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はじめてのおつかい(Request)
「ノィユに『はじめてのおつかい』の任務を与える!」
母ノチェに宣言されたノィユは、ぽかんとした。
…………え、中身30代だよ?
『はじめてのおつかい』って、何か楽しい?
「ノィユがびっくりしてる!」
父ユィクがそわそわしてる。
「厳しい試練なのは承知している。だがしかし、バチルタ家長子たるもの『はじめてのおつかい』に怖じ気づくようではいかんのだ! わかるか、ノィユ!」
両手で肩を掴まれた。
そうでした、見た目3歳でした。
「わかりました、おかあさま。ヴィルと一緒に行ってきます」
ちゃっかりヴィルの手を握ろうとするノィユを、母が止める。
「だめだ! 伴侶同伴では『はじめてのおつかい』とは認められん! たったひとりでこの厳しい任務をこなしてこそ、バチルタ家の一員として認められるのだ!」
きびしい顔をしている母が、ちょっとうるっとしてる。
「が、がんばれ、ノィユ!」
拳を握る父まで、うるっとしてる。
「……ノィユ……!」
ヴィルの目まで、うるうるしてる……!
胸がいっぱいになったノィユは、拳を握る。
「わかりました! バチルタ家長子として『はじめてのおつかい』立派に果たして見せましょう!」
どんと胸を叩いてみたよ。
「で、何を買ってきましょうか。というか、お金、ありますか」
「そこからでした──!」
母が泣いてる。
後ろで見ていたトートが爆笑して、エヴィまでお腹を抱えてる。
「あー、じゃあさ、うちのおつかいしてきてよ。えーとね、料理長、家令長、何か必要なものないかな。3歳児でも買えるようなの」
チリリン
トートが鈴を鳴らすと、しゃっとやってきてくれた料理長と執事長がひそひそ相談してる。
「家令長から申しあげます。筆記具はいかがでしょうか」
「いいね」
「料理長から申しあげます。果物を少しはいかがでしょうか」
「3歳児が持てるくらいだよね。よし、じゃあこれがお金、しっかり持って、なくさないようにね」
トートがお金とおつかいを恵んでくれました!
「い、いえ、トートさま、バチルタ家の『はじめてのおつかい』の任務にネァルガ家にご迷惑をおかけする訳には──!」
「お金、ないんでしょ」
斬り捨てられた母が泣いてる。
「え、えとじゃあ、僕、『はじめてのおつかい』いってきます! 筆記具と欲しい果物の種類を書いてください。どこのお店がおすすめなのか、地図も一緒にお願いします。ネァルガ家の名前を出す場合は、家紋も一緒にお願いします」
「わ、わかりました!」
「……3歳児か……?」
「……はじめてのおつかいなのか……?」
家令長と料理長が、ざわざわしてる。
母が用意してくれていたちっちゃな可愛いぴんくな巾着に、トートのお金を入れたら出発です!
地図を見ながら無事お店に到着しました。
「こんにちはー、ネァルガ家の使いの者です。いつもの筆記具をくださいー」
「はいはーい! ………………え。き、きみは?」
お店の人が、ネァルガ家を名乗る3歳児に戸惑ってる!
「ノィユ・バチルタと申します。3歳です。『はじめてのおつかい』の任務をトートさまが恵んでくださったので、筆記具を購入に参りました」
「…………さ、3歳…………?」
「ご不審かと思いますが、ネァルガ家の家紋はこちらです。当主さまより提示の許可を得ております。家令長がお望みの品はこちらです。見せてください」
「は、はい、ただいま!」
跳びあがった店主が注文の品を持ってきてくれる。
「試し書きしてもいいですか」
「勿論です!」
「うーん、これは書き心地が今ひとつですね。ネァルガ家にはふさわしくありません。こちらも色が薄い。ムラがあります。この紙はけば立ってる。仕上げが今ひとつです。こちらとこちらは良品です。いただきましょう。本日購入できなかったものは、後日ネァルガ家に相応しい良品を納品してください」
「か、かしこまりました──!」
お店の人が、ダラダラ冷や汗をかいてる。
「……さ、さんさい……?」
「3歳です!」
見た目はね!
じゃあ次は果物屋さんだよ。
地図を見ながら歩いていたら、心配そうに後ろをついてきてくれているヴィルと両親を見つけてしまった。
ここは手を振るべきなのだろうか。
いやいやいや、3歳だからね。はじめてのおつかいだからね。任務をこなさねば!
ネァルガ家御用達の果物屋さんに到着です。
「エヴィさまが大すきなココの実をください」
「おお、おつかいか! えらいねえ、ぼっちゃん!」
褒めてくれた!
「えへへ」
照れ照れ笑う。
「よく熟れた、香りのよい、おいしいものでお願いしますね、エヴィさまに差しあげるものなので!」
「わーかってる、まかしとけ!」
どんと胸を叩いてくれた店主が、とろけるように甘い香りのココの実を5つ包んでくれた。
「こっちはぼっちゃんにおまけ」
「ありがとう」
お金を払ったら任務完了! 後は持って帰るだけ、と思ったら
「へっへっへ、貴族のボンボンだな、有り金を置いていけ!」
お約束な強盗が来ました。
ノィユの戦闘力は0だ。
しかし、ここは、あんまり使えないが、魔法で何とかがんばってみるべき?
「聞いてんのか!」
強盗が叫んだ瞬間、吹き飛んだ。
「…………え?」
ヴィルの大きな背中が、見える。
「……ヴィル……」
「……あ、はじめての、おつかい、邪魔、した……?」
「まさか! たすけてくれて、ありがとう、ヴィル!」
ぎゅうぎゅう抱きついて、とろけて笑った。
「ヴィルさま、ありがとうございます──!」
「も、申し訳ありません、戦闘力がなくて……!」
泣いてる母と父を、ヴィルの手がぽふぽふしてる。
15歳も年上だからね。さすが最愛の伴侶!
「おかえりー、はじめてのおつかい、どうだった?」
にこにこするトートに、おつかいの成果を差しだした。
「エヴィさまに、よく熟れた香りのよい実を選んでいただきました」
「ふ、ふんだ!」
ぷいと横を向くエヴィの頬が、ちょこっと赤い。
かわいい。
「あ、途中で強盗に襲われたのを、ヴィルがたすけてくれました」
「うひゃあ、ありがとうございます、お義兄さま」
「衛士に、突き出した。他は、たすけて、ない」
「ヴィル、めちゃくちゃかっこよかったー!」
熱い頬でもだもだするノィユに
「ぼ、僕も拝見したかった──!」
エヴィが泣いてる。
「筆記具はこちらです」
差しだしたノィユに、家令長が眉をひそめる。
「頼んだものが入っていないようですが──」
「ネァルガ家に相応しい良品ではなかったので、後日良品を納品してくださるようお願いしておきました。こちらが明細とおつりです」
皆の目がまるくなる。
「……さ、さんさい……?」
「3歳です!」
ヴィルのおかげで、無事に『はじめてのおつかい』完了です!
────────────
読んでくださって、ありがとうございます!
有栖様のリクエストで『初めてのおつかい』でした!
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