【完結】かわいい彼氏

  *  ゆるゆ

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ふふふん

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 泣いてしまった。

 しょんぼり遥斗は肩を落とす。
 泣いて叫んで駆け去るなんて、まるで幼稚園児だ。

 あの頃から、遥斗はちっとも変わっていない気がした。


 りょーくんが、だいすきなことも。

 ずっと、ずっと、りょーくんの隣にいたいことも。


 身体ばかり大きくなっても、心はちっとも変わらない。


 せっかく涼真といっしょの高校に入れて、いっしょに登下校できるのに、最初から気まずくなってしまった遥斗の唇から、ためいきがこぼれた。

 1年3組のクラスの扉を開けるのも、重たい。

 出席番号順に座った皆が、ともだちを作ろうとそわそわしてる。

 遥斗は2列目の一番後ろの席だった。
 隣の子の眼鏡のフレームが春のひかりを反射する。

「僕、遠野達也。第二中だよ。よろしくね。きみは?」

「佐倉遥斗。第一中。よろしくー」

 笑顔であいさつしたら、すぐわかる。
 なかよくなれそうか、そうじゃないか。

 遠野くんとは、なかよくできそうな気がする。

 そういう気もちは、すぐ伝わる。
 ふたりで笑ったときだった。

「もしかして、あの一条涼真と話してなかった?」

「すっげー!」

 周りの子たちに話しかけられて、びっくりする。
 新入生代表の人の名前なんて、ふつう覚えないとおもうけど、涼真はよほど衝撃だったらしい。

「……あ、うん、幼なじみで……」

「へー!」

「あんなのが幼なじみだと、添え物になる感、半端ねえよな」

「大変そう」

 むっとした遥斗は、首をふる。

「楽しいことしかないよ」

 ほんとは、切ないことも、いっぱいあるけど。バレンタインを見守るとかね……!


「え、すごい、佐倉くん、一条くんの知り合いなの!?」

「紹介して!」

 女の子たちに群がられた遥斗は、首をふる。

「だめ」

 はっきりNOを言える子に育ったよ!


「え──!」

「そーゆーの、りょーくん、だいきらいだから」

 たぶん。

「何よ、いじわる!」

 叫ぶ女の子たちに、ふんと遥斗は鼻を鳴らす。
 こんなのは幼稚園の頃から慣れに慣れに慣れている。

 りょーくんに、ライバルを紹介するなんて、ありえない! ふんだ!

 鼻息荒く、ぷりぷりする遥斗に、周りの男の子たちの目がまるくなる。

「あの女子の圧に対抗できるなんて、すげえ……」

「……佐倉、ぽわぽわしてそうなのに、メンタルつよつよだな……」

「ふふふん」

 ほめられた遥斗は胸を張った。

 隣の達也が肩を揺らして笑ってる。

「かわいー顔して強いんだな。遥斗って呼んでいい?」

「じゃあ僕も達也ね。それと僕は、かっこいーから!」

 誰も言ってくれないので、自称してみた。

 胸を張る遥斗に、達也は声をたてて笑った。

「ああ、うん、かっこかわいー」

 ちょっとちがう?







 ホームルームが終わったら、今日は解散だ。

 鞄を持った遥斗は、そうっと1組をのぞいた。

 頭ひとつ背が高い涼真は、すぐに見つかる。周りを女の子たちに取り囲まれているのも、いつものことだ。

 手をふると、すぐ気づいた涼真が扉のところまで来てくれた。


「あ、あの、さっきは、ごめんね。え、えと……いっしょに、かえる……?」

 そうっと見あげたら、こくんと涼真はうなずいてくれた。

 それだけで、胸のもやもやも、しょんぼりも、涙も、何もかもがしゅわしゅわ消えて『りょーくん、だいすき』が指先まで満ちてゆく。



 りょーくんの足手まといにならずに、りょーくんの傍にいたい。


 それは、とても、とても難しいことだけれど。

 がんばらないで、あきらめるより。

 必死でがんばって、それでもだめだったときに、はじめてあきらめようと思うんだ。







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