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特権
しおりを挟む「帰りに涼真くんと一緒にお弁当を食べたらいい。花見弁当になるよ!」
おとうさんのおすすめのとおり、帰り道、満開の桜の公園で、遥斗は涼真といっしょにお弁当を食べた。
ちゃんと二人分、涼真のすきな卵焼きもしっかりつめてくれるおとうさんは、わかってる。もちろん遥斗のだいすきな唐揚げも、もりもりしてる。
りょーくんと一緒に食べるごはんは、いつも、とびきりおいしい気がする。
「りょーくん、花びら、ついてる」
夜空の髪に手をのばす理由ができるから、桜がだいすき。
そっとふれた涼真の髪は、思ったよりずっとやわらかで、いい香りがする。
とくとく胸が音をたてる。
おどろくほど近い夜空の瞳をのぞきこんだら、もっと、もっと近づきたくなって、抱きしめて、き、ききききききす……! とか……! し、したいなって思ってしまった遥斗は、燃える頬をあわてて伏せた。
『じゃあ、また明日』
家の前で、いつもなら笑って手をふるところを、遥斗は涼真を見あげる。
見あげるようになっちゃったんだな、と思うと、すこし切ない。
もうちょっと背がのびて、りょーくんに、つりあうようになったらいいのに。
りょーくんにふさわしい人に、なれたらいいのに。
願う遥斗は、そうっと口を開く。
「りょーくんの部屋でお話したいんだけど、いいかな」
こくんとうなずいた涼真は、家の玄関の鍵を開け、遥斗を通してくれた。
会社を経営しているという涼真のおかあさんと、その会社に勤めている涼真のおとうさんは、平日の日中に家にいることはほとんどない。夜も遅くまで働いているのだという。
いつも涼真の家は、しんとしている。
遥斗の家も、両親が会社員で働いているので似たような感じなのだけれど、掃除はしているのに何となくごちゃっとしている遥斗の家は生活感があって落ちつくのに対し、涼真の家はスタイリッシュなモデルハウスみたいで、お邪魔するたび、ちょっと緊張する。
涼真の部屋に通してもらった遥斗は、幼稚園のころからの定位置の涼真のベッドに腰かけた。
幼なじみの特権だと思う。
だいすきな涼真の部屋で、涼真のベッドに座れるだなんて。
涼真のすずやかな、やさしい香りに包まれるようで、うっとりした遥斗は、あわてて真面目な顔になった。
まっすぐ涼真を見つめる。
「りょーくん、行きたい大学があったら、教えてほしい」
夜空の瞳が、瞬いた。
「まだ早いって思うかもしれないけど、僕、準備しないと間に合わないから。必死でがんばるから。だから、どこを目指してがんばったらいいか、対策をするために、教えてほしい」
すこし沈黙した涼真は、うなずいた。
もう考えてあるのだろう、見やすいようにパソコンを開いてくれる。
「白輝」
遥斗は眉をしかめる。
学生の起業を応援したり、日本で唯一の斬新な研究でテレビや新聞に出たりする、この辺りのまあまあ知られた大学だけれど、そこそこの偏差値だ。一流大学と呼ばれるような大学ではない。
「……僕にあわせて、ランクを下げてくれた?」
僕が、また、りょーくんの足を引っ張る?
情けなくて、くやしくて、尖る遥斗の声に、涼真は首をふった。
「俺、起業する」
ぽかんと遥斗は口を開ける。
「……き、きぎょう……?」
こくんと涼真はうなずいた。
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