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おなじもの
しおりを挟む「はい、かぺかぺする前に洗い流しましょうねー。どうですか!」
ノィユが桶にすくった水とタオルを持ってゆくと、泣きながら顔を洗った両親が、目を瞠る。
「な、なんか、すべすべしてる?」
「もっちり!」
「おお!」
ノィユも両親の頬にさわろうと手を伸ばしたら、両親が屈んでくれる。やさしい。
ぴとり
さわってみた。
「おぉお……!」
ぷるっぷる!
つやっつや!
精霊みたいな両親が、もっと精霊みたいに!
「こ れ は 売 れ る !」
確信したノィユが、ちっちゃな拳を突きあげる。
息をのんだ可愛い豪商ニィハの目の色が変わった。
「なんだそれ!」
ノィユは水で溶かした火山灰を掲げる。
「ぱっくです! 毛穴の奥の汚れまで、すっきり! ぴかぴか! まあうちの両親、毛穴ないですが」
本気で、毛穴が見当たらない。産毛もない。人外だよ。
「でもこれ転生者って言ってるようなものだから、うーん、バチルタ印洗顔料にしようかな。いい匂いがすると気分があがると思うので、花の香りがするといいんですが──」
「何かしてる」「泥遊び?」周りを取り囲んでいた領民の皆さんが手を挙げてくれる。
「ノィユちゃん! 火山灰の沼に咲く花が、枯れた後もすんごい匂いなんだけど!」
「花びらだらけだよ。持ってくる?」
「お願いしますー!」
袋に火山灰と、いい匂いの花びらを入れて振り振り混ぜ混ぜしてみたよ。
「おお!」
ほわんといい香りな火山灰になった!
「こ、これは──!」
ニィハの目がきらきらしてる。
「おかあさま、おとうさま、魔道具で映像撮りましょう。『バチルタ印洗顔料で、気分もお肌も最高です♡』ふたり一緒じゃなく、ひとりずつ撮りましょうね。推しがいちゃいちゃしてると殺意に変わるときがありますからね」
先代が散財して「もう飽きた、いらない』って置いてった魔道具があるんだな!
「…………え?」
「はい、可愛く髪と顔を整えて、白い服着ましょう!」
「してあげるー!」
領民の皆がやる気だ!
ぽかんとしてる両親が、されるがままだ!
「はい笑ってー! 撮りますー!」
「ば、バチルタ印の洗顔料で、気分もお肌も最高です♡」
にっこり笑う両親に、ノィユとヴィル以外の皆が倒れた。
「か、可愛すぎる──!」
「なんだこの顔面国宝──!」
両親が可愛すぎるの、知ってる。
「ニィハさまに包材と輸送と販売をお願いしたいのです。対価として売り上げの4割をお支払いします。どうかネィハ商会のつてでネメド王国中で、この魔道具で映像を放映しながら、バチルタ印洗顔料を売って売って売りまくってください!」
見開かれたニィハの目が、ギラギラしてる。
「爆発する予感しかしない──!」
「これだけじゃありません! 火山灰は土壌改善になります! 栄養分を補い、排水性を向上、酸性土壌を調整、根腐れを防ぎ、病害虫の発生を抑制、植物の成長を促進し、輪作障害も軽減されるのです、袋に詰めて売りましょう!」
ぴょこんと跳びあがった茶色いフードの王兄メィファの瓶底眼鏡の向こうの瞳がきらきらして、ぱちぱち拍手してくれた。やさしい。
「さあ、おかあさま、おとうさま、にっこり笑顔で『バチルタ印の肥料で、畑すこやか、お野菜極上♡』」
「ば、バチルタ印の肥料で、畑すこやか、お野菜極上♡」
にっこり笑ってくれる両親に、ノィユとヴィルを除いた皆が倒れてる。
「……肥料を顔に塗ってもいいんだな……」
ガチムチなガディが遠い目になってる。
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