ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん

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 王宮の中庭にある四阿で、お茶のテーブルに着く私と、その側に立つ騎士服のネイト様。
 私の向かい側に準備されている席は一つ。
 花たちの間にある小路から現れたのはミルクティー色の髪を結い上げた青い瞳の女性……レオノーラ王太子妃殿下。
 立ち上がって挨拶をして、席に着くと、レオノーラ殿下がお茶を淹れてくれた侍女や護衛たちを下げて、その場は三人だけになった。
「クラリッサ様、呼び出してごめんなさいね。ネイトに言ってもなかなか会わせてくれないんだもの」
「あ、いいえ」
「妃殿下、私たちの婚約が公になってまだ二週間です。なかなかと言う程ではないでしょう」
 ネイト様がそう言うと、レオノーラ殿下は目を眇めてネイト様を見る。
「私が『ネイト』って呼んでるんだから、ネイトも『レオノーラ』って呼びなさいよ。それに慇懃な言葉使いもやめて幼なじみに戻って。話しにくいわ」
 席を用意するって言ったのにいらないって言うし。と呟くレオノーラ殿下に睨まれて、ネイト様は苦笑いを浮かべた。
「王宮の中は俺の仕事場だから、こっちの方がやりにくいんだがな」
 言葉を崩したネイト様がに、レオノーラ殿下は満足そうに微笑む。

 レオノーラ殿下は私とネイト様の婚約を言祝ことほいでくださり、それからネイト様とオーレリア様の昔の話を聞かせてくださった。
「オーレリアは大人しそうに見えて結構強くてね。街へ出た時にお店で値切るのはオーレリアの役目だったわ」
「そうだったな」
「私たちが言い値で買おうとすると他所を見てても『ちょっと待って』って飛んで来たものよ」
 楽しそうに笑って話すお二人を見ていたら私も楽しくなるわ。

「オーレリアは…」
 ふと言葉を止めたレオノーラ殿下は、眉を少し寄せて紅茶の入ったカップを持つ手に視線を落とす。
「オーレリアはネイトの事を本当に好きだったわ。だからと言ってネイトがいつまでもオーレリアに縛られているのを望んでいるとは、私には思えなかった」
 視線を上げて私を見る。青い瞳に長い睫毛がかかってとても綺麗…
「あの時…王太子殿下が落ち込む私を慰めて励ましてくださって…それで私はこの方を一生側にいて支えようと思ったの。ネイトは近衛騎士として私を護るという目的があって、それで自分を支えて来た。でもそれはオーレリアを護れなかった事にずっと拘り続けている事で。もう解放されてもいいんじゃないかと……私じゃなく、ネイトがこの先ずっと大切にしたい相手を護っていけるようになればいいのにと思っていたの」
「レオノーラ殿下…」
「だからクラリッサ様が現れて、ネイトが私の護衛よりクラリッサ様を護るために動くのを見て、私は本当に嬉しかった。きっと…ううん、絶対にオーレリアも喜んでるわ」
 瞳を潤ませながらニコリと笑うレオノーラ殿下。
「俺は縛られてるつもりはなかったし、解放されたいとも思ってなかった。けど、兄上やレオノーラが俺を心配してくれてるのは素直にありがたいと思う」
 ネイト様は私の肩に手を置いた。

「私は…俗な人間なので、ネイト様が格好良くて…特に近衛の正装が。もちろんどんな服装でも格好良い事に間違いはないんですけど。でも、それでファンになったんです。最初は」
 苦笑いしながら私が言うと、レオノーラ殿下は「そうなの?」と目を瞬かせる。
「でも…会う度に格好良いなあって。助けに来てくれて嬉しいなあって。ネイト様が偏執狂者と過去に何かがあったから、それでロンダムに狙われている私を助けてくださっているだけだって思いながらも段々……いつの間にかファンの枠を越えてしまって、好きだなあって…」
 言いながら、何とも子供っぽいなあと自分でも思ってしまって、思わず赤くなって俯く。
 ネイト様が私の肩に置いた手にグッと力が入ったので、私はそろそろと顔を上げて斜め後ろに立っているネイト様へ振り向いた。
 ネイト様は片手で口元を覆い、視線は明後日に向いていて……ハッ!ネイト様の顔が赤い!照れてる?
「クラリッサ様!」
「はい!?」
 レオノーラ殿下に名前を呼ばれて、そちらへ顔を向けると、レオノーラ殿下に両手でガッシと私の手を掴まれる。
「ネイトのこんな顔、初めて見たわ!クラリッサ様もかわいい!かわいすぎて…クラリッサ様!私の妹になって!」
「なっ、レオノーラの妹はオーレリアだろ!?」
 ネイト様が慌てて言うが、レオノーラ殿下はぷいっと顔を背けた。
「私とオーレリアの妹よ!きっとオーレリアも異存はないわ!」
「あるだろ!?」
「ないわ!」
 あー良いわーこれぞ幼なじみって感じ。
 言い争うお二人を眺めながら、私は空いた方の手で紅茶のカップを持つと、コクリと飲む。
「私、お姉様が欲しかったんです」
 カップを置いて笑って言うと、レオノーラ殿下が拳を握ってガッツポーズをした。



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