シスコン婚約者の最愛の妹が婚約解消されました。

ねーさん

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長期休暇も終わり、明日から秋期が始まる日、リネットは寮へ戻って来た。
隣の部屋のリリアはまだ入寮していないようだ。

あれからリリアからもセドリックからも連絡がない…私の事怒ってるのかな…。
手紙を書こうかと思ったけど、何て書いたら良いのかわからないし…。

廊下からカタンと音がして、リネットはリリアかと思って廊下へ飛び出す。しかし、そこに居たのは寮母だった。
「バーストンさん、花屋からこれが届きましたよ」
人の良さそうな笑顔で寮母が一輪の花を差し出した。オレンジのバラが一輪、紙に包んであり紫のリボンが結んである。
「あ、ありがとうございます。あの…誰から…?」
「花屋は匿名だって言ってましたよ」
「そうですか」
本当は聞かなくてもセルダ殿下からだとわかっていた。あれから毎日匿名で花を贈ってくれているので。
寮母はそのまま隣のリリアの部屋の前に立ち、ポケットから鍵を取り出した。
「あの、リリア…隣の部屋のリリアさんはどうしたんですか?」
「部屋を移るそうよ。荷物を移して欲しいって」
「えっ」

もう私の顔も見たくないって事なの…?
話をする機会もないの?
リリアが隣の部屋にいないと…セドリックと会えないの?

リリアが入学するまで、いや入学してからも、セドリックが「リネットに会いに」寮へ来た事は一度もないのだ。
リネットは部屋に戻ると、ドアにもたれてため息を吐く。
セドリックとリネットの婚約は保留になっている。
リネットがセルダの妃になる事になれば解消されるが、セルダの求婚を断ればそのままセドリックと結婚することになる。

リリアはきっと怒ってるのよね?私の預かり知らぬ事とは言え、婚約者を奪ったようなものだもの。
じゃあセドリックは?
リリアが婚約するのをあんなに嫌がってたんだもの、今は喜んでるのかしら?それともリリアを悲しませた私の事…嫌いになっちゃったのかな。

そう考えて、ふっと笑いが漏れる。

嫌いになるも何も、婚約してたとは言え、セドリックは別に私の事を好きなわけじゃなかったわね…。

「はは…」
自虐的な笑い声が漏れて、涙が一筋頬を伝った。

-----

始業式を終えて寮に戻ったリネットは、自分の部屋に戻るため廊下を歩いて、空室になった隣の部屋を横目にため息を吐いた。
すると廊下の向こうからドタドタと賑やかな足音が聞こえて来た。
「リネットー!!」
「リリア!?」
廊下の向こうからリリアが淑女らしからぬ大股早歩きで近付いて来たのだ。
「早く部屋へ入れて!そして鍵!」
リリアはリネットの部屋へ飛び込むと、リネットの腕を引いて部屋へ引き込む。そしてドアの鍵を素早く掛けた。
「リリア?」
部屋へ引き込まれたリネットは体勢を崩しながらリリアを見る。
「とりあえず、お茶を淹れて?」
リリアはニコリと微笑むといつものようにソファへ座った。
部屋へ備え付けのミニキッチンでお湯を沸かす準備をしてリネットはリリアの向かいへ腰掛ける。
「リリア」
名前を呼んだが続く言葉の出ないリネット。言いたい事や聞きたい事はたくさんあったが、頭の中でぐるぐる回るばかりで整理できないでいる。
「昨日、セルダ殿下とお会いして事情は聞いたわ」
リリアは無表情でどんな感情なのか読めない。
「それで寮に来るのが遅くなっちゃって、部屋が変わってるのに文句も言えなかったの」
「え?」
リリアの意思でリネットの近くにいたくなくて部屋を移した訳ではないのかと、リネットがリリアを見ると、リリアは心底嫌そうな表情で言った。
「兄様が勝手に手配したらしいの」

やっぱりセドリックは私とリリアと会わせないと思うくらい怒ってるのね。そしてセドリックも私とは会いたくないからリリアの部屋を移したんだわ。

紅茶のカップをリリアと自分の前に置いてリネットは小さくため息を吐いた。
「私だってリネットの淹れた紅茶は好きだわ」
紅茶を一口飲んだリリアが唐突に言う。
セルダがリネットを好きになったきっかけを聞いたのがわかる。
「…あの、リリア」
「リネット、謝るつもりならやめてね」
リリアは軽くリネットを睨む。
「え、でも」
「リネットは私に謝らなきゃいけない事何もしてないじゃない」
「それはそうだけど…」
「それに私、リネットが想像してる程ショック受けてないわ。自分で思ってたほど殿下を好きじゃなかったみたい」
眉を寄せて肩を竦めるするリリアを見て、それは嘘だ、とリネットは思う。王宮からの使者の話を聞いて泣いていたのに、と。
「とにかく、リネットは殿下を好ましいと思うなら殿下の申し出を受ければ良いと思うわ。思わないならお断りすれば良いし。殿下も婚約者のいる令嬢に無理を言っているのは分かってらっしゃるから、リネットが好きになってくれなければ潔く諦めるっておっしゃってたわ」
リリアは明るく言うが、リネットはそう簡単には思い切れなかった。
「あの…セ…セドリックは、私の事何か言ってた…?」
リネットが意を決して切り出した時

ドンドンドン!

とリネットの部屋のドアが叩かれた。
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