物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

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物理系魔法少女、お姫様抱っこされた

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 「ミドリさん!」

 「久しぶりやなアカツキさん」

 「あ、うん」

 元の姿とアルファの見た目で実は会っていたりするが、当然相手は分かってない様子だ。

 もしもアカツキの見た目になっていなければ、どうなっていたか。

 ミドリさんに姫様抱っこで飛ばれており、下では衝突した巨大な火球が大爆発を起こしていた。

 「お姫様抱っこされたのなんて、初めて⋯⋯」

 「うちは子供達にした事あるよ。おりよっか」

 ミドリさんに下ろしてもらい、お礼を述べる。

 「アカツキさん。もう帰ってええよ」

 「え?」

 「ここはうちに任せとき」

 ミドリさんが刃の分裂する剣を握って、突き進む。

 その速度はとても速く、風のように爽やかで軽やかだった。

 迫り来る炎もミドリさんを中心に巻き起こる風によって妨害されて、意味をなさない。

 「ミドリさん強」

 彼女の戦っている所を初めて目にするけど、あんなに強いのか。

 走りながら魔法で炎を防ぎつつ推進する。

 「この辺かや!」

 ミドリさんが風の斬撃を放ちながら剣を振るう。

 炎を切断するが本体には命中してない。

 まずい。このままだとミドリさんがアオイさんを⋯⋯。

 「止めて! 中心を攻撃しゃダメだ!」

 「それは無理やね。ここまで大きいんや。今ここで仕留めなかあかん。悪魔にたぶらかされたのが運の尽きや」

 ミドリさんは俺の叫びをバッサリと切り捨て、再び攻撃に移る。

 刃を分離させて、複数の小さな刃で攻撃をしかける。

 さらに本人も拳に風を纏って攻撃をし、強風を扱う魔法も同時に使う。

 刃を動かすのも魔法の一種だとするのなら、彼女は並列していくつもの魔法を同時操作している事になる。

 それほどまでの技量を持っていて、本当にレベル4か怪しくなる。

 アオイさんやミズノとは比べ物にならない程の実力差を感じる。

 実際、暴走して普段よりも火力の高いアオイさんの攻撃をものともせずミドリさんは進んでいる。

 それが決定的な実力差を現している。

 だが、彼女を止めないといけない事実には変わりない。

 「止めて!」

 俺はミドリさんに向かって走る。

 炎が段々と弱くなる。

 ミドリさんに手を伸ばそうとするが、彼女は一瞬で炎の後ろに移動して、竜巻のような魔法を放つ。

 炎に巻き込まれて、俺も吹き飛びそうになる。

 「待って、欲しい!」

 俺は拳を固めて、地面に向かって放った。

 竜巻を消し去り、背後に転がって行った炎を見送る。

 「なんのマネや!」

 「待ってくれ。頼む! あの人を殺すような事はしないでくれ!」

 「アカツキさんの友人やんか⋯⋯確かにそれは辛いやろな。せやけどな、悪魔に取り憑かれている方がキツいんや! 楽にしてやるのも、友の役目やろ!」

 そう言って、俺の動体視力では見えない程の速度で再び接近して、巨大な風を巻き起こす。

 完全に風で炎が吹き飛び、紫色になったアオイさんが姿を現す。

 「え?」

 ミドリさんがフリーズして、攻撃の手を緩めた。

 その隙を暴走しているアオイさんは見逃す事はしない。

 「止め⋯⋯クルナアアアア!」

 時々感じるアオイさんの本音が暴走しているアオイさんに食われている。

 紫炎に包み込まれる前にミドリさんを抱えて脱出する。

 「⋯⋯なんで、アオイちゃんが」

 ミドリさんは身内に甘く、弱いのだろうな。

 それが彼女の弱点である。

 誰かが守ってやらないとならない子供ならば、身内じゃなくても弱くなるだろう。

 ミドリさんが知らず、俺の友であるならば彼女はきっと殺しを迷わない。さっきの行動でそう感じた。

 しかし、それがミドリさんの友人であるならば話は真逆になる。

 自分の手で自分の友人は打てない。

 「なんで。どうしてや! どないなってんね! なんでや。なんでアオイちゃんが悪魔に取り憑かれてるねん!」

 「ミドリさん。落ち着いて!」

 「嘘や。そんなの嘘や!」

 ミドリさんが鬼の形相で叫び否定を続ける。

 その様子とは裏腹に、刃を冷静に動かしてアオイさんへと向ける。

 まるでそれが義務のように、彼女の心と刃が全く別物見える。

 操っているのはどっちも同じ人だと言うのに。

 「アオイさんは本物だ! だから攻撃するな!」

 「なんでや。なんで、魔法少女が悪魔に心を支配されてるねん!」

 認めたくない事実は本当に残酷だ。

 否定しても変わりない。

 今、この場はフィクションじゃない。

 「しかたない」

 俺はミドリさんを座らせてから、刃を止めるべく走り出した。

 ステッキを取り出しバットにして、刃を薙ぎ払う。

 しかし、その内一つを逃してしまった。

 突き進む刃はアオイさんの横腹を目指している。

 「止めろおおおお!」

 俺とアオイさんの目が合ってしまった。

 何かを悟り諦めたような、儚げな目だった。それは暴走しているように見えない。

 アオイさんは自我を取り戻そうとしているのでは無いか?

 そして自分の状況をうっすらと分かってしまい、受け入れようとしている。

 「そんなの、認められるかあああああ!」

 俺はステッキを野球ボールにして、ぶん投げた。

 刃に当たり、ギリギリで外して見せた。

 それでも先程でのミドリさんの攻撃で受けたダメージは残っている。

 「ミドリさん! アオイさんを助けましょう!」

 俺がそう言うと、彼女は絶望したようにこっちを見て来る。

 「無理や。無理なんや」

 震えた声音で、絞り出すように出した言葉だった。
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