私の部屋でお茶を飲みながら、少し不満そうにイブが言う。
「ジョーンズ様に聞いたの?」
「…昨日あの記事が出たばかりなのにクラリッサを置いて行くなんて」
唇を尖らせつつ頷くイブ。
「ネイト様は第四分団の分団長だもの、里下がりの護衛は任務だし、私は納得してるわ。もう帰途につかれてるみたいだから、合流したら蜻蛉返りだしね。今はまだあの新聞記事の影響はないから大丈夫よ」
今はロンダムの正体の方に巷の関心が行ってるみたい。もう少ししたら元生徒の令嬢が誰なのかが憶測とか含めて噂になるんだろうな。
「クラリッサがいいならいいけど…」
「ありがとう、イブ」
「…で?婚約はいつになるの?」
今度は目をキラキラさせる。
「ネイト様がレオノーラ殿下にいずれ退団するって話をしてから議会と教会へ婚約の届けを出すから、許可が降りるのは少し先になるかしら?でもレオノーラ殿下の許しが得られたらもう公にしても良いって」
「ああ。一日でも早く許しを得るために分団長が妃殿下をお迎えに行かれたなら納得ね」
イブは顎に手を当てて大きく頷いた。
「それにしてもクラリッサとダンヴァーズ分団長が婚約するなんて…卒業前には思いもしなかったわ」
感慨深気に言うイブ。
「私も」
イブの婚約者が近衛騎士様なのは知ってたけど、私自身は近衛騎士様方と全く接点がなかったし。
「婚約を知ったら泣く人がたくさんいるわね」
「そうね。ネイト様人気あるし…」
「ネイト様ファンの女性はもちろんだけど、男性も泣くでしょ?」
「私?私はこの事件で評判悪くなるだろうから泣かないんじゃない?」
自分を指差すと、イブが首を横に振った。
「ううん。きっと今まで高嶺の花だったクラリッサだから、評判悪くなったくらいの方が手が届きそうって思う男性も結構いるんじゃないかと思うの」
「え?」
視界の端にうんうんと頷いているアンが見える。
「そういう意味でもダンヴァーズ分団長との婚約、早く発表したいわね。無駄な希望を持たせない内に。アンもそう思うでしょ?」
イブがアンに話を振ると、アンは拳を握った。
「思います!ダンヴァーズ分団長のお相手がクラリッサお嬢様なら分団長ファンの女性陣は諦めますし、クラリッサお嬢様のお相手がダンヴァーズ分団長ならお嬢様に懸想する男性は諦めます!だから本当に早く発表して欲しいです!」
───二日後、私とネイト様の婚約が公にされて「氷の彫刻の妹姫とスフェーンの騎士が結婚!?」と阿鼻叫喚が響き渡った。らしい。
「近衛騎士団を辞めろと言ったのは、王太子妃殿下とクラリッサ、どちらもを護ろうとすると、結局どちらも中途半端になるのではと危惧したからだ」
マルセル公爵家のお父様の執務室で、執務机の前に立つ私にお父様はそう言った。
「要はネイト君が王太子妃殿下を選ぶか、クラリッサを選ぶか、という選択だよ。ロンダムがクラリッサを奪いに来た時も、間に合う間に合わないに関わらず、最終的に妃殿下を置いてでもクラリッサの元に駆け付けるかどうか。ここでクラリッサを選ばない男に愛娘はやれん」
肘をついて手を組み合わせニヤリと笑う。
「ネイト様は今すぐ辞める訳ではないと言われましたけど…」
「それは構わんよ。後進にお任せすると心を決めたという事ならな」
そう言うと、お父様は引出しから一枚の紙を出し、机の上に置いた。
【学園の教師が逮捕!その恐るべき素顔とは】
「あ…」
「夕刻に出る新聞だ。良い気はしないだろうがクラリッサも目を通しておきなさい」
「はい」
新聞を手に取る。
ロンダムの似顔絵が載っていて「あんまり似てないな…」と他人事のように思った。
「ネイト君がクラリッサを選ばなければ…クラリッサを隣国へ嫁がせようと考えていた」
「え?」
「マジョリカが隣国へ嫁いだ縁で隣国の王太子と騎士団にも伝手ができたからな」
確かに。
もしネイト様が私を好きになってくださってなければ、レオノーラ殿下を護り続けるネイト様を見るのも辛いし、隣国に行くのも良かったかも知れないわ。
何て、マジョリカが隣国にいるのを知ってるから言えるのよね。
一人で知り合いもいない隣国へ行ったマジョリカはきっと心細かったし、寂しかっただろうな…
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夕方の新聞でロンダムの逮捕が報じられた翌日、イブが我が家へ来てくれて、ロンダムが監視を掻い潜って姿を消したと知らせがあった日から会ってなかったイブは「無事で良かった」と私に抱きついて泣いてくれた。
「ダンヴァーズ分団長は王太子妃殿下を迎えにまた領地へ行かれたそうね?」
私の部屋でお茶を飲みながら、少し不満そうにイブが言う。
「ジョーンズ様に聞いたの?」
「…昨日あの記事が出たばかりなのにクラリッサを置いて行くなんて」
唇を尖らせつつ頷くイブ。
「ネイト様は第四分団の分団長だもの、里下がりの護衛は任務だし、私は納得してるわ。もう帰途につかれてるみたいだから、合流したら蜻蛉返りだしね。今はまだあの新聞記事の影響はないから大丈夫よ」
今はロンダムの正体の方に巷の関心が行ってるみたい。もう少ししたら元生徒の令嬢が誰なのかが憶測とか含めて噂になるんだろうな。
「クラリッサがいいならいいけど…」
「ありがとう、イブ」
「…で?婚約はいつになるの?」
今度は目をキラキラさせる。
「ネイト様がレオノーラ殿下にいずれ退団するって話をしてから議会と教会へ婚約の届けを出すから、許可が降りるのは少し先になるかしら?でもレオノーラ殿下の許しが得られたらもう公にしても良いって」
「ああ。一日でも早く許しを得るために分団長が妃殿下をお迎えに行かれたなら納得ね」
イブは顎に手を当てて大きく頷いた。
「それにしてもクラリッサとダンヴァーズ分団長が婚約するなんて…卒業前には思いもしなかったわ」
感慨深気に言うイブ。
「私も」
イブの婚約者が近衛騎士様なのは知ってたけど、私自身は近衛騎士様方と全く接点がなかったし。
「婚約を知ったら泣く人がたくさんいるわね」
「そうね。ネイト様人気あるし…」
「ネイト様ファンの女性はもちろんだけど、男性も泣くでしょ?」
「私?私はこの事件で評判悪くなるだろうから泣かないんじゃない?」
自分を指差すと、イブが首を横に振った。
「ううん。きっと今まで高嶺の花だったクラリッサだから、評判悪くなったくらいの方が手が届きそうって思う男性も結構いるんじゃないかと思うの」
「え?」
視界の端にうんうんと頷いているアンが見える。
「そういう意味でもダンヴァーズ分団長との婚約、早く発表したいわね。無駄な希望を持たせない内に。アンもそう思うでしょ?」
イブがアンに話を振ると、アンは拳を握った。
「思います!ダンヴァーズ分団長のお相手がクラリッサお嬢様なら分団長ファンの女性陣は諦めますし、クラリッサお嬢様のお相手がダンヴァーズ分団長ならお嬢様に懸想する男性は諦めます!だから本当に早く発表して欲しいです!」
───二日後、私とネイト様の婚約が公にされて「氷の彫刻の妹姫とスフェーンの騎士が結婚!?」と阿鼻叫喚が響き渡った。らしい。
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