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ひっさつ?
しおりを挟む「…………え……?」
ぽかんと、レォが形のよい唇をほんのり開けるのが見えた。
キーアの足が
トン
大気を、蹴る。
正確には、魔力で魔素を固化して、足場にした大気を。
シャ──!
キーアの双剣がうなる。
「く──!」
茫然としたのは一瞬で、迫る剣を防ごうと、レォの長剣もうなりをあげる。
ギィイィン──!
すさまじい衝撃に、火花が散った。
──これも止めてくるか。
さっすがレォ!
感嘆したのは一瞬で、キーアは跳んだ。
魔力を流し、大気を固化させ、足場にする。
360℃、全方位に、突撃できる。
「トマ師匠直伝! ひっさつ! きーちゃん剣!」
キーアの双剣がうなりをあげるなか、レォが、あんぐり口を開けた。
いつもクールなレォの、あんぐり、尊い──!
拝んでる場合じゃないよ!
「…………は…………!?」
大気を蹴って、方向を変えて突撃してくるなんて、ありえないよね?
ありえない場所から刃が襲うとか、ありえないよね?
驚愕してくれたら、隙ができる。
あんぐり、いただきましたァ──!
びっくりさせて、ぷっすり剣だよ!
たぶん、ひっさつ! ……たぶん!
「──っ!」
レォのかざす剣が、乱れる。
キーアの突撃の軌道は、めちゃくちゃだ。
物理法則を真っ向から叩き斬るように、空中で突然曲がるし、突然止まるし、突然襲う。
この常識をくつがえす攻撃を、トマ師匠が叩きこんでくれたんだよ!
人間は、いつも予測する。
投げた物は放物線を描いて落ちてくるだろう、こう跳んだら、これくらいの速さで、こう落ちるだろう、と。
わずかに先を読み、そこを捉えて攻撃する。
強い人であればあるほど、攻撃パターンを熟知し、先を読むことが可能になる。
それを叩き崩すのが、きーちゃん剣だ。
先を読むのが得意で、いつも先回りして相手を制することができる、レォのように強い人ほど、効果は甚大だ。
「いっくよ──!」
くるりとキーアが、回転する。
「魔力解放!」
すべての空が、足場に変わる。
「加速!」
筋肉が、爆発する。
「きーちゃん剣!」
全方位から、突撃の刃を繰りだした。
「く──っ!」
見えぬほどの速さで繰りだす双剣を、レォが薙ぎ払おうと剣をひいた瞬間を見逃さなかった。
思いきり、大気を蹴る。
交差させた双剣を、レォの剣に叩きつけ、両手で思いきり押しこんだ。
「でやあ!」
「ぐぅ──!」
レォの身体が一歩下がった瞬間、左手の剣を抜き、レォのはちまきだけを切り裂いた。
青い紐が、天に散る。
「やったぁ──!」
両の拳をかかげて跳びあがるキーアの白のはちまきが、落ちてゆく。
「…………え…………?」
ぽかんとキーアは、口をあけた。
「おんなじこと、考えてたね」
つややかに汗をしたたらせたレォが、笑う。
レォが引いた長剣の切っ先が、キーアのはちまきだけを切り裂いていた。
ブォオオオオ──!
角笛が鳴り響く。
「将が相討ち! 戦闘、止め──!」
死に物狂いで剣を交えていた生徒たちが、ぜえぜえ肩で息をつきながら崩れ落ちた。
「腕に紐が残ってる者を数えるぞー。立てー!」
よろよろと立ちあがってゆくのは、白い紐を巻いた者たちだ。
「……うそだろ……」
「あんだけ突撃しといて?」
「残ってんのか!」
「お頭を守るために生き残ったんだ!」
「当たり前だろ!」
「はァア──!?」
「並べ並べ、数えるぞー!」
一番楽しそうなガチムチ先生が、腕に紐が残った生徒を並ばせてゆく。
ひとり、ひとり、並んでゆく皆の顔が、誇らしそうに輝いた。
「青組22、白組23、将が相討ちしたため、残っている兵の数が多い、白組の勝利とする!」
音が、消える。
白組の皆で、顔を見あわせた。
「…………勝った……?」
「……うそ……」
「すげえ……!」
「お頭、やったよ──!」
「うおぉおオオオ──!」
最後まで残った者も、紐を切られた者も、皆が立ちあがって、もみくちゃだ。
「勝ったよ、お頭!」
「あのレォさまに、俺らが、勝ったァア──!」
「お頭、すげえ──!」
飛びつくように抱きついてくる皆に、茫然としていたキーアの身体の奥から、よろこびがじわじわ染みだした。
「うわあん! 皆のおかげだよ、ありがとうー!」
「お頭ァア──!」
皆で、ぎゅうぎゅう抱きあって、泣いてしまいました。
「ふぇえええ!」
「え、ちょ……! お頭、かわいーから!」
「強くて、かわいーとか、最強かよ!」
真っ赤になったガチムチな皆が、もだもだしてる。
「……自分の将としての不足が、よくわかりました。とてもよい模擬戦だったと思いますが、まさか、キーアの親衛隊を造成するための講義ではありませんよね?」
レォの声が、地を這ってる。
「……いや、うん、なんか、思ってたのと違う風になった」
ガチムチ先生が、頭を掻いてる。
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