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ふふふん
しおりを挟む泣いてしまった。
しょんぼり遥斗は肩を落とす。
泣いて叫んで駆け去るなんて、まるで幼稚園児だ。
あの頃から、遥斗はちっとも変わっていない気がした。
りょーくんが、だいすきなことも。
ずっと、ずっと、りょーくんの隣にいたいことも。
身体ばかり大きくなっても、心はちっとも変わらない。
せっかく涼真といっしょの高校に入れて、いっしょに登下校できるのに、最初から気まずくなってしまった遥斗の唇から、ためいきがこぼれた。
1年3組のクラスの扉を開けるのも、重たい。
出席番号順に座った皆が、ともだちを作ろうとそわそわしてる。
遥斗は2列目の一番後ろの席だった。
隣の子の眼鏡のフレームが春のひかりを反射する。
「僕、遠野達也。第二中だよ。よろしくね。きみは?」
「佐倉遥斗。第一中。よろしくー」
笑顔であいさつしたら、すぐわかる。
なかよくなれそうか、そうじゃないか。
遠野くんとは、なかよくできそうな気がする。
そういう気もちは、すぐ伝わる。
ふたりで笑ったときだった。
「もしかして、あの一条涼真と話してなかった?」
「すっげー!」
周りの子たちに話しかけられて、びっくりする。
新入生代表の人の名前なんて、ふつう覚えないとおもうけど、涼真はよほど衝撃だったらしい。
「……あ、うん、幼なじみで……」
「へー!」
「あんなのが幼なじみだと、添え物になる感、半端ねえよな」
「大変そう」
むっとした遥斗は、首をふる。
「楽しいことしかないよ」
ほんとは、切ないことも、いっぱいあるけど。バレンタインを見守るとかね……!
「え、すごい、佐倉くん、一条くんの知り合いなの!?」
「紹介して!」
女の子たちに群がられた遥斗は、首をふる。
「だめ」
はっきりNOを言える子に育ったよ!
「え──!」
「そーゆーの、りょーくん、だいきらいだから」
たぶん。
「何よ、いじわる!」
叫ぶ女の子たちに、ふんと遥斗は鼻を鳴らす。
こんなのは幼稚園の頃から慣れに慣れに慣れている。
りょーくんに、ライバルを紹介するなんて、ありえない! ふんだ!
鼻息荒く、ぷりぷりする遥斗に、周りの男の子たちの目がまるくなる。
「あの女子の圧に対抗できるなんて、すげえ……」
「……佐倉、ぽわぽわしてそうなのに、メンタルつよつよだな……」
「ふふふん」
ほめられた遥斗は胸を張った。
隣の達也が肩を揺らして笑ってる。
「かわいー顔して強いんだな。遥斗って呼んでいい?」
「じゃあ僕も達也ね。それと僕は、かっこいーから!」
誰も言ってくれないので、自称してみた。
胸を張る遥斗に、達也は声をたてて笑った。
「ああ、うん、かっこかわいー」
ちょっとちがう?
ホームルームが終わったら、今日は解散だ。
鞄を持った遥斗は、そうっと1組をのぞいた。
頭ひとつ背が高い涼真は、すぐに見つかる。周りを女の子たちに取り囲まれているのも、いつものことだ。
手をふると、すぐ気づいた涼真が扉のところまで来てくれた。
「あ、あの、さっきは、ごめんね。え、えと……いっしょに、かえる……?」
そうっと見あげたら、こくんと涼真はうなずいてくれた。
それだけで、胸のもやもやも、しょんぼりも、涙も、何もかもがしゅわしゅわ消えて『りょーくん、だいすき』が指先まで満ちてゆく。
りょーくんの足手まといにならずに、りょーくんの傍にいたい。
それは、とても、とても難しいことだけれど。
がんばらないで、あきらめるより。
必死でがんばって、それでもだめだったときに、はじめてあきらめようと思うんだ。
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