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物理系魔法少女、そこそこ殴れた
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「やはりこの二人は打たれ弱いですね。これは精神面にも影響が?」
「お前、何をした!」
自分でも驚いてしまうほどに、怒号を上げた。
どうしてここまで怒っているのか、正直自分でも分からない。
だけど腹が立つのだ。
「簡単ですよ。人の声が届かない空間を広げた。特定条件だけだったら、このくらいはできます」
そうか。「無音」と言うだけで聴覚を遮断されるスキルだと俺は勘違いしていた。
音を無くすスキルだったのか。
「アナタには無音は意味ないですかね?」
「なんでだ」
「はい?」
「なんで女子高生相手に大人が攻撃できるんだ! 大人は子供を守るんだ! 攻撃するんじゃない!」
相手は考え込むような仕草を見せる。
考えた末に答えを見つけたのか、ゆっくりとその重苦しい口を開く。
「こちらだって、したくてしている訳ではありません」
「ならどうしてっ!」
「弱いからですよ」
「⋯⋯は?」
たったそれだけの理由でか?
確かに、お前よりもこの二人、俺も弱いかもしれない。
だからって、攻撃されて良い理由にはならないだろ。
「精神的に弱い。だから危険なんですよ。天使から解放してあげる必要がある」
ここでも天使か。
悪魔だの天使だの、度々と聞く単語だな。
自分には関係ないと、適当にのらりくらりとしていたが⋯⋯それはもうダメそうだ。
子供相手に攻撃できる正当な理由が俺にはどうしても分からない。
確かに、相手から襲ってくるなら仕方ないと思う。だけどアイツは違う。
自分の足でこの二人を見つけて攻撃している。だから正当化できない。
「アオイさんは世界を守るために悪魔を倒すと言っている、それが天使から与えられた役目だからと」
「それをアナタは信じているんですか?」
「いーや。信じちゃいないさ。正確には、どうでも良い。自分に関係ない事をなんでいちいち考えないといけないんだよ」
でも、そうも言ってられないのかもしれない。
精霊なら何かを知っているかもしれない。
「悪魔だの天使だの聞いて考えるのは、てめぇをぶん殴った後だ」
さぞかし正当な理由があるんだろうな?
音の使徒さんよ!
「速くなった!」
「それでも躱すのかよ!」
俺のスピードは相手には通用しない。その理由は純粋なレベル差。
つまりはステータスの差。
だけど前に奴はパワーだけなら俺の方が上だと認めた、それを信じて良いかは分からない。
でも、それが正しいと思おう。
それなら、レベルアップした今の俺ならパワーはさらに上だ。
スピードで勝てないなら、パワーだ!
「おらっ!」
「フルスイングも当たりませんよ」
風圧で木皮が抉れる。屈んだように躱した相手にかかと落としだ。
「それもくらいません」
「ちぃ」
「アナタをあまり攻撃したくない。少しお話しませんか?」
「断る!」
当たるまで攻撃を続ける。
時には地面などを強く攻撃して衝撃波で相手の体勢を崩そうとするが意味が無い。
「どうしてこれまで、天使について触れようとしなかったんですか? チャンスは沢山あったはずです。どうして、魔法少女と言う役目を与えられて、中途半端な関係を続けるんですか?」
「お前に、関係ないだろ」
「使徒ですからね? 少しは関係あります」
俺は一呼吸おく。
やっぱり、このままじゃ勝てない。
「天使に従ってるから、魔法少女を、この子達を殺すのか?」
「いえ。そんな物騒な事は考えてませんよ。あくまで、自分達の未熟さを分かってもらうために、心を鬼にしているまでです」
「確かにな。お前はこの子達を殺す気はないんだろうよ」
それだったら前回のうちに死んでるさ。
コイツは自分の事を『最弱』だと称した。
他にも使徒が居るのは確実だ。
魔法少女なんて簡単に殺せるんだろうが、しない。
「お前達の目的はなんだ?」
「それは⋯⋯言えませんね」
一瞬、地面に寝ている二人を見た気がした。
「で、女の子相手に大人が手を出す正当な理由はあるのか?」
「そんなのもの、ある訳ないでしょ。あってはならない」
「ああ、そうだな」
だったらてめぇのしてる事はなんだよ。
俺は駆けた。今までの比ではない速度で。
そして拳を突き出す。
「むっ!」
出された拳があまりにも小さかったのか、相手が一瞬驚く。
次の瞬間には、身長が百八十はありそうな身体から回し蹴りが使徒に決まる。
明確なダメージを与えられた。
そして俺の一撃は、重い。
「ぐっ」
吹き飛び、木に身体を打ち付ける。
「な、何を?」
「さぁ、なんだろうな」
『元』の状態に戻った俺は再び、駆け出した。
最速で接近して、土煙を出して伸縮自在の攻撃を繰り出す。
対応しきれない相手はダメージを加速させる。
「ふんっ!」
衝撃波で土煙は消え去った。そのせいで今の俺の姿が見えてしまう。
「ち、小さい?」
「どうした? やっぱりちっこい相手だとやりずれぇか!」
蹴り上げの攻撃を繰り出すと同時に、身長が一気に変化して伸びる。
「ぐっ」
どんな風に攻撃されるか、分からないと避けられないよなぁ?
