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物理系魔法少女、本音
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一悶着もあったが、一旦全員冷静さを取り戻して自己紹介に入る。
「わたしは神宮寺星夜と言います。紗奈さんとは大学のオープンキャンパスで出会い⋯⋯」
端的に身の上話を済ませた。
「どうかわたしに、娘さんを幸せに⋯⋯」
「胡散臭い。お前にできるとは思えん!」
キッパリと紗奈ちゃん父に言われてしまった。
「お前が娘を好きだと言うのはなんとなーくだが分かる。大学時代、寂しい思いをしなかったのはお前のおかげだと聞かされていたりもした」
紗奈ちゃんの顔が赤くなり始める。
「だがな」
先程までの何も聞かずの全否定ではない。
今の現状を認めた上で俺に向かって話している。
「大学最後の一年からそれも変わった。時期的にはちょうどお前が社会人の時だ。大方想像はできる。仕事が忙して連絡の一つもしない、そんな相手をずっと愛してしまった。どれだけ辛いか、お前は分かっているか?」
その言葉はグサリと突き刺さった。
実際その通りだ。
忙しくて何も連絡しないまま連絡先を失い、完全に諦めて忘れてしまっていた。
再会できたのだって、奇跡に近い。
「お前からは嫌な感じがする。想いを知ってもなお踏み出さないヘタレの感じがな。そんな相手が娘を幸せにできると思うか? 悲しませるのがオチだ」
何も、言い返せない。
実際その通りだから。
レベルアップ祝いの時に紗奈ちゃんは酔っていた。本音を聞いてしまった。
だけど俺は、それから逃げようとしてしまった。
思い出した恋心で、幸せにできるのだろうか? もちろん、再会してからも好きって気持ちは増してる。
俺は紗奈ちゃんに何をしてやれるのだろうか。
ぶっちゃけ、俺が甘えているだけ。都合の良い関係なだけじゃないのか。
そんな今までの関係が楽で心地良くて、ズルズルと来てしまった。
「確かに、仰る通りです。酔った勢いとは言え本音を聞いても、自分の心を打ち明ける事ができませんでした」
「えっ!」
バッと俺の方を見る紗奈ちゃん。
印象を悪くしてしまうかもしれいないのに、口が止まらない。
「自分よりも相応しい相手がいる、そう何回も心の中で言って思ってました。その方が楽、とでも考えていたんだと思います」
こんな事を話して紗奈ちゃんにまで嫌われたらどうするんだよ俺。
「大学の時、彼女は色んな人に声をかけられる程に魅力のある女性でした」
最初は不良風の見た目でかなり怖い印象が広まっていた。
だけど、関わって行くうちにそんな事はなく、見た目で判断していた自分達が恥ずかしくなった。いつしか紗奈ちゃんの可愛さが大学中に広まった。
「野良猫に会えばにゃーと話しかけたりなど、可愛いらしい部分が沢山ありました」
カッコ良くて可愛くて、なんでもできてしまような女性が俺から見ての紗奈ちゃんだった。
一人だったから、輪に入れるべきと思って話しかけたら、いつの間にか憧れのような存在になっていた。
「きっと良い人と巡り会うんだろうなって、ずっと思ってました。だと言うのに、自分は彼女を縛っていた」
大学時代、長い時間を一緒にいた。
友達以上の関係に踏み込む勇気すら無いのに、その状態をずっと保とうとしていた。
「今でも考えてしまう時があります。本当にこれで良かったのかと。紗奈さんのような女性を好きになる人は沢山いる。自分よりも良い人だって沢山居ると」
だけど紗奈ちゃんと再会してから、周りの人と出会って過去を聞く度に強く芽生えた想いがある。
中々本人を前にして言えなかった。
ずっと自分の本音を誤魔化して来た。
言い訳しない。逃げないと誓ってからも。
「自分がどれだけ紗奈さんの人生に関わっていたのか、見えていなかった。あるいは、見ようとしていなかった。結局は自己中で自分勝手に紗奈さんと一緒に居ました」
俺は紗奈ちゃんの過去をあまり知らない。
感情を表に出さなかった、暗いイメージを紗奈ちゃんに持った事が一度も無い。
秘書さんの語った紗奈ちゃんを俺は知らない。だけど、そうなった原因が俺にある。
自分がどうしてここまで好かれているのか、正直今でも分からない。
俺が本当に紗奈ちゃんを好きなのかと誰かに真剣に聞かれたら、答えに間を置いてしまうかもしれない。
