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リネットの耳に微かに音が聞こえる。
何の音?
…人の声?
サワサワと遠くで人が動いている気配がした。
はっきりと人の話し声と認識できるわけではないが、誰かがこの屋敷を訪れたのかも知れない。
リネットは起き上がろうとしたが、手足を縛られていてなかなか上手くいかなかった。
言い争ってる様子ではないから、オリビア様の家の人かしら?
訪れた人に自分の存在を教える方法はないかとリネットは考えたが、オリビアの手の者ならば逃げる意思を見せると却って危険かも知れないと思い、じっと身を竦める。
すると、段々と一つの足音が大きくなる。誰かが近付いて来たのだ。
バタンッと音がして、リネットはビクリとするが、隣の部屋のドアが開いた音のようだ。
「……」
何と言ったか分からなかったが、男性の声が聞こえた。
そして、また足音が近付いて来る。
リネットのいる部屋の前で止まり、ドアが勢いよく開けられた。
廊下には灯りが灯され、リネットは入ってきた光の眩しさに目を閉じる。
「…リネット?いるのか?」
セドリックの声…?
リネットはゆっくりと目を開く、眩しくて良く見えないが、天蓋のカーテンの向こうに人影が浮かんでいた。
「うう~」
リネットは声が出せないので唸り声を上げる。
「リネット!」
天蓋のカーテンが開かれた。廊下からの光が逆光になって良く見えないが、リネットにはそれがセドリックだと確信できた。
セドリックが、来てくれた。
セドリックは横たわったリネットの姿を認めると、そのままベッドに乗り上げ、リネットを起こしながら抱き締めた。
「良かった…」
リネットの髪に頬を寄せて呟く。
リネットはセドリックの肩に額を付けて、ぎゅうぎゅう抱き締められながら混乱していた。
強く抱き込まれて身動きができない。
心配を掛けたとは思うが、セドリックの反応はリネットの想像より過剰だった。
それでもセドリックの温もりに包まれて、速い鼓動を感じて、リネットは安心して身体の力を抜いた。
そのままセドリックは部屋に他の者がやって来るまで黙ってリネットを抱き締め続けた。
-----
「…セドリック様?」
誰かが廊下から部屋を覗き込む。男性のようだ。
「エバンス侯爵令嬢は一応拘束して馬車に乗せましたが…あの…」
「兄様!!」
男性の声を遮るようにリリアが部屋に飛び込んで来た。
リリア!?
リネットは驚いて咄嗟にセドリックから離れようと身じろぎしたが、セドリックは無言でますます強く抱き締めて来る。
「兄様、いい加減リネットを離して」
リリアがベッドサイドから呆れたように声を掛けると
「…嫌だ」
低い声でセドリックが言った。
「せめて先に口と、縄を外したら?」
腰に手をやり、ため息まじりにリリアが言うと、ハッとした様子でセドリックはリネットを離すと、口を覆っていた布を外し、持っていた短剣で手首と足首の縄を切ってくれた。
「…大丈夫か?」
セドリックが心配そうにリネットの頬を両手で包み、顔を覗き込む。
長い間口を塞がれていたので声が出にくい。
「…みぞおちが…痛い…」
ようやく言うと、またセドリックに抱き締められた。
セドリックはどうしちゃったのかしら…?
助けられた安心感か、セドリックの行動が予想外過ぎたのか、リネットは思考がよくまとまらなかった。
セドリックの肩越しにリリアがリネットの顔を覗き込む。
「リネット大丈夫?」
「…うん。ねぇ…?」
声が出にくいので、視線でリリアに「セドリックはどうしたの?」と問いかける。
リリアは「何かキレちゃったみたいね」と小声で言うと肩を竦める。
キレちゃった…とは…どういう状況?
「兄様、馬車で待ってるから早くリネットを連れて来てよ。リネットのお兄様も、殿下も心配して待っているんですからね」
リリアはそう言って部屋を出て行く。
ドアが閉まる音がしたが、いつの間にか部屋には明かりが灯されていて真っ暗にはならなかった。
「殿下」と聞いて、セドリックはリネットを抱き締める腕に力を込める。
「…嫌だ」
「セドリック?」
リネットは自由になった手を、セドリックの背に回す。どうしたの?と心で問いかけながら背中をポンポン叩いた。
「…リネットは俺のだ」
「え?」
発せられた言葉がまたリネットの想定の範囲外で、思わず手が止まる。まとまらない思考がますますまとまらなくなった。
「殿下より俺の方がずっとずっと前からリネットを好きだ」
…!?
完全に思考のキャパシティを超えて、リネットは気を失ってしまった。
リネットの耳に微かに音が聞こえる。
何の音?
