1 / 28
抱っこ?
しおりを挟む………………ねむい。
満員電車で、ちゃんと立っているはずなのに、今にも寝ちゃいそうなくらい、眠い。
秋がはじまったと思ったら急に寒くなったからだろう、車内に入れられた暖房が、さらに俺を、ねむねむにする……!
「おい、あき、愛希!
揺れてるぞ!」
同じ男子高校の制服に包まれた腕を伸ばして心配してくれる幼なじみの友樹に
「……うー……」
答えられたかどうかも分からないくらい、ねむい。
──昨夜は、やばかった。
大すきなオンラインBL小説を書いている人が、21万字の新作を一気に投稿したのだ。
スマートフォンの小さな画面をタップする手を止められなかった……!
最高だった──!
明け方にようやく読み終わって、寝ようと思ったのに興奮しすぎて眠れなかった。
あんな風に、『あいしてる』言われてみたいよ──!
きゃ──♡
とか思ってたら、眠れない。
わかってる。
限界がきて墜落するように意識を失ったのは、ほんのさっきだった気がする。
叩き起こされて、食パンをくわえて駅まで自転車で爆走して、いつもの電車の時間に間にあったのは奇跡だと思う。
でも食パンをくわえて、遅刻しそうになりながら爆走したのに、ぶつかって恋がはじまらなかったのは納得いかない。
……おかしいよね?
俺が首をかしげているあいだに
「愛希!」
腕を伸ばしてくれる友樹が、人の波の向こうに消えてゆく。
そう、満員電車は、流れに逆らおうとすると大変な目に遭う。
『降ります! 通してください!』なとき以外は流されてゆくのが、ただしい満員電車の乗り方だと思う。……たぶん!
俺が流れついた先は、めちゃくちゃいい匂いのする胸だった。
頭の芯が、しびれるような
心の奥まで、とろけるような
「……ぃーにぉぃ……」
カクっ
「……え……? だ、だいじょうぶか……!?」
戸惑ったような声が降った気がする。
俺は寝た。
ぐうぐう寝た。
めちゃくちゃいい匂いにつつまれて、あったかい腕と胸にくるまれて、こんなに気持ちよく眠れたことなんて今までかつてなかったと思うくらい、至高の眠りを味わった。
「青城ー、青城です。右の扉が開きます。扉にご注意ください」
車掌さんの素晴らしくいい声に飛び起きた俺は、目の前にある白いシャツが、べっしょりになっている事態に目をむいた。
──まちがいない。
俺の、よだれだ──!
「うわ──! す、すすすすみません……! こ、こここれから仕事ですよね……!」
泣きそうな目で見あげた瞬間、背がふるえた。
つややかな夜の髪に彩られた切れ長の瞳が、ふわふわの栗色の髪の俺を映した。
背が高い。
藍のスーツに包まれた広い胸のぬくもりを、もう知ってる。
桜の唇が、ほのかな笑みをえがく。
「気分は、わるくない? 寝てただけ?」
「は、はい、すみません、クリーニング代、お支払いします──!」
あわてて鞄から財布を出そうとする俺の向こうで、電車の扉が開いてく。
「ぎゃあ──!」
ここで降りられなくて、次の駅まで行って折り返したら、絶対に遅刻する……!
「青城高校? 降りないと。
平気だから、気にするな」
やさしく背を押してくれた。
……めちゃくちゃ、いい匂いがする。
頭の芯を、とかすような
心の奥に、刺さるような
「あ、あの、明日もこの電車に乗りますか!?
俺、愛希です! 片白愛希!」
かすかに見開かれた瞳が、ひらめいた。
「東城真紀」
開いた扉の向こうから、秋のはじまりの風が吹きこんだ。
夜の髪が、舞いあがる。
とくん
鼓動が、音をたてる。
頬が、あつい。
とくん
あなたに落ちる、音がする。
────────────────
はじめましての方も、他のお話も見てくださった方も、ぜんぶ読んでくださった方も(もし、いらっしゃったら大歓喜です!(笑))ありがとうございます!