「おらっ!」
バットを振るう⋯⋯と見せかけて途中で薙刀に変わる。
重量が増えて重く感じるが、アカツキちゃんなら問題なく振るえる。
確実に腹に決まっただろう。
斬れはしないが、強い打撃を受けるだろう。
しかし、それが『影』に阻まれた。
何もかもが影でできた存在が、使徒の影からニョキと現れた。
「音羽くん、時間切れ。これ以上はダメー」
「そうですか。正直助かりました」
「にゅふふ、良いよ。それとぶん殴る魔法少女くん、ちょっとは手加減してよ!」
顔は見えない、てか姿が見えない影の塊。だけど声は女の子だ。
手加減? 全力じゃないと勝てないだろ。
「全く。もっと手短に天使について聞ける人が居るでしょ? 少しはその頭で考えな! じゃあね」
そう残し、二人は消えた。影に呑まれたように。
つか、これって俺も中に入れるのかな?
ま、良いや。二人を抱えてゲートに戻ろう。
手短⋯⋯きっと紗奈ちゃんの事を言っているんだろう。
でもなんか怖いんだよな。紗奈ちゃんに聞くの。
危険な事に巻き込まれているのを認めるようで。
⋯⋯そうだよな。もう自分には関係ない、とはいかないんだ。
もしも紗奈ちゃんが危険な事にあっているなら、俺が解決したい。⋯⋯紗奈ちゃんよりも弱いと思うけどさ。
今決めた、俺の覚悟だ。まずは天使について、そして悪魔について、詳しく知ろう。
一番知ってそうなのは、やっぱり魔物である精霊かな。
「お前、何をした!」
自分でも驚いてしまうほどに、怒号を上げた。
どうしてここまで怒っているのか、正直自分でも分からない。
だけど腹が立つのだ。
「簡単ですよ。人の声が届かない空間を広げた。特定条件だけだったら、このくらいはできます」
そうか。「無音」と言うだけで聴覚を遮断されるスキルだと俺は勘違いしていた。
音を無くすスキルだったのか。
「アナタには無音は意味ないですかね?」
「なんでだ」
「はい?」
「なんで女子高生相手に大人が攻撃できるんだ! 大人は子供を守るんだ! 攻撃するんじゃない!」
相手は考え込むような仕草を見せる。
考えた末に答えを見つけたのか、ゆっくりとその重苦しい口を開く。
「こちらだって、したくてしている訳ではありません」
「ならどうしてっ!」
「弱いからですよ」
「⋯⋯は?」
たったそれだけの理由でか?
確かに、お前よりもこの二人、俺も弱いかもしれない。
だからって、攻撃されて良い理由にはならないだろ。
「精神的に弱い。だから危険なんですよ。天使から解放してあげる必要がある」
ここでも天使か。
悪魔だの天使だの、度々と聞く単語だな。
自分には関係ないと、適当にのらりくらりとしていたが⋯⋯それはもうダメそうだ。
子供相手に攻撃できる正当な理由が俺にはどうしても分からない。
確かに、相手から襲ってくるなら仕方ないと思う。だけどアイツは違う。
自分の足でこの二人を見つけて攻撃している。だから正当化できない。
「アオイさんは世界を守るために悪魔を倒すと言っている、それが天使から与えられた役目だからと」
「それをアナタは信じているんですか?」
「いーや。信じちゃいないさ。正確には、どうでも良い。自分に関係ない事をなんでいちいち考えないといけないんだよ」
でも、そうも言ってられないのかもしれない。
精霊なら何かを知っているかもしれない。
「悪魔だの天使だの聞いて考えるのは、てめぇをぶん殴った後だ」
さぞかし正当な理由があるんだろうな?
音の使徒さんよ!
