物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

文字の大きさ
123 / 179

物理系魔法少女、囲まれた

しおりを挟む
 「熱いな!」

 炎の中を突き進んでいるのでしかたないのだが、やはり熱い。

 中心と思われる場所に近づく度に、俺を追い出そうとする炎の勢いは増す。

 暴走しているのに、俺を殺そうとしているようには感じない。魔法少女なきゃ死んでる。

 憎悪の炎だと精霊は話してくれたが、怒りとはまた違う感じの炎だと俺は思う。

 根拠とか、そんな論理的なモノはない。

 あくまで俺が直感で感じた、感情的な感想だ。

 憎悪や怒りなどではなく、拒絶。

 俺に辿り着いて欲しくない、来て欲しくないと言う、拒絶の気持ち。

 「見えたぞ」

 気合いで中心へと到着する。

 そこに居るのは、予測していたけど当たって欲しくなかった相手であった。

 「アオイさん⋯⋯」

 彼女ならば話はすぐにまとまる。

 怒りの悪魔、こいつが全て悪い。

 彼女は確かに、精霊から拒絶されていた。そこに小さな怒りを覚えた可能性はある。

 だけど、森を破壊しようと考えるほど彼女は精霊を憎んでない。

 根が優しい子なんだよ。挨拶と同時に攻撃して来たファーストコンタクトだったけど、彼女と探索してコラボ配信して、それで少しは知ったつもりだ。

 こんな事をする子じゃない。

 怒りの悪魔が関わっているのなら、原因はソイツだ。

 「そろそろ危険じゃ!」

 風の手によって俺は炎の外へと引っ張られた。そして回復の魔法を使ってくれる。

 「幻術じゃないのか?」

 「身体を再生させる幻覚、癒しを与える幻覚、その嘘を真に返せば良いのじゃ」

 「ほんと、チートだ」

 世界の魔術師は全員幻術を極めてみたらどうだろうか?

 とりあえず、中心に誰がいて犯人は誰なのか、それは分かった。

 まずはアオイさんを暴走状態から戻す方が先決だ。

 「なにか手はあるか? あの中の人を助けたい」

 「良かろう。だが、まずは邪魔な炎を消さなくてならんの」

 「そりゃあ、難しいな」

 俺はアカツキの姿になる。

 すると、炎が一瞬だけ反応したように見えた。

 「まずは引っ張り出したら、あっさり戻るんじゃないか作戦!」

 「はあ?」

 俺はダッシュする。

 当然向かうのは中心だ。

 「クルナアアアア!」

 少しは自我を取り戻したのか、何も喋らなかったさっきとは違って、言葉を出した。

 それも断末魔のような叫びだけど。

 向けられる炎。

 「形が無いと俺は触れない⋯⋯だがな、吹き飛ばす事はできるよなぁ!」

 俺はステッキをバットにして、地面に向かって強く振りかぶった。

 光を放ったので、これが俺の全力となる。

 地面を砕き、その衝撃はアオイさんの紫炎を俺に通さない。

 「オラッ! 目を覚ませ!」

 横スイングで生み出した衝撃波で少しでも炎を散らす。

 少しでも散らしたら、冷水をかけてもらい炎の中を突き進む。

 燃えたぎる紫色の炎が視界の全てを奪う。

 「だがな。関係ないんだよ!」

 やると決めたなら、最後までやり通せ!

 肺が焼き切れそうな状態で強くバットを握る。

 地面に向かって振り下ろし、周囲の炎を一気に散らす。

 偶然にも場所と衝撃波が完璧だったのか、アオイさんの姿がくっきりと見えた。

 青色だった魔法少女の衣装が紫色になっており、髪の色も同様だった。

 「アオイさんは蒼色が一番似合うんだよ。ミズノだって、そう思うぞ!」

 違うな。あの人はどんなアオイさんでも絶対に受け入れてしまう。

 「ダマレエエエ」

 炎がアオイさんを包み込む前に、突進する。

 捕まえて、そのまま炎の外まで走る。

 炎は消えたが、暴走は収まってなさそうだ。

 「こりゃ失敗だな」

 「ジャマダアアアア!」

 腹にゼロ距離で放たれる爆炎が腹を焦がす。

 「ゴホゴホ。痛いなぁ」

 アオイさんの全身から炎が出て、羽衣のようなモノを構築する。

 「引きこもりはやめて、攻めに転じると言ったところか」

 「これ、余計に森が壊れんか?」

 「大丈夫じゃないかな?」

 「なるほどかなりやばいのじゃ」

 「なんでだよ!」

 俺は大丈夫だって言ったのに!

 「お主は適当じゃからな。それに、最悪のケースは想定しておく、あたりまえじゃろ」

 ド正論でぶん殴られたので、ステッキをしまって拳を構える。

 「なぜ武器を下げる?」

 「こっちの方がやりやすいから」

 ステッキを持つだけで俺のスピードは微々たる差だけど落ちる。

 手に持っているのと、しまっているのとでは話が変わるのだ。

 アオイさんに向かって行こうとしたら、自分を守る要塞を形成し始める。

 「おっと! それは勘弁してくれよ!」

 接近して殴り壊すが、すぐに再生される。

 「お主、それはダミーじゃ! 本体は泉の方に移動しておる!」

 「このビルの幻術、意味ねぇ」

 「うるさいのじゃ! わらわを置いてさっさと行くのじゃ!」

 「言われんでも!」

 俺が指を向けられた方向に向かって全力で走る。

 足から目を瞑りたくなる激しい光が継続して出てくるが、お構い無しだ。

 炎を使って高速移動するアオイさんを発見した。

 「悪いけど、使わせて貰うぞ」

 俺は地面を抉り飛ばすように蹴った。

 地面の破片はアオイさんに的中する前に炎よって灰になる。

 止まって、俺の方を見る。

 「さぁ、闘おうぜ!」

 「逃げ⋯⋯ジャマ」

 俺の周囲が紫炎に包まれた。

 上や左右、様々なところに巨大な火球ができあがる。

 確実に狙われていたのだろう。罠だ。

 「ちぃ」

 ダメージを覚悟して進もうと決意すると、ヒューっと風の音が耳を掠めた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...