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「マジョリカ、いらっしゃい」
アルヴェル殿下とディナ様の婚儀に参列する隣国の王太子殿下夫妻に随行して来たマジョリカとその旦那様。
今日はマジョリカがマルセル公爵家を訪れて、私とセシリアお義姉様とロレッタと四人でお茶会だ。
「クラリッサ!殿下の結婚披露パーティーでは話せなくてごめんなさい」
「旦那様と挨拶回り忙しそうだったものね」
お茶会の用意をしている庭へ案内しながら、私は隣を歩くマジョリカに少し近付いた。
「ね、マジョリカ」
「どうしたの?」
「あの、ね、私…婚約したの」
「え!?」
マジョリカが目を見開いて立ち止まる。
驚くのも無理はない。まだ学園を卒業して半年。半年前の私には婚約の兆しもなかったんだから。
「え?誰?誰と?」
「近衛騎士団で、第四分団の分団長」
「第四?代わってなければ『スフェーンの騎士』ね?」
「え?マジョリカ宝石の愛称知ってるの?」
「私は元騎士の方と結婚するのが決まってたから、自分の育った国の近衛や王立の騎士団の事も少しは知ってた方が良いかと思って調べたの。それまでは騎士に興味はなかったから知らなかったわ」
「なるほど…」
「スフェーンの騎士様は、確か最年少分団長で…とはいえ結構歳上じゃない?」
「十歳上よ」
「そう…」
また歩き出し、それから暫く黙って並んで歩いた。
マジョリカに言いたい。けど、何か恥ずかしい。でもマジョリカなら賛同してくれる。多分。きっと。
庭に出る扉の手前で私は足を止める。
マジョリカも何か言いたそうな表情で私を見た。
「あの、ね、マジョリカ。……歳上の騎士様って、良いと思わない?」
言った。言ったわ。
マジョリカは無言で胸の前で手を組む。
「……わかる」
小声で囁くマジョリカ。
すうっと息を吸い込むと、勢いよく話し出した。
「わかるわ!良いわよね!歳上の落ち着きと、騎士の逞しさと凛々しさ。筋肉も素敵だわ。それに…大人の色気!」
「ああ…やっぱり。マジョリカならわかってくれると思ったのよ」
私とマジョリカはガッシリと握手をする。
そして、この後二人で「歳上騎士を語る会」を結成したのだった───
-----
ネイト様が私の焼いたスコーンを食べて少し頬を緩ませる瞬間が好き。
非番の日に私に会いに来てくれたネイト様。
お茶を飲みながら私がニコニコしてソファの隣に座るネイト様を眺めていると、視線に気付いたネイト様が「ん?」と首を傾げた。
ネイト様がスコーンを食べるのを見てましたと言うのが恥ずかしかったので違う事を口にする。
「そういえば、レオノーラでん…お姉様がお茶会に招いてくださったので、明日は王宮へ伺いますね」
「クラリッサ、妃殿下のお願いなど却下してもいいんだぞ?」
妃殿下のお願いとは、もちろんお茶会の事ではなくて、「お姉様と呼んで欲しい」と言われた事。
「クラリッサにはセシリア殿という義姉がすでにいるのに。それにお茶会お茶会とクラリッサを呼び出しすぎだ」
苦虫を噛み潰したような表情のネイト様。
レオノーラお姉様が私にネイト様の幼い頃の恥ずかしい話などをするのを嫌がってるのよね。私はネイト様の話を聞くの、微笑ましくて楽しいんだけど。
「かわいがっていただいて光栄ですよ?それで、明日はマフィンを焼いて行こうと思ってるんです」
「……」
ネイト様がじっと私を見ていて、私は首を傾げた。
「ネイト様?」
あれ?マフィンはだめ?と思っていたら、ネイト様が手を伸ばして私の頬に触れる。
「…クラリッサを好きになったきっかけはパンだと言っただろう?」
「はい」
「あれは、正確には好きだと気付いたきっかけだ。好きになったのは…本当はクラリッサの瞳かも知れない」
オーレリア様と同じ青だから、私にオーレリア様を重ねて見てたって前仰ってたけど…
「寮から攫われたクラリッサを助けに突入した時、クラリッサは目を逸らさずにあの男を見ていた」
「あれは…怖くて…目が逸らせなかったんです」
大きくてゴツゴツした手が頬を包んで、親指が瞼の下を撫でて…優しい薄緑色の瞳に赤くなった私が映っていた。
「ああ。恐怖に揺れながらも、強くて綺麗な瞳だった。あの一瞬で、俺はこの瞳が絶望に染まらないよう護ろうと…絶対にオーレリアの二の舞にはさせないと思ったんだ」
オーレリア様…私、オーレリア様の分も絶対絶対ネイト様を幸せにしますね。
「ネイト様……好きです…」
ネイト様のスフェーンのように強い輝きを持つ瞳が嬉しそうに細められ、私もゆっくりと目を閉じる。
唇が触れ、そして離れると、視線を合わせて微笑み合った。
─ 完 ─
「マジョリカ、いらっしゃい」