「速くなった!」
「それでも躱すのかよ!」
俺のスピードは相手には通用しない。その理由は純粋なレベル差。
つまりはステータスの差。
だけど前に奴はパワーだけなら俺の方が上だと認めた、それを信じて良いかは分からない。
でも、それが正しいと思おう。
それなら、レベルアップした今の俺ならパワーはさらに上だ。
スピードで勝てないなら、パワーだ!
「おらっ!」
「フルスイングも当たりませんよ」
風圧で木皮が抉れる。屈んだように躱した相手にかかと落としだ。
「それもくらいません」
「ちぃ」
「アナタをあまり攻撃したくない。少しお話しませんか?」
「断る!」
当たるまで攻撃を続ける。
時には地面などを強く攻撃して衝撃波で相手の体勢を崩そうとするが意味が無い。
「どうしてこれまで、天使について触れようとしなかったんですか? チャンスは沢山あったはずです。どうして、魔法少女と言う役目を与えられて、中途半端な関係を続けるんですか?」
「お前に、関係ないだろ」
「使徒ですからね? 少しは関係あります」
俺は一呼吸おく。
やっぱり、このままじゃ勝てない。
「天使に従ってるから、魔法少女を、この子達を殺すのか?」
「いえ。そんな物騒な事は考えてませんよ。あくまで、自分達の未熟さを分かってもらうために、心を鬼にしているまでです」
「確かにな。お前はこの子達を殺す気はないんだろうよ」
それだったら前回のうちに死んでるさ。
コイツは自分の事を『最弱』だと称した。
他にも使徒が居るのは確実だ。
魔法少女なんて簡単に殺せるんだろうが、しない。
「お前達の目的はなんだ?」
「それは⋯⋯言えませんね」
一瞬、地面に寝ている二人を見た気がした。
「で、女の子相手に大人が手を出す正当な理由はあるのか?」
「そんなのもの、ある訳ないでしょ。あってはならない」
「ああ、そうだな」
だったらてめぇのしてる事はなんだよ。
俺は駆けた。今までの比ではない速度で。
そして拳を突き出す。
「むっ!」
出された拳があまりにも小さかったのか、相手が一瞬驚く。
次の瞬間には、身長が百八十はありそうな身体から回し蹴りが使徒に決まる。
明確なダメージを与えられた。
そして俺の一撃は、重い。
「ぐっ」
吹き飛び、木に身体を打ち付ける。
「な、何を?」
「さぁ、なんだろうな」
『元』の状態に戻った俺は再び、駆け出した。
最速で接近して、土煙を出して伸縮自在の攻撃を繰り出す。
対応しきれない相手はダメージを加速させる。
「ふんっ!」
衝撃波で土煙は消え去った。そのせいで今の俺の姿が見えてしまう。
「ち、小さい?」
「どうした? やっぱりちっこい相手だとやりずれぇか!」
蹴り上げの攻撃を繰り出すと同時に、身長が一気に変化して伸びる。
「ぐっ」
どんな風に攻撃されるか、分からないと避けられないよなぁ?
「おらっ!」
バットを振るう⋯⋯と見せかけて途中で薙刀に変わる。
重量が増えて重く感じるが、アカツキちゃんなら問題なく振るえる。
確実に腹に決まっただろう。
斬れはしないが、強い打撃を受けるだろう。
しかし、それが『影』に阻まれた。
何もかもが影でできた存在が、使徒の影からニョキと現れた。
「音羽くん、時間切れ。これ以上はダメー」
「そうですか。正直助かりました」
「にゅふふ、良いよ。それとぶん殴る魔法少女くん、ちょっとは手加減してよ!」
顔は見えない、てか姿が見えない影の塊。だけど声は女の子だ。
手加減? 全力じゃないと勝てないだろ。
「全く。もっと手短に天使について聞ける人が居るでしょ? 少しはその頭で考えな! じゃあね」
そう残し、二人は消えた。影に呑まれたように。
つか、これって俺も中に入れるのかな?
ま、良いや。二人を抱えてゲートに戻ろう。
手短⋯⋯きっと紗奈ちゃんの事を言っているんだろう。
でもなんか怖いんだよな。紗奈ちゃんに聞くの。
危険な事に巻き込まれているのを認めるようで。
⋯⋯そうだよな。もう自分には関係ない、とはいかないんだ。
もしも紗奈ちゃんが危険な事にあっているなら、俺が解決したい。⋯⋯紗奈ちゃんよりも弱いと思うけどさ。
今決めた、俺の覚悟だ。まずは天使について、そして悪魔について、詳しく知ろう。
一番知ってそうなのは、やっぱり魔物である精霊かな。
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