BL大賞さまで皆さま、がんばっていらっしゃるのに申しわけないのですが、たぶん現代ものだから、そんなにお邪魔にならないかな、と……(笑)すぐ終わる短編なのですー!(笑)
というわけで、ご容赦たまわれたら、さいわいです……!
可愛くて元気な高校生の愛希ちゃんと、かっこいい社会人の真紀ちゃんのお話です!
愛希ちゃんと真紀ちゃんの動画が、インスタとYouTubeにあがっています。プロフのwebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!
BLoveさまのコンテストに応募するためにお書きしたお話なのですが、字数増量なアルファポリスさま限定版をお送りします!
さくっと読んでいただける短編の予定なので、もしよかったら、楽しんでくださったら、とても、とてもうれしいです!
1,005
あなたにおすすめの小説
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
夜が明けなければいいのに(洋風)
万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。
しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。
そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。
長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。
「名誉ある生贄」。
それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。
部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。
黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。
本当は、別れが怖くてたまらない。
けれど、その弱さを見せることができない。
「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」
心にもない言葉を吐き捨てる。
カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。
だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。
「……おめでとうございます、殿下」
恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。
その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。
――おめでとうなんて、言わないでほしかった。
――本当は、行きたくなんてないのに。
和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。
お楽しみいただければ幸いです。
ランドセルの王子様(仮)
万里
BL
大学生の森下優太(20)は、ある日の夕暮れ、ひったくり犯に襲われ絶体絶命のピンチに陥る。そんな彼を救ったのは、鮮やかなシュートで犯人を撃退した小学生の少年、日向蒼だった。
ランドセルを背負いながらも、大人顔負けの冷徹さと圧倒的なカリスマ性を持つ蒼。その姿に、優太はあろうことか「一目惚れ」をしてしまう。「相手は小学生、これはただの尊敬だ」と自分に言い聞かせる優太だったが、蒼のクールな瞳と救われた手の温もりが頭から離れない。
親友には「自首しろ」と呆れられながらも、理性と本能(ときめき)の狭間で葛藤する。禁断(?)のドキドキが止まらない、20歳男子による「かっこよすぎるヒーロー(小学生)」への片思い(自認はリスペクト)。
出戻り王子が幸せになるまで
あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
初恋の相手と政略結婚した主人公セフィラだが、相手には愛人ながら本命がいたことを知る。追及した結果、離縁されることになり、母国に出戻ることに。けれど、バツイチになったせいか父王に厄介払いされ、後宮から追い出されてしまう。王都の下町で暮らし始めるが、ふと訪れた先の母校で幼馴染であるフレンシスと再会。事情を話すと、突然求婚される。
一途な幼馴染×強がり出戻り王子のお話です。
※他サイトにも掲載しております。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
偽りの聖者と泥の国
篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」
自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。
しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。
壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。
二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。
裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。
これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。
-----------------------------------------
『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ
この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。
本編に救いはありません。
セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。
本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。
【創作BLオメガバース】優しくしないで
万里
BL
壮士(そうし)は男のΩ。幼馴染の雅人(まさと)にずっと恋をしていた。雅人は太陽のように眩しくて、壮士の世界を変えてくれた存在。彼の影を追うように、同じスポーツを始め、同じ高校に進学し、ずっと傍にいた。
しかし、壮士のヒートのせいで、雅人も充てられて発情してしまう。壮士は必死に項を守り、番になることを拒む。好きだからこそ、こんな形では結ばれたくなかった。壮士は彼の幸せを願って別の大学へ進学する。
新しい環境で出会ったのは、α・晴臣(はるおみ)。彼もまた、忘れられない人がいるという。
互いに“好きな人”を抱えたまま始まる関係。心の隙間を埋め合うふたり。けれど、偽りのはずだったその関係に、いつしか本物の感情が芽生えていく?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる