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舞踏会編
ごあいさつ
ドディア帝宮の舞踏殿は、魔道具の明かりに照らされた広やかなホールだ。屋内で樹々や花々を生育する技術を見せつけるように、かぐわしい香りと緑であふれている。
「今宵は、来訪ありがとう。長年敵対してきたネメド王国の使者を招き、近隣諸国、属国の諸侯も招いた、こたびの舞踏会が、親善の会となることを期待する。楽しんでほしい」
微笑む陛下は威厳に満ちて、皆の拍手がさざめいた。
「……緊張するー」
冷たくなるノィユの指を、ヴィルのごつごつの大きな手が包んでくれる。
「俺も、いる、から」
もしゃもしゃでもいいと陛下が言ってくれたので、もしゃもしゃのままなヴィルが、ほんのり笑ってくれる。
髪をあげたら、大叫喚になっちゃうからね。大陸最強なヴィルが、かんばせまで最強だなんて、知ってるのはノィユだけでいいの──!
そんな最愛の伴侶のヴィルがついていてくれるから、ノィユはがんばれるのです!
真白なネメド王国の正装に身をつつんだノィユとヴィルの前に、ドディア帝国の正装をまとうジゼとリトが来てくれる。
かわいー♡ とか、もだえてる場合ではないのです!
あいさつしてくれるんだよ。
一番にしてくれる、ということは、一番大切にしてくれている、ということなので、敵国ネメド王国に対する最大の礼であり、最高の親善の証だ。
気合を入れて、受けるのです!
涼やかなかんばせを、やわらかな笑みに染めたジゼが唇を開く。
「ネメド王国より、ヴィル・ヴァデルザさま、ノィユ・バチルタさま、ロダさま、ようこそ、ドディア帝室招聘舞踏会へ。最高指揮官を務めておりますジゼ・ディオ・ジェディスにございます」
「リト、で、ござ、まし」
ぽふぽふしてるリトたんに、うっとりしちゃう!
「ご招待、ありがとう。ヴィル・ヴァデルザ、です」
そうでした、あいさつ!
ヴィルに続いて、ノィユは胸に手をあてた。
「お招きくださいましたこと、恐悦至極にございます。ノィユ・バチルタにございます」
中身30代だからね。
あいさつくらい、がんばるよ!
ノィユは、ちっちゃな胸を張る。
「皆々様には、ネメド王国に対する、並々ならぬわだかまりがあるかと存じます。それは我らも同じこと。それを乗り越えて、ドディア帝国とネメド王国との親善が叶いますよう、尽力する所存にございます」
やわらかにドディア帝国の敬礼で膝を折った。
隣のヴィルが拍手してくれるのは、とってもうれしいけど、ちょっとだめかもしれない!
思いつつ、熱くなってしまう頬でノィユは微笑む。
「親善の証に、舞踏会の最後で、ドディア帝国のリトさまと、バギォ帝国のロロァさまと一緒に踊らせてください」
ジゼも微笑んでくれた。
「ぜひ」
「がんば、ましあ!」
ぽふぽふリトたんが、かわいーです!
「がんばり、ます!」
よい子の隠密団の皆とおそろいの闇色の衣で、真っ赤な頬で手をあげる、ちっちゃなロロァも、かわいーです!
竪琴が、夜の舞踏殿をやわらかに染めあげる。
皆が、伴侶(予定)や、伴侶の手をとる。
舞踏会が、はじまる。
ちっちゃいノィユは、ヴィルと身長差がありすぎる。おひざを抱っこするのがせいぜいだ。
なので、ふたりで踊るのは、とても難しいから。
ヴィルが抱っこしてくれた。
ノィユの舞踏会の上衣は、真っ白で、ネメド王国伝統(若い国なので短い)の刺繍にあざやかに彩られ、後ろに長く尾をひくようになっている。
こう、たっちすると、裾が長すぎて引きずってしか歩けないのだけれど、ヴィルが抱っこしてくれると、衣のすそが丁度地面に届くかなくらいの丈になる。
ヴィルの抱っこを計算に入れた仕様になってるんだよ。
これで、衣の丈だけは……! ヴィルにつりあうようになっているのです!
大陸最強、大陸最速、大陸でいちばん運動神経がいいのだろうヴィルのダンスは完璧だ。音楽にあわせて、やわらかにステップを踏む。一度見ただけで踊れてしまう。すごすぎる。
ヴィルがくるりと回ってくれるたび、ノィユの衣のすそが、ひるがえる。
やわらかに弧をえがいて、ヴィルを包むように舞いあがる。
「まあ……!」
「なんてかわいい」
感嘆の声は、すぐに怪訝に変わる。
「……しかし伴侶はおじいちゃん……?」
「身売りか……!」
「身売りなんだな──!」
ドディア帝国で、不穏な噂が立ちそうだったので、ノィユはわたわた手をあげた。
「愛です! ヴィル、だいすき!」
きゅ、と抱きついたら、もしゃもしゃの髪からのぞく耳を紅く染めて、ヴィルがほんのり笑ってくれる。
「ノィユ、だいすき」
抱っこしてくれるヴィルを抱きしめたら、ふたりで踊っているみたいで。
ヴィルの胸に顔をうずめて、とろけて笑った。
「ちゃんといっしょに踊れるようになるまで、待っててね」
ちゅ
ヴィルの頬に口づけたら、真っ赤になったヴィルが笑ってくれる。
「ずっと、待ってる」
ああ、今日も、伴侶が最高に可愛いです──!
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