【完結】かわいい彼氏

  *  ゆるゆ

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……きらいに……?

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 あわあわTシャツとデニムに着替えた遥斗は、ちょっと肌寒いかなと薄手のパーカーを羽織って家を飛びだした。

「いってきます!」

 玄関の扉を開けたら、お隣さんの扉まで8歩で到着だ。

「こんにちはー。遥斗ですー」

 今日は涼真は飛んできてくれないだろうと、遥斗はそっと涼真の家のインターホンを押す。
 すぐに、すごい勢いで扉が開いた。

「遥斗くん! 来てくれたのか!」

 ちょっと涙目で叫んだのは、涼真のおとうさんだ。
 大きな声をだすところを見たことがなかった遥斗は、びっくりしながらうなずいた。

「身体は? だいじょうぶ?」

 心配そうに聞いてくれるのは、いつものやさしい感じで、遥斗はうなずく。

「熱が下がったみたいで、さっき起きました。3日も寝てて、ごめんなさい。りょーくんが、部屋から出てこないって──」

 涼真によく似た切れ長の涼やかな瞳が、泣きだしそうに揺れる。

「急に部屋から出てきてくれなくなったんだ。僕と涼華さんが話しかけても、何も答えてくれなくて……」

 いつも家族や遥斗には、涼真はちゃんと答えてくれるのに……!

「りょーくんが──!」

 遥斗のほうが泣きそうだ。

「はるくんの体調が大丈夫だったら、りょうくんと、すこし話をしてあげてくれないかな?」

 涼真のおとうさんの目が期待に満ちていて、遥斗はくるしくなる。

「……僕にも、何も話してくれないかもしれませんが……」

 涼真の父は、微笑んだ。

「はるくんが来てくれたら、きっとりょうくんはよろこぶから。
 ありがとう、遥斗くん」

 遥斗の手を、にぎってくれた。





 涼真の部屋は、3階の奥の部屋だ。出窓があって、夜は瞬く星が降るようだ。

 幼稚園のころにも、小学校のころにも、いっしょにお泊まりして、流れ星を探したことを思いだす。
 中学のときは、ふたりで一緒にゲームをして笑って、気がついたら夜が明けていた。

「流れ星、見つけるの忘れちゃったね」

 遥斗が残念がると、涼真はささやいた。


「……星に願うより、夢みたいな時間だったから。いい」

 その言葉が、夢かと思った。


 遥斗がお星さまにかける願いはいつだって
『涼真と両想いになりたい』だったから。





 涼真の部屋の白い扉の前に立った遥斗は、息を吸う。

 ノックの音は硬いから、落ちこんでいるのかもしれない涼真をびっくりさせてしまうかもしれない。

 だから遥斗は、そうっと声をかける。


「りょーくん、遥斗です」

 ぼすん!

 防音がしっかりした部屋なのに、ベッドのうえで飛びあがって落ちたような音がした気がした。


「病院に運んでくれて、帰りも、ありがとう。僕、熱でずっと寝てて、さっき起きたの。来るのが遅くなってごめんなさい」

 遥斗はそっと、扉にてのひらをあてる。


「りょーくん、起きてる? 入ってもいい?」

 しんと静かな部屋に、遥斗はしょんぼりした。


 いつもなら、涼真はすぐに扉を開けてくれる。いや、涼真の家の前で『りょーくん、遥斗です』言った次の瞬間に扉を開けてくれるのが涼真だ。


 涼真は、遥斗に逢いたくないのだ。

 思うだけで、鼻の奥がつんとする。


「……りょーくん、僕に、逢いたくない……?」

 声は、ふるえた。


「……僕のこと、きらいになった……?」

 泣き声だ。



 バァン──!

 音をたてて、扉が開いた。








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