だけどハッキリ言える。
「わたしは今、勤めていた会社をクビになり、探索者として活動しております。収入が安定している職業とは言い難いです」
静かに、俺の話を聞いてくれる。
「勤め先は世間一般で言うブラックでした。紗奈さんの事も忘れてました。クビになり、生きる気力が無くなったから、探索者になったのです」
楽になりたかった。死にたいのではなく、生きたくなかった。
だけど、それも今では無い。
「紗奈さんと再会して、大学時代のように支えられて来ました。また縛ってしまった。離れないといけないのにそれができないでいた」
俺は一旦深呼吸してから、言葉を出す。
「早く言うべきだった、行動するべきだった。言い訳をして向き合おうとしなかった。己の心と。わたし、神宮寺星夜は神楽紗奈さんに誰よりも、誰にも渡したくないくらいに、好きだと」
好きな人と傍にいられるのに、離れようとできるはずが無い。
だけど言い訳して、その気持ちを隠していた。
それがどれだけ紗奈ちゃんの重みになっていたのか、俺は考えもしていなかった。
正真正銘のクズだと思う。罵られてもしかたない。
「今、わたしが生きてこの場にいるのも全て、支えてくださった紗奈さんのおかげです。大学時代、今も、挫けそうになった時に支えてくれた」
俺は紗奈ちゃんの父親の目を真っ直ぐ見る。
「どうしようも無いクズな人間だと自覚しています。自分以上に紗奈さんを幸せにできる人はきっとこの世に何万といるでしょう」
だけど誰にも負けたくない。負けられない。
「ですが、紗奈さんに支えられた以上に支えれる人間は、この世に自分だけです! そうでなくてはならない!」
紗奈ちゃんに好かれたのなら、そんな自分に誇りを持てる努力をする。
自分の気持ちに言い訳はもう並べない。しない。
してはならない。紗奈ちゃんの気持ちをこれ以上踏みにじらない。
「今は支えられてばかりですが、支えられる人間に必ずなります。感情論ですが、理想論にするつもりはありません」
俺は再度頭を下げる。
これ以上、紗奈ちゃんを待たせるのは、クズ未満の何かだ。
待たせてしまった分、傷つけてしまった分、失ってしまった時間の分、その倍を支え合って生きて行きたい。
きっとその先に幸せはあるだろうから。
「紗奈さんとのご結婚を認めていただけないでしょうか」
「わたしは神宮寺星夜と言います。紗奈さんとは大学のオープンキャンパスで出会い⋯⋯」
端的に身の上話を済ませた。
「どうかわたしに、娘さんを幸せに⋯⋯」
「胡散臭い。お前にできるとは思えん!」
キッパリと紗奈ちゃん父に言われてしまった。
「お前が娘を好きだと言うのはなんとなーくだが分かる。大学時代、寂しい思いをしなかったのはお前のおかげだと聞かされていたりもした」
紗奈ちゃんの顔が赤くなり始める。
「だがな」
先程までの何も聞かずの全否定ではない。
今の現状を認めた上で俺に向かって話している。
「大学最後の一年からそれも変わった。時期的にはちょうどお前が社会人の時だ。大方想像はできる。仕事が忙して連絡の一つもしない、そんな相手をずっと愛してしまった。どれだけ辛いか、お前は分かっているか?」
その言葉はグサリと突き刺さった。
実際その通りだ。
忙しくて何も連絡しないまま連絡先を失い、完全に諦めて忘れてしまっていた。
再会できたのだって、奇跡に近い。
「お前からは嫌な感じがする。想いを知ってもなお踏み出さないヘタレの感じがな。そんな相手が娘を幸せにできると思うか? 悲しませるのがオチだ」
何も、言い返せない。
実際その通りだから。
レベルアップ祝いの時に紗奈ちゃんは酔っていた。本音を聞いてしまった。
だけど俺は、それから逃げようとしてしまった。
思い出した恋心で、幸せにできるのだろうか? もちろん、再会してからも好きって気持ちは増してる。
俺は紗奈ちゃんに何をしてやれるのだろうか。
ぶっちゃけ、俺が甘えているだけ。都合の良い関係なだけじゃないのか。
そんな今までの関係が楽で心地良くて、ズルズルと来てしまった。
「確かに、仰る通りです。酔った勢いとは言え本音を聞いても、自分の心を打ち明ける事ができませんでした」
「えっ!」
バッと俺の方を見る紗奈ちゃん。
印象を悪くしてしまうかもしれいないのに、口が止まらない。
「自分よりも相応しい相手がいる、そう何回も心の中で言って思ってました。その方が楽、とでも考えていたんだと思います」