アルヴェル殿下とディナ様の婚儀に参列する隣国の王太子殿下夫妻に随行して来たマジョリカとその旦那様。
今日はマジョリカがマルセル公爵家を訪れて、私とセシリアお義姉様とロレッタと四人でお茶会だ。
「クラリッサ!殿下の結婚披露パーティーでは話せなくてごめんなさい」
「旦那様と挨拶回り忙しそうだったものね」
お茶会の用意をしている庭へ案内しながら、私は隣を歩くマジョリカに少し近付いた。
「ね、マジョリカ」
「どうしたの?」
「あの、ね、私…婚約したの」
「え!?」
マジョリカが目を見開いて立ち止まる。
驚くのも無理はない。まだ学園を卒業して半年。半年前の私には婚約の兆しもなかったんだから。
「え?誰?誰と?」
「近衛騎士団で、第四分団の分団長」
「第四?代わってなければ『スフェーンの騎士』ね?」
「え?マジョリカ宝石の愛称知ってるの?」
「私は元騎士の方と結婚するのが決まってたから、自分の育った国の近衛や王立の騎士団の事も少しは知ってた方が良いかと思って調べたの。それまでは騎士に興味はなかったから知らなかったわ」
「なるほど…」
「スフェーンの騎士様は、確か最年少分団長で…とはいえ結構歳上じゃない?」
「十歳上よ」
「そう…」
また歩き出し、それから暫く黙って並んで歩いた。
マジョリカに言いたい。けど、何か恥ずかしい。でもマジョリカなら賛同してくれる。多分。きっと。
庭に出る扉の手前で私は足を止める。
マジョリカも何か言いたそうな表情で私を見た。
「あの、ね、マジョリカ。……歳上の騎士様って、良いと思わない?」
言った。言ったわ。
マジョリカは無言で胸の前で手を組む。
「……わかる」
小声で囁くマジョリカ。
すうっと息を吸い込むと、勢いよく話し出した。
「わかるわ!良いわよね!歳上の落ち着きと、騎士の逞しさと凛々しさ。筋肉も素敵だわ。それに…大人の色気!」
「ああ…やっぱり。マジョリカならわかってくれると思ったのよ」
私とマジョリカはガッシリと握手をする。
そして、この後二人で「歳上騎士を語る会」を結成したのだった───
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ネイト様が私の焼いたスコーンを食べて少し頬を緩ませる瞬間が好き。
非番の日に私に会いに来てくれたネイト様。
お茶を飲みながら私がニコニコしてソファの隣に座るネイト様を眺めていると、視線に気付いたネイト様が「ん?」と首を傾げた。
ネイト様がスコーンを食べるのを見てましたと言うのが恥ずかしかったので違う事を口にする。
「そういえば、レオノーラでん…お姉様がお茶会に招いてくださったので、明日は王宮へ伺いますね」
「クラリッサ、妃殿下のお願いなど却下してもいいんだぞ?」
妃殿下のお願いとは、もちろんお茶会の事ではなくて、「お姉様と呼んで欲しい」と言われた事。
「クラリッサにはセシリア殿という義姉がすでにいるのに。それにお茶会お茶会とクラリッサを呼び出しすぎだ」
苦虫を噛み潰したような表情のネイト様。
レオノーラお姉様が私にネイト様の幼い頃の恥ずかしい話などをするのを嫌がってるのよね。私はネイト様の話を聞くの、微笑ましくて楽しいんだけど。
「かわいがっていただいて光栄ですよ?それで、明日はマフィンを焼いて行こうと思ってるんです」
「……」
ネイト様がじっと私を見ていて、私は首を傾げた。
「ネイト様?」
あれ?マフィンはだめ?と思っていたら、ネイト様が手を伸ばして私の頬に触れる。
「…クラリッサを好きになったきっかけはパンだと言っただろう?」
「はい」
「あれは、正確には好きだと気付いたきっかけだ。好きになったのは…本当はクラリッサの瞳かも知れない」
オーレリア様と同じ青だから、私にオーレリア様を重ねて見てたって前仰ってたけど…
「寮から攫われたクラリッサを助けに突入した時、クラリッサは目を逸らさずにあの男を見ていた」
「あれは…怖くて…目が逸らせなかったんです」
大きくてゴツゴツした手が頬を包んで、親指が瞼の下を撫でて…優しい薄緑色の瞳に赤くなった私が映っていた。
「ああ。恐怖に揺れながらも、強くて綺麗な瞳だった。あの一瞬で、俺はこの瞳が絶望に染まらないよう護ろうと…絶対にオーレリアの二の舞にはさせないと思ったんだ」
オーレリア様…私、オーレリア様の分も絶対絶対ネイト様を幸せにしますね。
「ネイト様……好きです…」
ネイト様のスフェーンのように強い輝きを持つ瞳が嬉しそうに細められ、私もゆっくりと目を閉じる。
唇が触れ、そして離れると、視線を合わせて微笑み合った。
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