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さいご
しおりを挟む涼真と一緒にすごす、最後のバレンタインがやってくる。
ちょっとずつ練習を重ね、毎年、涼真に贈りつづけた遥斗のチョコレイトづくりの腕は、ちょこっと上達した。
最後だから、今年はトリュフに挑戦だ!
「がんばれー、はるー」
両親が、にやにやしてる。
「がんばるよ!」
ふんと鼻を鳴らした遥斗は、張りきってチョコレイトをつくった。
テーブルも鼻も手もチョコレイトまみれになったけど、何とかかんとか、球体になったよ。
ココアパウダーをまぶしたら、トリュフだ! たぶん!
「できた!」
はじめて作ったのが、ボッコボッコのチョコレイトだったことを思うと、ちょっといびつな球体になったけれど、トリュフチョコレイトを作れるようになっただなんて、めちゃくちゃ上達した!
自分で自分をほめたら、ちょっと楽しい。
買っておいた可愛い箱に、つくったチョコレイトを詰めて、リボンをかける。
『りょーくん、だいすき』をこめて。
……もう、学校がわかれてしまうから、告白してもいいのかもしれない。
思う遥斗の胸は、きしんだ。
『きもちわるい』思われてしまったら……?
もう、涼真の隣にいられない。
手をつなぐことも、できなくなる。
あとすこし、涼真は遥斗と手をつないで、一緒に登下校してくれるかもしれないのに。
遥斗が告白してしまったら、すべてがめちゃくちゃになってしまう。
『特別仲のいい幼なじみ』が『きもちわるい幼なじみ』になって、隣の家なのに避けられるようになって、顔を見たら逃げられるようになったら……?
──……こわれる。
ぎゅっと遥斗は唇を噛んだ。
──りょーくんに、きらわれてしまうくらいなら、恋なんて、潰れたらいい。
粉々に砕けてしまう前なら、想いを告げる前なら、遥斗はずっと、涼真をすきでいられる。
ずっと、きみを、想っていられる。
そっと、遥斗は最後のチョコレイトを抱きしめる。
「……りょーくん、だいすき」
言えない想いが、沁みてゆく。
とうとう最後のバレンタインがやってきた。
泣きたくなるのをこらえた遥斗は
「りょーくん、おはよー。学校いこー」
いつものとおり声をかける。
いつものとおり涼真が出てきて、いつものとおり遥斗と手をつないでくれる。
この、とろけそうなしあわせを壊すなんて、絶対にできない。
「今日、バレンタインなんだよ。知ってた?」
こくんと涼真はうなずいた。
さらさらの夜空の髪が揺れる。
「私立と公立の受験の間に挟まってるから、今年はチョコレイト、減るといいねえ」
こくんと涼真はうなずいた。
ちょっとした期待に、夜空の瞳が、きらきらしてる。
『今年も、僕にチョコレイト、くれる?』
聞けない遥斗の頬だけが熱くなる。
『今年も、りょーくんに、チョコレイト作ってきたよ』
言わなくても、きっと涼真はわかってる。
『今年で最後だから、とびきり、がんばったよ』
つながる指を、ぎゅっとにぎる。
にぎりかえしてくれる、やさしい力に、とくとく胸が駆けてゆく。
……あぁ、あと何度、こうして涼真と手をつなげるだろう。
考えると泣きたくなるから。
今のしあわせが、こわれてしまうから。
遥斗はぎゅっと、涼真の手をにぎった。
すがるように。
いとおしむように。
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