物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

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物理系魔法少女、慣れが怖い

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 紗奈ちゃんを待っている間、色々と考え事をまとめていた。

 ただ、今はとある問題を抱えている。

 それは、『コラボの誘い』である。

 正直誰かとやるのは怖いので、無視しているのがアカツキクオリティだが、今回はそうもいかない。

 前にお世話になった事のあるルミナスさんからの誘いだからだ。

 彼女には訓練場とダンジョンと、なんやかんやで世話になっている。あっちは別人だと思ってるだろうけど。

 それに最近のアカツキちゃん配信にも影響を与えている人物だ。俺が勝手に参考にしているだけ。

 本来ならこんな上の配信者からのお願いは断る事自体が失礼に当たるだろう。

 だから返事が難しい。

 なぜなら、俺には紗奈ちゃんが居るからだ。

 別にルミナスさんがアカツキに何かしらの想いがある訳じゃないのだろう。相手は俺を女だと思ってるし。

 前回の偶然な映り込みがかなりの話題を生んだのが影響している。だからこその誘い。

 そこは別に関係ないし問題ない。問題は紗奈ちゃんの鼻だ。

 水浴びをすれば多少解決するが、最近帰って来る度に異臭を纏う俺を怪しんでいる。

 このまま行くと、きっと彼女の鼻は覚醒して、水で洗い流しても嗅ぎ取ってしまうだろう。そんな気がする。

 「なーに難しい顔してんの?」

 「お、紗奈ちゃんおつかれ」

 俺はスマホの電源を消して、ポッケに入れる。ちょっと焦った。

 何かを隠すように入れてしまった俺の手を怪しむ。そして目のハイライトが消える。

 一瞬で掴まれて、抱き寄せるように左手を腰に回され、右手に氷のナイフを形成して首に突き立てられる。

 「浮気? 許さないよ? 星夜さんの首を落として私も首をこの場で落とす。同時によ? ノータイムラグで刎ねる。一緒の墓場だね、星夜さん」

 だけ寄せられているので、むにむにとしたあるものが当たっている。

 一部から見たら羨ましいシチュエーションだろうが、俺は冷や汗が止まらない。

 「勘違いだ。俺が浮気する訳ないだろ⋯⋯てか、浮気ってのは付き合っている男女にのみ成立するモノであってなぁ」

 「わ~難聴かな? 何も聞こえないな~」

 「ナンデモアリマセンスベテオレガマチガッテマシタノデソノナイフヲサゲテクダサイ」

 氷のナイフが消えて、手を繋いで俺の家に向かって⋯⋯帰らなかった。

 「何かあると危険だからね。セキュリティの高い私の家に行こう」

 「ヤダ」

 「なんで! 女の子の家に行けるのって、普通喜ばない?」

 「命の危険を感じるので遠慮します」

 ここだけは引かない。

 あの家に行ったら、本当に死んでしまう。凍死する。

 「ムー」

 「頬を膨らませてかわい子ちゃんアピしても無理は無理。ツンツンツするぞ」

 「可愛いって⋯⋯もう。どうぞ」

 「冗談」

 氷の手錠をされた。罪状、からかった罪。

 家に帰ると、既に慣れた光景である秘書さんが居た。今日は珍しく書類に目を通している。

 それは自分の家でやって欲しい、そう願わずにはいられない俺がいる。サービス残業ですか。

 「お仕事ですか? 人の家で。珍しいですね? 人の家で」

 「二回も言うな。ちょっとした仕事でね。社内機密だから絶対に見るなよ? 見たら記憶を改ざんするからな? ま、見えないように空間をねじってるけど」

 「そんな事したら私が全力で抵抗するからな」

 「抵抗すんのお前かよ」

 別に興味もないし見るつもりはないが、ただでさえ狭い机がより狭くなっている。

 晩御飯の時には片付けられたけど、食べ終わったら再開した。今日は和食だった。

 紗奈ちゃんは秘書さんが取り出したであろう布団を広げて俺の横にくっつけ始めた。

 布団と布団の隙間を氷で埋めて、動かないように固定も始めた。

 「⋯⋯いやいや。何やってんの?」

 変な慣れが身について、変な事態に瞬時に対応できなかった。危険だ。

 「あ、いえ。今日は泊まろうかなと」

 「いやいや。自分の家近いでしょ」

 「鍵を砕きました」

 「カードキーだよね? 予備を俺の家の棚に勝手に入れてたよね?」

 「それは⋯⋯無くしました」

 何が目的なんだよ。いやまぁ分かるよ?

 昨日の事を知っている前提なら、きっと彼女は俺の心配をしてくれてるんだよね?

 めっちゃ嬉しいけど、それとは違う意味で命の危険を感じるのは気のせい?

 でも、冷気は出てないな。

 「その人の転移で帰れるんじゃ?」

 「紗奈を転移に乗せると凍らされて失敗するんだよね~」

 「目を合わせて言ってくれませんかね?」

 おいこら、目を逸らすな。目を合わせて言ってくれ。

 彼女がこうなったら譲らないか。

 「紗奈ちゃん、俺が紗奈ちゃんに変な事をしないように凍らせてくれ」

 「死にそうなので絶対に嫌です。⋯⋯で、でも。星夜さんがマゾだと言うのなら、ロープ買って来ます!」

 「ごめんそれは止めて。失敗する未来しか見えない」

 「え、否定しないの?」

 秘書さんの呟きは無視して、俺はせめて氷を砕こうと奮闘する。

 さすがは紗奈ちゃんの氷である。全く砕けない。

 隣り合わせで寝ると言う危険性を感じる。

 「あ、ちなみに私も今日は泊まりで仕事するから、真ん中は私ね?」

 そう言いながらもう一つの布団を取り出した。

 手狭。元々一人部屋だからね。

 「「は? いやなんでよ」」

 「仲良いね」

 「「ありがとう。とりあえず帰れ」」

 しかし、何をしたのか彼女は真ん中を陣取った。

 「神宮寺さんが何かしようとしても私なら抵抗するし、その方が安心じゃない?」

 「⋯⋯確かに」

 「確かにじゃない! 私が安心じゃない! と言うか内心少し期待してるんだから邪魔するなよ!」

 紗奈ちゃんが秘書さんを睨む。

 「変に興奮して、神宮寺さんを氷像にする気? まだそんな段階じゃないでしょ。手を繋いだ程度の男女なんだからさ⋯⋯あー言ってて涙出て来た」

 ぐうの音も出ないのか、紗奈ちゃんが不貞腐れたように布団に潜り込んだ。

 てか、俺の許可とかは必要ないんですね。俺もふて寝しよ。

 しかし、秘書さんは朝までずっと書類仕事をしていた。アーメン。

 だがギルドはこれに残業代をしっかりと出すらしい。バ○スっ!
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