49 / 75
……!
しおりを挟むこんこんと遥斗は眠った。
時折起きて、水を、薬を飲んだりする以外の時間を、眠りつづけた。
起きあがりたいのに。
りょーくんと一緒に登下校して、家の前でスマホをビカー! したいのに。
身体は泥のように熱く、重く、まぶたをあげることさえ、ひと苦労だ。
お手洗いに立つことさえつらい。おもらしできないから、渾身の力でがんばるけど!
「ふにゃー……スマホ……」
お手洗いに行くまでに力尽きそうだった遥斗を支えてくれるおとうさんにすがったら、腰を気にしながらお父さんは眉をさげた。
「こんな時にもスマホなのか、遥斗……!」
だって、りょーくんと、両想いがかかってるのに……!
もしかしたら全然ちがう、遠くの人かもしれないとも思う。
でもりょーくんが、りーくんなら、両想いなのに……!
あとすこしで、りょーくんと……!
10年の片思いが、実るかもしれない……!
思えば思うほど、熱はあがってしまうようだった。
身体中の関節が軋む熱にのまれた遥斗は、『りーくんの恋日記』に夢中になって『るーくんの恋小説』を書いた夢を、見ていた気がした。
夢では遥斗は家の前でスマートフォンを掲げ
『りーくん……!』
『るーくん……!』
『だいすきだよ……!』
両想いになって、泣いていた。
起きたらほんとうに泣いていて、目じりから涙がこぼれた。
「……りょーくん……」
逢いたいよ。
お見舞いに来て、くれないの……?
……りょーくん……
こぼれる涙といっしょにぼんやり目覚めた遥斗の頭がちゃんと働きはじめたのは、3日後のことだった。
…………終わった。
スマホでビカー! 作戦が終了した……!
あぁあ、だめだ、もう一回!
もう一度チャンスをお願いします──!
もぞもぞスマートフォンを起動しようとした遥斗は、手元にないことに気づいて、しゅんとした。
起きあがろうとした身体が重くて、びっくりする。
眠りつづけた身体は、よれよれだ。
枕もとに置いてくれてあったお水を飲んで、遥斗は何とか身体を起こした。
「スマホー、くださいー」
「3日も眠って、開口一番それなのか、遥斗!」
在宅勤務に切り替えて、ずっと心配してくれていたのだろうお父さんが、ちょっと涙目だった。
お水を飲んで、お風呂に入って、うめぼしお粥を食べた遥斗は、ちょっと元気になった。
お風呂ってすごい。
軟体動物から、人間に戻る気がする。
「スマホー」
涙目な遥斗に、お父さんが仕方ないな、と眉をさげる。
こういうときにおねだりするのは、おとうさんに限る!
「ちょっとだけだぞ。おかあさんには内緒にな」
こくこくうなずいた遥斗は、さっそくアプリを起動する。
ひとりでビカー! でも構わない!
『何やってんの、ハル』にも、めげない!
りょーくんと、両想いになりたいよう──!
『熱で倒れててごめんなさい! 明日はだいじょうぶそうだから、明日の帰りに、スマホのライト点灯しよう!』
燃える頬で『りーくんの恋日記』に感想を書きこもうとした遥斗は、閲覧履歴から『✨🎀💕りーくんの恋💖日記💕🎀 ✨』をタップして、現れた文字に息をのむ。
【 削除されたか、非公開です 】
436
あなたにおすすめの小説
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。
黒茶
BL
人気者だけど実は人間嫌いの嘘つき先輩×素直すぎる後輩の
(本人たちは気づいていないが実は乙女ゲームの世界である)
異世界ファンタジーラブコメ。
魔法騎士学院の2年生のクラウスの長所であり短所であるところは、
「なんでも思ったことを口に出してしまうところ。」
そして彼の秘密は、この学院内の特定の人物の個人情報が『ステータス画面』というもので見えてしまうこと。
魔法が存在するこの世界でもそんな魔法は聞いたことがないのでなんとなく秘密にしていた。
ある日、ステータス画面がみえている人物の一人、5年生のヴァルダー先輩をみかける。
彼はいつも人に囲まれていて人気者だが、
そのステータス画面には、『人間嫌い』『息を吐くようにウソをつく』
と書かれていたので、うっかり
「この先輩、人間嫌いとは思えないな」
と口に出してしまったら、それを先輩に気付かれてしまい・・・!?
この作品はこの1作品だけでも読むことができますが、
同じくアルファポリスさんで公開させていただいております、
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」
とあわせて「乙女ゲー3部作」となっております。(だせぇ名前だ・・・笑)
キャラクターや舞台がクロスオーバーなどしておりますので、
そちらの作品と合わせて読んでいただけたら10倍くらい美味しい設定となっております。
全年齢対象です。
BLに慣れてない方でも読みやすいかと・・・
ぜひよろしくお願いします!
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる