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舞踏会編
なつかしい
皆が、ヴィルがノィユの伴侶であることを納得してくれたようです。絶叫したかいがあったよ。よかった!
安堵したのが、よくなかったらしい。
リトのしっぽが、ほわほわ、ふわふわ目の前で揺れるので口から欲望があふれました。
「い、いいよ、ね……? ほ、ほんのちょっとだけ……! さきっぽだけだから!」
なんか、変なことが口から漏れた……!
前世のえちえちな本の影響が、今、ここに──!
……え、今、敵国の使節の皆さんと面会中……
ぎゃあァアア──!
「なんてこと言うんだ、この幼児──!」
ドディア帝国の黒髪の凛々しい少年に絶叫されました。
「さきっぽとは……?」
ジゼの氷柱の声に刺されました。
……なんかもう、リトには絶対さわれないフラグを打ち立てちゃった……!
もふもふしたかったよう……!
「……うわき……」
もしゃもしゃおじいちゃんぽく戻ったヴィルが、しょんぼりしてる。かわいい。
じゃなかった、抱っこです!
「してないよ、ヴィル、だいすき! ふあふあをさわりたいのは、本能なんだよー!」
言い訳じゃなくて、自然の摂理なのです。
ちょっと疑わしそうな顔をするヴィルも、かわいー!
今日も伴侶は、とびきりかわいーです♡
とかしてたら、ドディア帝国で一番強いらしい黒髪の凛々しい少年とヴィルが、目で会話してた!
「ちょっとだけ」
とか
「しよう」
とか言ってる!
「ぼ、僕という伴侶がありながら、目の前でうわきしちゃうの……!? うわあん、ヴィル──!」
抱きついたら、ヴィルがふるふる首を振る。
「試合」
……ころしあい、じゃないよね……?
「ヴィルが怪我するなんて、絶対、絶対だめだから──!」
止めないと山とか国とか吹き飛ぶ気がする──!
「ちょっとだけ?」
「僕はめちゃくちゃ叱られたんだから、ヴィルも、め! なの!」
ぎゅむぎゅむ抱きついたら、なでなでしてくれました。やさしい。
「あ、あの、うわきはだめなので。僕、ヴィルの伴侶なので。ヴィルは渡さないので」
思いきり宣言したら、黒髪の少年が、微笑ましそうにうなずいてくれた。
「かしこまりました、ノィユさま」
名を呼んでくれたことに、びっくりする。
「あ、名乗りもしないでごめんなさい。ノィユ・バチルタです。お名前、聞いてもいいですか?」
「透夜です」
とうや。
その音に、息が止まる。
とても、とてもなつかしい発音だった。
「……どんな漢字を?」
そうっと聞いたノィユに、とうやが目を見開いて、ちいさく笑う。
「透きとおる夜」
ぴょこんとノィユは飛びあがる。
「初めて逢った! 転生者? 日本生まれ? すごい──!」
転生者仲間、降臨だよ──!
わ──!
興奮しすぎてしまったらしい、隣のリトが大きな声にびっくりしたのか、ちいさくふるえる。
怖がらせてしまったと、あわあわノィユは声を落とした。
「ご、ごめんなさい、急に大きな声を出して。びっくりさせました」
丁寧に頭をさげてから、透夜に向きなおる。
「お逢いできて、めちゃくちゃうれしーです!」
とろけて笑って、透夜のごつごつの手を両の手で握ったら、ヴィルの雪の髪がもしゃもしゃ揺れた。
「……うわき……」
「ち、ちがうよ! これは、ほら、あの、僕の前世、ノィユとして生まれる前の世界のお話だから」
ヴィルの耳をひっぱって、こしょこしょささやいたら、くすぐったそうにしたヴィルが、目をみはる。
透夜を見つめる藍の瞳が、細くなる。
「……ノィユと、同郷?」
「たぶん」
透夜が笑ってうなずいた。
異世界で、転生者と逢っちゃった!
すごい!
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