文字の大きさ
大
中
小
25 / 157
断言だよ!
ちいさく笑ったヴィルは、衛士たちが引いてきてくれた2頭の馬の首をやさしく撫でた。
「ではすぐ王都へ──」
「だめだめだめだめだめですお兄さま! そっちの子の言い訳、まだ聞いてないから! 詐欺とか、ほんとに絶対絶対絶対絶対許さないんだから──!」
拳を握ったエヴィに叫ばれたノィユも発言の許可を受けて、ちっちゃな拳を握る。
「僕は、ヴィルを、心から、愛しています──!」
絶叫した。
ロダがによによしてる。
耳まで真っ赤になったヴィルが、ちっちゃな顔を大きな掌で覆った。
あんぐり口を開けたエヴィに凝視される。
笑ったトートは、やさしくエヴィの肩を叩いた。
「僕たちは、お邪魔みたいだよ」
「そ、そそそそんなの、絶対、絶対ゆるさな……」
泣きだしそうなエヴィの前に進み出た両親が頭を下げる。
発言の許可を求める低頭に、エヴィは唇を噛んだ。
「……発言を許す」
「ありがたきしあわせ。バチルタ家の窮状は、ひとえに我が祖先と我が身の不徳によるところにございます。ノィユに借金はございません。カビの生えたものしか食べさせてやれぬ我が家の窮状を憐れんでくださったヴィル・ヴァデルザさまのご厚情によるご縁でございます」
ありがたくヴィルを拝んだ母と一緒に拝んだ父が続ける。
「ヴィル・ヴァデルザさまだけが、ノィユに手を差し伸べてくださいました。その御恩をとてもありがたく思っております。契約書にもございますが、バチルタ家の借金でご迷惑を決してお掛けしないことを、ここにお誓い申しあげます」
父が差しだした契約書を熟読したエヴィが、唇を噛む。
一緒に目を通したトートは微笑んだ。
「きちんとした契約ですね。よかった、お義兄さまに伴侶ができて」
ほくほくうれしそうなトートを、エヴィの涙目が睨みつける。
「トートなんて、大きらい!」
「エヴィ──!」
泣いてる。本気だ。
エヴィとトート、ロダとヴィル、両親を見あげたノィユは、拳を握る。
「ヴィルに迷惑を掛けないためなら、ヴィルと結ばれるためなら、僕、莫大な借金も何とかします!」
今まで逃げてばかりだったけど、何の根拠もないけど、希望的観測しかないけど、断言しなきゃいけないと思って、断言した!
「絶対、絶対、ヴィルを、しあわせにします!」
叫んだら、あたたかな腕が降ってくる。
「……もぅ、しあわせ」
あまい瞳で、笑ってくれた。
「ぐぬぬぬぬぬぬ!」
エヴィの愛らしいかんばせが、ものすごいことになってる。
「エヴィ、お義兄さまは、おしあわせになられるんだから、祝福しないと」
やさしくエヴィの肩を抱くトートが、めちゃくちゃうれしそうだ。
「僕の不幸を笑うトートなんて、大きらい!」
「エヴィ──!」
涙目で睨まれたトートが絶望の顔になってる。
ヴィルは弟の陽の髪を、わしゃわしゃ撫でる。
「エヴィの大きらいは、大すき」
微笑むヴィルに、トートが真っ赤になって、目を剥いたエヴィはぶんぶん首を振った。
「ぜ、絶対絶対絶対絶対違うんだからぁあァアア──!」
ツンデレですね、理解しました。
感想 342
あなたにおすすめの小説
【完】帰る場所はあなたの隣
さくなん幼い頃に両親を亡くしたユウは、親戚たちにたらい回しにされた末、森へ捨てられる。
感情を表すことも、人を頼ることも知らないまま生きていたユウを見つけたのは、高位貴族のレオンだった。
周囲の反対を押し切り、自ら世話をすることを決めたレオン。
最初は誰も信じられなかったユウも、乳母のエリシアや屋敷の人々に見守られながら少しずつ成長していく。
笑うこと。
嬉しいと思うこと。
誰かに話を聞いてほしいと思うこと。
一つずつ感情を覚え、世界を広げていくユウ。
友人もでき、知ることも増えていく中で、それでも変わらないものがあった。
それは、どんな時でも帰りたくなる場所。
そして、一番好きな人。
これは何も持たなかった少年が、自分の居場所と大切な人を見つけるまでの物語。
【完結】おひめさまな俺、帝王に溺愛される
* ゆるゆ帝王陛下に捧げられることになった小国の王族レイには、大変な問題が──!
……男です……!
本編、完結済です。
時々おまけのお話を更新しています。
ふたりの動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
表紙や動画にAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
『死ぬほど愛されたい』と願ったら、最強の公爵家に転生して家族の愛が重すぎます!〜赤ちゃん令嬢は『慈愛の眼』で今日もデレを解析中〜
五十嵐紫元・社畜SE、今世は国宝級の赤ん坊!? 最強の父様とお兄様が過保護すぎて、一歩歩くだけで国が揺れちゃいます!
【完結】悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
本編完結済です。
もっちもっち感謝祭で、リクエストいただいたお話を更新しています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
表紙や動画にAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
辺境食堂の隠れΩなのに、拾った皇帝陛下が嫁になれと迫ってくる
月夜 闇花元宮廷料理人で隠れΩの青年レオは、帝国の辺境で小さな食堂兼農園を営みながら、誰にも縛られない平穏なスローライフを送っていた。
ある日、レオは裏庭の不思議な洞窟で、血まみれになって倒れていた大柄な青年アレクを拾う。
彼の正体は、お忍びで辺境を訪れていた帝国最強のα皇帝だった。
身分を隠してレオの家に居候することになったアレクは、レオの作る絶品の手料理と、彼から漂う穏やかな香りに冷え切った心を溶かされていく。
一緒に土を耕し、美味しいご飯を分け合ううちに、相反するはずの二人のフェロモンは心地よく調和していくが、やがて帝都からの追手が迫り……。
手料理が繋ぐ心と体。身分差を越えた、最強α皇帝と隠れΩ料理人の美味しくて甘い辺境スローライフが幕を開ける!
※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!
舞踏会編では『もふもふ獣人に転生したら最愛の推しに溺愛されています』と『伴侶がいるので溺愛ご遠慮いたします』にも出張しました!(笑)
表紙にはAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたまエレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。