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ぶるぶる
しおりを挟む『よーくんが、りーくんなら。明日の帰り道、家の前でスマホを出して、点灯して。僕も、スマホを点灯する』
りーくんがくれた感想の返信を書きこむ遥斗の指が、ぶるぶるしてる。
隣の家に住む幼なじみが、一緒に下校して家に着いたときに、おもむろにスマホを取りだして点灯する確率は、限りなく0に近いと思う──!
災害が急に来なければ!
明日の帰り道だけは、なにとぞ、なにとぞやめてください、お願いしますぅう──!
天に祈った遥斗は
「きゅう」
倒れた。
発熱も、どきどきも、限界を超えてる。
「ちょっと! 点滴まで打って熱を下げてもらったのに、はる、ベッドで何してるの!」
おかあさんの大きな声の向こうで
「仕方ないんだ、おかあさん! 色々、色々あるんたから……!」
真っ赤なおとうさんが、もじもじしてる。かわいい。
「ち、ちが──! スマホよ、スマホ──!」
真っ赤なおかあさんが抗議してる。かわいい。
「遥斗、スマホしすぎ! 朝から晩までスマホばっかり見てー! 熱がある時まで見てるから熱が下がらないんでしょ! 没収!」
かわいいとか言ってる場合じゃなかった!
スマートフォンを奪われまいとがんばる遥斗の手は、熱でふにゃふにゃだ。
「えぇえぇエェエ──!? そ、それだけは……! い、今は、今だけは止めて……!」
泣いちゃいそうな遥斗に、おかあさんは首をふった。
「熱が下がるまで、没収。静かに寝てなさい。あのねえ、遥斗、高熱が続くと男の人は、ほら、その、ねえ、あれの数や質が低下しちゃったりするの。3か月くらいの一時的なものがほとんどみたいだけど、ほとんどってことは、まれには一時的じゃなくて失われるってことよ。大変なの!」
「……あれ?」
首をかしげる遥斗に、おとうさんが、おごそかにうなずいた。
「そう。あれ。子どもができなくなっちゃったら大変だから、おとなしく寝てなさい、遥斗。血液検査に異常がなくて心因性の発熱みたいだから、熱さましを飲んで、もうしばらくだけ様子を見ましょうって」
おとうさんが、やさしく頭をなでてくれる。
「これでよくならないと、大きい病院に行かないとなのよ。無理しないで、遥斗」
おかあさんがちょっと涙目だ。
反省した遥斗は、うなずいた。
りょーくんがだいすきだから、子どもはつくれないよ。言えない唇が、もごもごした。
ああ、オンラインBL小説みたいに魔法があったら、僕だってりょーくんの子を孕めるのに!
しょんぼりして枕を抱きしめた遥斗は、気づいた。
りょーくんの子を孕むどころか、りょーくんと恋人にさえ、なってなかった!
もっと、しょんぼりした。
もし、もしもりょーくんが、りーくんなら、今日の帰り道にスマホをビカー! で両想いになりたかったのに。
どきどきしながら一緒に登下校して、手をつないで、家の前で
『りーくんなの?』
『るーくんなのか……?』
したかったのに!
感動の両想いが、繰り広げられたかもしれないのに!
……いや、でも、間違ってたら? 全然関係なかったら?
ただのよく似た境遇の、遠い誰かだったら?
遥斗ひとりで、家の前で、スマホをビカー?
りょーくんに『何やってんの、ハル』って言われちゃう!
は、はずかし────!
「きゃ──ぁ──ア──!」
布団のなかでもだもだする遥斗に、おとうさんの声が降る。
「スマホ、関係ないんじゃないか……?」
「……そうみたいね……」
両親の声が、遠くなってる。
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