こんな事を話して紗奈ちゃんにまで嫌われたらどうするんだよ俺。
「大学の時、彼女は色んな人に声をかけられる程に魅力のある女性でした」
最初は不良風の見た目でかなり怖い印象が広まっていた。
だけど、関わって行くうちにそんな事はなく、見た目で判断していた自分達が恥ずかしくなった。いつしか紗奈ちゃんの可愛さが大学中に広まった。
「野良猫に会えばにゃーと話しかけたりなど、可愛いらしい部分が沢山ありました」
カッコ良くて可愛くて、なんでもできてしまような女性が俺から見ての紗奈ちゃんだった。
一人だったから、輪に入れるべきと思って話しかけたら、いつの間にか憧れのような存在になっていた。
「きっと良い人と巡り会うんだろうなって、ずっと思ってました。だと言うのに、自分は彼女を縛っていた」
大学時代、長い時間を一緒にいた。
友達以上の関係に踏み込む勇気すら無いのに、その状態をずっと保とうとしていた。
「今でも考えてしまう時があります。本当にこれで良かったのかと。紗奈さんのような女性を好きになる人は沢山いる。自分よりも良い人だって沢山居ると」
だけど紗奈ちゃんと再会してから、周りの人と出会って過去を聞く度に強く芽生えた想いがある。
中々本人を前にして言えなかった。
ずっと自分の本音を誤魔化して来た。
言い訳しない。逃げないと誓ってからも。
「自分がどれだけ紗奈さんの人生に関わっていたのか、見えていなかった。あるいは、見ようとしていなかった。結局は自己中で自分勝手に紗奈さんと一緒に居ました」
俺は紗奈ちゃんの過去をあまり知らない。
感情を表に出さなかった、暗いイメージを紗奈ちゃんに持った事が一度も無い。
秘書さんの語った紗奈ちゃんを俺は知らない。だけど、そうなった原因が俺にある。
自分がどうしてここまで好かれているのか、正直今でも分からない。
俺が本当に紗奈ちゃんを好きなのかと誰かに真剣に聞かれたら、答えに間を置いてしまうかもしれない。
だけどハッキリ言える。
「わたしは今、勤めていた会社をクビになり、探索者として活動しております。収入が安定している職業とは言い難いです」
静かに、俺の話を聞いてくれる。
「勤め先は世間一般で言うブラックでした。紗奈さんの事も忘れてました。クビになり、生きる気力が無くなったから、探索者になったのです」
楽になりたかった。死にたいのではなく、生きたくなかった。
だけど、それも今では無い。
「紗奈さんと再会して、大学時代のように支えられて来ました。また縛ってしまった。離れないといけないのにそれができないでいた」
俺は一旦深呼吸してから、言葉を出す。
「早く言うべきだった、行動するべきだった。言い訳をして向き合おうとしなかった。己の心と。わたし、神宮寺星夜は神楽紗奈さんに誰よりも、誰にも渡したくないくらいに、好きだと」
好きな人と傍にいられるのに、離れようとできるはずが無い。
だけど言い訳して、その気持ちを隠していた。
それがどれだけ紗奈ちゃんの重みになっていたのか、俺は考えもしていなかった。
正真正銘のクズだと思う。罵られてもしかたない。
「今、わたしが生きてこの場にいるのも全て、支えてくださった紗奈さんのおかげです。大学時代、今も、挫けそうになった時に支えてくれた」
俺は紗奈ちゃんの父親の目を真っ直ぐ見る。
「どうしようも無いクズな人間だと自覚しています。自分以上に紗奈さんを幸せにできる人はきっとこの世に何万といるでしょう」
だけど誰にも負けたくない。負けられない。
「ですが、紗奈さんに支えられた以上に支えれる人間は、この世に自分だけです! そうでなくてはならない!」
紗奈ちゃんに好かれたのなら、そんな自分に誇りを持てる努力をする。
自分の気持ちに言い訳はもう並べない。しない。
してはならない。紗奈ちゃんの気持ちをこれ以上踏みにじらない。
「今は支えられてばかりですが、支えられる人間に必ずなります。感情論ですが、理想論にするつもりはありません」
俺は再度頭を下げる。
これ以上、紗奈ちゃんを待たせるのは、クズ未満の何かだ。
待たせてしまった分、傷つけてしまった分、失ってしまった時間の分、その倍を支え合って生きて行きたい。
きっとその先に幸せはあるだろうから。
「紗奈さんとのご結婚を認めていただけないでしょうか」
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