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……!
しおりを挟むこんこんと遥斗は眠った。
時折起きて、水を、薬を飲んだりする以外の時間を、眠りつづけた。
起きあがりたいのに。
りょーくんと一緒に登下校して、家の前でスマホをビカー! したいのに。
身体は泥のように熱く、重く、まぶたをあげることさえ、ひと苦労だ。
お手洗いに立つことさえつらい。おもらしできないから、渾身の力でがんばるけど!
「ふにゃー……スマホ……」
お手洗いに行くまでに力尽きそうだった遥斗を支えてくれるおとうさんにすがったら、腰を気にしながらお父さんは眉をさげた。
「こんな時にもスマホなのか、遥斗……!」
だって、りょーくんと、両想いがかかってるのに……!
もしかしたら全然ちがう、遠くの人かもしれないとも思う。
でもりょーくんが、りーくんなら、両想いなのに……!
あとすこしで、りょーくんと……!
10年の片思いが、実るかもしれない……!
思えば思うほど、熱はあがってしまうようだった。
身体中の関節が軋む熱にのまれた遥斗は、『りーくんの恋日記』に夢中になって『るーくんの恋小説』を書いた夢を、見ていた気がした。
夢では遥斗は家の前でスマートフォンを掲げ
『りーくん……!』
『るーくん……!』
『だいすきだよ……!』
両想いになって、泣いていた。
起きたらほんとうに泣いていて、目じりから涙がこぼれた。
「……りょーくん……」
逢いたいよ。
お見舞いに来て、くれないの……?
……りょーくん……
こぼれる涙といっしょにぼんやり目覚めた遥斗の頭がちゃんと働きはじめたのは、3日後のことだった。
…………終わった。
スマホでビカー! 作戦が終了した……!
あぁあ、だめだ、もう一回!
もう一度チャンスをお願いします──!
もぞもぞスマートフォンを起動しようとした遥斗は、手元にないことに気づいて、しゅんとした。
起きあがろうとした身体が重くて、びっくりする。
眠りつづけた身体は、よれよれだ。
枕もとに置いてくれてあったお水を飲んで、遥斗は何とか身体を起こした。
「スマホー、くださいー」
「3日も眠って、開口一番それなのか、遥斗!」
在宅勤務に切り替えて、ずっと心配してくれていたのだろうお父さんが、ちょっと涙目だった。
お水を飲んで、お風呂に入って、うめぼしお粥を食べた遥斗は、ちょっと元気になった。
お風呂ってすごい。
軟体動物から、人間に戻る気がする。
「スマホー」
涙目な遥斗に、お父さんが仕方ないな、と眉をさげる。
こういうときにおねだりするのは、おとうさんに限る!
「ちょっとだけだぞ。おかあさんには内緒にな」
こくこくうなずいた遥斗は、さっそくアプリを起動する。
ひとりでビカー! でも構わない!
『何やってんの、ハル』にも、めげない!
りょーくんと、両想いになりたいよう──!
『熱で倒れててごめんなさい! 明日はだいじょうぶそうだから、明日の帰りに、スマホのライト点灯しよう!』
燃える頬で『りーくんの恋日記』に感想を書きこもうとした遥斗は、閲覧履歴から『✨🎀💕りーくんの恋💖日記💕🎀 ✨』をタップして、現れた文字に息をのむ。
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