【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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ほんき!

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 身体の芯がしびれるようなレォのあまい声に、とろけかけたキーアは、あわてて首を振った。

「はー、初撃を防がれちゃうと、分がわるいよ。さっすがレォ」

 全力で加速した初撃で、はちまきを切る計画が、失敗しました。


 ──団体戦開始直後で、びっくりしてるレォを隙をつく。

 これが唯一、レォに勝てる策だったのに、さっそく頓挫しちゃったよ!


 超絶ハイスペックな攻略対象レォさまに、顔も名前も声もないモブが、勝てるわけない。

 でも、キーアはこの世界で生きていて、ちゃんと顔も名前も声もあって、レォと笑ったり、闘ったりできる。


『勝てるわけない』思ったら、絶対勝てないから。

『絶対、勝つ』思うだけで、闘志がみなぎる。


 最初に考えてた計画が全然だめで、失敗したら、プランBだよ。

 いや、全く何にも考えてなかったから、ただもう頑張るしかないよ!


 ギリギリ鋼を削る、交わる刃を見つめたキーアは、ちいさく笑う。

「胸を借りるつもりで、いくね。よろしくお願いしまーす!」

 重なる剣から、力を抜いた。

 突然、全力で剣を交えていた相手が引いたのに、微塵も体勢を崩さないレォは、さすがだ。

 すぐに追撃しようとするレォより速く

 トン

 かろやかに大地を蹴り、空中で旋回する。


「お頭、いっけえ──!」

 初撃に失敗したのが見えただろうに、キーアの背中を守るように、皆が盾を掲げてくれる。

 キーアの突撃に励まされたのか、レォに殺到しようとした白組の皆を、切れあがる青磁の瞳が、睥睨した。

 レォが闘気を開放する。

 ヒュァアア──!

 威圧された突撃隊の皆が、硬直した。

 ほとばしる殺気に、刃で首をなでられたように、一瞬で、動けなくなる。


 正面からレォの威圧を受けたキーアは、双剣を構え、笑った。


 レォが、ちょこっとでも本気になってくれる。

 入学試験のときにも、相手の騎士にしたように。
 たぶん、キーアへの礼儀として。

 ちっちゃいから、弱いから、あなどることなく、ちゃんと真剣に相対してくれる。

 それが、たまらなく、うれしい。


 ギィン──!

 突撃するキーアの双剣を、レォの長剣が止めた。

 シャシャシャシャシャ──!

 剣が鳴る。

 両の手で繰りだすキーアの双剣を止めるには、レォは2倍の速さで剣を振るわなくてはならない。

 なのにレォが掲げる重いはずの長剣が、紙のように振るわれ、キーアが繰りだすすべての刃を防ぎきる。

 ……ついてくる。

 レォの速さと胆力に目を剥いたキーアの唇が、吊りあがる。


「加速」

 つぶやいた瞬間、全身の筋肉が爆発する。

 ギアが上がる。
 刃の軌跡が、目に見えぬほど速く、風を斬る。


「く──!」

 わずかに刀身をひいたレォの剣が、一閃する。


 ドォオオオンン──!

 すさまじい衝撃波が押し寄せるのを

 トン

 大地を蹴ってかわした。


「でやあ──!」

 空中に跳んで、身動きがとれぬキーアへと、レォの剣が迫る。

 わかっていたキーアは、笑った。


 空中に跳ぶ。

 それは、すべての攻撃から逃れる法に見えるが、的になってしまう法でもある。

 特に、相手が強い場合は。


『実戦で使えるようになるためには、空中で自在に身体を使えなくてはなりません!』

 拳をにぎるトマに教えてもらったキーアは、ぽかんとした。

『トマ、忍者なの?』

『……にんじゃ?? とりあえず師匠のトゥヤは、化け物でした。師匠には全く全然微塵も及びませんが、教えてもらったことは、ちょこっとできるようになったんです』

 にこにこしながらトマが教えてくれた。
 空中で、身体を自在にあやつるコツを。

 大気に魔素が満ちている、この世界だからこそできる技だと思う。


 自分の魔力で、魔素をあやつる。

 魔法じゃないから、ゆるされると思うな!



 レォが、ちょこっと本気を見せてくれたように

 トマが鍛えてくれたから

 キーアも、本気でゆくのです。



 というわけで、魔力解放、必殺技、発動です──!







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