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トマといっしょに里帰りだよ!
愛
しおりを挟むトマの師匠、透夜が暮らすのは、農家の倉庫を改築したとても広大な邸だ。
その裏には畑が広がっていて、さらにその向こうが戦闘訓練場らしい。何にもない空き地だったが、大地が裂けたり穴が開いたりしていて、訓練の激しさを物語っていた。
王都の郊外とはいえ、ものすごく広い。
ぽかんとキーアは口を開けた。
「……めちゃくちゃお金持ち?」
「皆で、稼いだから」
透夜は、ちいさく笑った。
「まっとうな金だぞ」
「そ、それは勿論!」
トマが尊敬する師匠が、ひどい輩なわけがない。
「精霊さん、頼む」
透夜がささやくだけで、訓練場を覆う結界が展開してゆく。
キィイイン──!
驚くほど透明で、見たことがないほど強固な結界だった。
「……す、ご……!」
あんぐり口を開けるキーアに、透夜は眉をあげる。
「俺と同じくらい強いのと闘いたくて、精霊さんに無理を言って作ってもらったんだ。
わかるのは、魔力が強いってことだ。精霊さんたちに愛されてるんだな」
キーアの髪の後ろで、もしょもしょしてる闇さまに透夜の視線が降る。
跳びあがった闇さまが、ぷるぷるしてる。かわいい。
じゃなかった!
あわてて掌で闇さまを包んだキーアは、きっと透夜をにらみつける。
「闇さまを、いじめないでください!」
「……え、いや、見ただけだけど」
……そうでした!
強い人に見られるだけで、ぷるぷるしちゃうよね。わかる。
結界の強度を確かめるように指をすべらせた透夜が、剣を抜く。
「抜け、キーア」
「あ、名前、おぼえてくれたんですか」
ぴょこんと跳びあがるキーアに、透夜は唇の端をあげる。
「トマのあるじにふさわしくなかったら、わかってるよな?」
きゃ──!
トマの師匠がこわいです!
「抜け」
これは頑張らないと帰れないあれですね、理解した!
息をひとつ吸ったキーアは、双剣を抜く。
強盗や山賊に襲われた時とかのために持ってきたんだよ。いちおうね!
ふたつの三日月の刃が、夕陽の茜にきらめいた。
「行くぞ」
……えぇえ!?
ここは、『来い!』じゃないの?
胸を貸してくれるんじゃないの?
来ちゃうの!?
きゃ──!
あわあわキーアは腰を落として双剣を構えた。
瞬間
ガキィイイ──!
目の前に刃があった。
止める剣が、ビリビリする。
な、んだ、この人──!
めちゃくちゃ速い──!
キーアは今まで、本気のトマを見たことがない。その本気を出したトマでさえ、透夜には敵わないのだという。
その意味が、一撃でわかった。
速すぎる。
見えない。
気配さえ、追えない。
一撃が、重すぎる。
「ぐ、ぅ……!」
さがる足を踏みしめてこらえる。
キーアはまっすぐ、透夜の氷のような闇の瞳を見あげた。
透夜がトマを心配しているのは、わかる。
透夜がトマを愛しているのも、わかる。
それでもトマは、キーアの家族だ。
「トマは、俺の大事な家族だ! 絶対、渡さない──!」
歯を食いしばり、渾身の力を籠めて押し返す、と見せかけて、力を抜いた。
相手の体勢が大きく崩れるはずなのに。
透夜は、こゆるぎさえしない。
闇の瞳が、射るようにキーアを見た。
それだけで、背がすくむ。
悪寒が、指先まで這いあがる。
強い。
……勝てない。
だからって、トマをあきらめるなんて、できない。
大きく息を吸って、止める。
全身全霊で
「加速──!」
大地を蹴る。
「闇さま!」
キーアの声に応えて、闇さまがキーアを、気配を、音を、闇に包んで消してくれる。
宙で回転したキーアは、空を足場に突撃した。
ギィイイイン──!
刃が削れる音がする。
見えなくなった、気配さえ消したキーアの渾身の一撃を止めて、透夜は笑った。
「へえ、思ったよりずっと、骨がある。
へらへら、ちゃらちゃらして、すぐ泣いてトマを呼ぶのかと思ってた」
「ひ、ひどすぎる──!」
ちゃらくないもん!
剣より、ちゃらいに涙目だよ!
うるうるの目になるキーアに、透夜は面白そうに唇を開いた。
「見た目が、かわいーから」
笑う透夜に、今
きゅん♡
ってした──!
何そのかっこいい微笑み!
や──め──て──!
ぷくりとふくれたキーアは、籠めていた力を抜いて剣を払う。
「トマは絶対、渡さない──!」
双剣を掲げて、飛びこんだ。
キーアが掲げる双剣が、透夜が掲げる長剣が、光の線をえがいて剣花を散らす。
ガガギギギィイン──!
すさまじい剣戟の向こうで、ヨニが微笑んだ。
「ほっほっほ、トマはとっても愛されていますなあ」
耳まで真っ赤になったトマが、ちいさな顔を両手でおおってる。
「ちょ、ひどい──!
トマのために頑張ってるんだから、ちゃんと見て──!」
涙目なキーアに剣を向ける透夜まで、肩を揺らして笑ってる。
────────────────
今日はインスタもきーちゃんで、ちょっと違う(笑)和風なきーちゃんと透夜です(笑)@siro0088
更新してないのに、たくさんの方が見てくださっているみたい? なので、御礼の気もちをこめて、更新してみました!(笑)
応援してくださる方、ずっと読んでくださる、あなたさまに、感謝の気もちでいっぱいです。
ほんとうに、ありがとうございます!
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