物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

文字の大きさ
130 / 179

物理系魔法少女、報告しに行く

しおりを挟む
 紗奈ちゃんが家に帰って来て、俺を見てから静かな笑みを浮かべる。

 その後は語る必要も無いだろう。

 時間は過ぎて、なんとか胃に優しい晩御飯を手に入れた俺は、今後について紗奈ちゃんと相談する。

 「当分はマスコミが来るだろうね。ちょうど休日だし、約束通り行かない?」

 「そうだな。それもアリだな」

 「やった」

 ご両親への挨拶か、緊張するな。

 社会人時代のスーツはもうヨレヨレだし、新しいのを買いたいところだ。

 さらに髪の毛などもどうにかしないといけない。

 それをやってから行くとしよう。

 秘書さんも本部の方で忙しいのか、今日は帰って来なかった。

 翌日、転移が利用できないので俺は一旦、アルファに変身する。

 「間近で見ると不思議~」

 「そうだね。心の方はそのままなんだよね?」

 「そうですね。ただ、ちょっと若返りますね」

 「心が少しだけ身体に寄る訳だ」

 俺は紗奈ちゃんに指定された美容室に堂々と向かった。

 張り込んでいるマスコミも当然、話題の俺と今の俺を一緒にする訳ないので話しかけては来ない。

 もしもこの姿を悪用しようと考えたら、沢山できるのかもしれない。しないけど。

 既に空を歩いて美容室の方に先回りしている紗奈ちゃんと合流する。

 元の姿に戻り、入る。

 「紗奈さんいらっしゃい⋯⋯お父さん?」

 「違いますよ!」

 紗奈ちゃんはここを良く利用しているのだろう。とても仲が良さそうだ。

 紗奈ちゃんが俺について、話すと素早く手を引いてコソコソ話を始めてしまう。

 「ちょっと紗奈さん! 悪い事は言わないけどさ、止めた方が良いって!」

 「ムッ。さすがに怒りますよ」

 「いやいや。だってさ。見るからに五十台だよ? 何があったか知らないけど、紗奈さんはまだ若いんだから⋯⋯」

 「私が決めた事です。それよりもお願いして良いですか?」

 渋々と言った様子で俺にどのようにしたいかと聞いて来るので、適当に答えていく。

 それが余計に気に触ったのだろう。

 紗奈ちゃんに目線で何かを訴えると、彼女は聖母のような暖かく優しい笑みで返した。ただの受け流しである。

 「もしも紗奈さんになにかしてみなさい! 絶対に許さないからね!」

 なにかできる勇気なんてのは俺にないし、したとしても良くない事になるのは明白だ。

 普段の紗奈ちゃんを知らなければしかたないのだろう。

 時間をかけて仕上がった俺の見た目は三十代後半まで戻った気がする。

 美容師ってすげぇ。

 「少しは若返ったんじゃないですか? 三十代後半に見えますよ!」

 「星夜さんはギリギリ三十代じゃないですけどね。そもそも、私達と一歳近くしか変わらないですよ」

 「え」

 俺と美容師さんの目が合う。

 彼女の目は社会人時代、最初で最後の歓迎会の飲み会で年齢を聞かれ、答えた時の周囲の目と一緒だった。

 絶対に嘘だろ、そんな目だ。

 俺も思うよ。だから傷つかない。

 本当に紗奈ちゃんとは不釣り合いな見た目だと、十分に分かっている。

 「それじゃ、次行こ次」

 「あぁ、うん」

 料金を支払って、紗奈ちゃんに腕を引っ張られながら次の場所へと向かう。

 「紗奈さんのあんな楽しそうな笑顔、初めて見た」

 切り落とされた髪の毛などは魔法によって、一瞬で燃えて消える。

 身だしなみを整えた俺達は新幹線を使って紗奈ちゃんの実家へと向かう。

 新幹線に乗るまではさほど緊張はしてなかったけど、今は心臓がバクバクである。

 現実感がなかったが、近づくとそれが湧いてくる。お陰様で緊張してくるのだ。

 「こんな日が来るって、夢にも思わなかったなぁ」

 「せめて夢には思って欲しかったな」

 今日の紗奈ちゃんは朝からご機嫌であり、ずっと笑顔のままだ。

 見た目年齢で言うなら、十代でも全然行ける。

 駅を離れてバスを使い、紗奈ちゃんの御家族が住んでいる家に到着した。

 「お父さん、お母さん。ただいまぁー」

 ドアを開けた瞬間、俺に向かって木製の短刀が飛んで来る。

 それをノールックで紗奈ちゃんが掴んだ。

 「お父さんなんのつもり?」

 「そんな一回りも違うような男に愛娘はやらん! 即刻立ち去れえええええ!」

 「あらあら」

 紗奈ちゃんのお父さんが叫び、ゆっくりとその背後に忍び寄るお母さん。

 その手にはハリセンが握られており、紙製で叩いたとは思えない程の音を出した。

 俺と紗奈ちゃんが隣に座って、反対側には紗奈ちゃんご両親が座る。

 たんこぶが目立つ。

 先程までの緊張がまるで嘘のように消え去った。

 なんと言うべきか、いつも通りの光景なので落ち着きを取り戻したのである。

 「わたしは神宮寺⋯⋯」

 「知らん帰れ娘を置いて立ち去れ二度と⋯⋯」

 「あらあら」

 頭を押さえつけて、金属製の机に強くぶつけた。

 「お母さん。星夜さんの前であまり乱暴な事はしないでよ」

 「あらあら」

 ずっと笑顔なのに、すごく怖いんだけど。大丈夫ですかね?

 紗奈ちゃんも自分の父親の事を全く心配してないんだけど。

 「愛娘を、こんなジジイにやらんぞ」

 「お母さんいつもの貸して」

 「あらあら」

 紗奈ちゃんがハリセンを受け取り、凍らせた。

 「星夜さんをジジイ呼ばわりするな!」

 「ストーップ!」

 さすがにまずいと思い、魔法で身体強化を施して受け止める。

 ら、乱暴なのはお互い様なようで。さすがは親子だ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...