…人の声?
サワサワと遠くで人が動いている気配がした。
はっきりと人の話し声と認識できるわけではないが、誰かがこの屋敷を訪れたのかも知れない。
リネットは起き上がろうとしたが、手足を縛られていてなかなか上手くいかなかった。
言い争ってる様子ではないから、オリビア様の家の人かしら?
訪れた人に自分の存在を教える方法はないかとリネットは考えたが、オリビアの手の者ならば逃げる意思を見せると却って危険かも知れないと思い、じっと身を竦める。
すると、段々と一つの足音が大きくなる。誰かが近付いて来たのだ。
バタンッと音がして、リネットはビクリとするが、隣の部屋のドアが開いた音のようだ。
「……」
何と言ったか分からなかったが、男性の声が聞こえた。
そして、また足音が近付いて来る。
リネットのいる部屋の前で止まり、ドアが勢いよく開けられた。
廊下には灯りが灯され、リネットは入ってきた光の眩しさに目を閉じる。
「…リネット?いるのか?」
セドリックの声…?
リネットはゆっくりと目を開く、眩しくて良く見えないが、天蓋のカーテンの向こうに人影が浮かんでいた。
「うう~」
リネットは声が出せないので唸り声を上げる。
「リネット!」
天蓋のカーテンが開かれた。廊下からの光が逆光になって良く見えないが、リネットにはそれがセドリックだと確信できた。
セドリックが、来てくれた。
セドリックは横たわったリネットの姿を認めると、そのままベッドに乗り上げ、リネットを起こしながら抱き締めた。
「良かった…」
リネットの髪に頬を寄せて呟く。
リネットはセドリックの肩に額を付けて、ぎゅうぎゅう抱き締められながら混乱していた。
強く抱き込まれて身動きができない。
心配を掛けたとは思うが、セドリックの反応はリネットの想像より過剰だった。
それでもセドリックの温もりに包まれて、速い鼓動を感じて、リネットは安心して身体の力を抜いた。
そのままセドリックは部屋に他の者がやって来るまで黙ってリネットを抱き締め続けた。
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「…セドリック様?」
誰かが廊下から部屋を覗き込む。男性のようだ。
「エバンス侯爵令嬢は一応拘束して馬車に乗せましたが…あの…」
「兄様!!」
男性の声を遮るようにリリアが部屋に飛び込んで来た。
リリア!?
リネットは驚いて咄嗟にセドリックから離れようと身じろぎしたが、セドリックは無言でますます強く抱き締めて来る。
「兄様、いい加減リネットを離して」
リリアがベッドサイドから呆れたように声を掛けると
「…嫌だ」
低い声でセドリックが言った。
「せめて先に口と、縄を外したら?」
腰に手をやり、ため息まじりにリリアが言うと、ハッとした様子でセドリックはリネットを離すと、口を覆っていた布を外し、持っていた短剣で手首と足首の縄を切ってくれた。
「…大丈夫か?」
セドリックが心配そうにリネットの頬を両手で包み、顔を覗き込む。
長い間口を塞がれていたので声が出にくい。
「…みぞおちが…痛い…」
ようやく言うと、またセドリックに抱き締められた。
セドリックはどうしちゃったのかしら…?
助けられた安心感か、セドリックの行動が予想外過ぎたのか、リネットは思考がよくまとまらなかった。
セドリックの肩越しにリリアがリネットの顔を覗き込む。
「リネット大丈夫?」
「…うん。ねぇ…?」
声が出にくいので、視線でリリアに「セドリックはどうしたの?」と問いかける。
リリアは「何かキレちゃったみたいね」と小声で言うと肩を竦める。
キレちゃった…とは…どういう状況?
「兄様、馬車で待ってるから早くリネットを連れて来てよ。リネットのお兄様も、殿下も心配して待っているんですからね」
リリアはそう言って部屋を出て行く。
ドアが閉まる音がしたが、いつの間にか部屋には明かりが灯されていて真っ暗にはならなかった。
「殿下」と聞いて、セドリックはリネットを抱き締める腕に力を込める。
「…嫌だ」
「セドリック?」
リネットは自由になった手を、セドリックの背に回す。どうしたの?と心で問いかけながら背中をポンポン叩いた。
「…リネットは俺のだ」
「え?」
発せられた言葉がまたリネットの想定の範囲外で、思わず手が止まる。まとまらない思考がますますまとまらなくなった。
「殿下より俺の方がずっとずっと前からリネットを好きだ」
…!?
完全に思考のキャパシティを超えて、リネットは気を失ってしまった。
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