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舞踏会編
満々
ものすごい警鐘に耳を押さえるノィユに、ヴィルが心配そうに眉をさげる。
「うるさい?」
こんなに傍にいる、いとしい伴侶の声さえ聞こえないほどすごい音だよ。
まあ、敵国がほんとに攻めてきたってなったら、緊急戦闘配備だから当然だと言える。──が。
舞踏会に来ただけなのですよー。ご招待で、お呼ばれなのですよー。
「すごい音だね、耳が痛い」
ぎゅっとてのひらで耳を塞ぐノィユを片手で抱っこしたまま、ヴィルが馬車の扉を開ける。
ツーとホーが飛んでるよ!
びゅーびゅー吹きつける風からノィユを守るように抱っこしてくれたヴィルが、軽く、そう、ほんのかるーく、抜いた剣を振りおろす。
ドガァアァアァアン──!
すさまじい爆音とともに、真っ二つにされた鐘が崩れ落ちる、だけじゃなかった。
石造りの鐘の塔が、崩れ落ちてる──!
ぎゃ──!
あわあわするノィユに、ヴィルが微笑む。
「うるさく、なくなった?」
ドゴァアァアオォオン──!
背後で崩れ落ちてゆく鐘の塔の爆音と衝撃に重なるように
「ぎゃあぁあアァア──!」
「て、敵襲──!」
「き、緊急戦闘配備──!」
敵国ドディア帝国の衛士たちが、泣いてる。
ヴィルの剣は、鐘と塔だけを切り裂き、すべてがゆっくり崩れ落ちたから、必死で逃げた衛士たちは怪我もなく大丈夫みたいだけど……うるさいって言って、ごめんなさい……!
ぎゃ──!
涙目なノィユを抱っこしたまま、巻き起こる土煙の向こうに、ヴィルが微かに目を細める。
「ヴィルおぼっちゃま──!」
ロダの叫びに、ヴィルが頷く。
「……闇龍と……強いのが、ひとり。……4人か。……かなり強いのが10人」
「舞踏会への招待は、ドディア帝国の罠だったのでしょうか。ネメド王国最強のヴィルおぼっちゃまを葬れば、ネメド王国は落ちると?」
剣呑に細められるロダの目に、ぎゅっと唇を噛んだノィユは、ちっちゃな手を掲げる。
「ドディア帝国のご招待が罠だったときのために、ゾホとメィファ共作の、必殺魔道具、持ってきたよ! 救援信号を撃ちあげたら、ヴァデルザ領からホイホイ族、じゃなかった、ヴァイ族の皆も助けに来てくれるって!」
『使うと山が吹き飛ぶからね』
『ほんとのほんとに無理なときの必殺技だからのう。ぽんぽん使うものではないので、よろしく頼むぞ!』
ネメド王国の叡智、メィファとゾホが託してくれた魔道具を掲げたノィユは、胸を張る。
「僕が、ヴィルを守るから!」
ちっちゃな胸をたたくノィユに、ヴィルの瞳がやさしくとろけて、すぐに切れあがる。
「俺が、ノィユを、守る」
ヒュアァア──!
山が、震えた。
舞い落ちていた雪さえ、止まる。
ヴィルが、闘気を開放する。
突撃するように、すさまじい速度で進んできた闇龍さえ、止まった。
ロダが、微笑む。
「ヴィルおぼっちゃまは、大陸で最強です。闇龍殿でさえ、無傷でお帰りにはなれないでしょう」
剣を抜いたロダが、微笑んだ。
「罠を仕掛けてきた敵国には、相応の報いを受けていただかねばなりません。ヴィルおぼっちゃまと、ノィユさまを危険に曝したのですから」
ロダが、闘気を開放する。
ドォン──!
大気が、震える。
音が、消えてゆく。
「ノィユさま、合図したら魔道具を発動してください。参ります」
突撃しようとするロダに、ノィユはザイア陛下の言葉を思いだす。
『いいかい、ノィユ。ヴィルとロダは、こう言っては何だが、脳筋だから。ものすごくものすごく強いからこそ、筋肉で語りあおうとするから。話しあう前に闘いだから。止められるのは、ノィユだけだ!』
両肩を掴んで揺さぶられていました!
『3歳のノィユが頼みの綱とか、おかしいのは分かってる。しかし、ノィユだけがヴィルを止められる! 大陸の覇者、ドディア帝国と戦争にならないように、がんばってくれ!』
ノィユの手に、魔道具を握らせてくれました。
「忘れてた!」
ごめんよ、陛下!
「ヴィル、ロダさん、お話しあいをしましょう魔道具を、まず撃ちあげてみましょー!」
『勘違いと行き違いから起こる戦争なんて、泣いちゃうから!』
ザイア陛下の言うとおりなのです!
まずはお話しあいを!
ノィユのちっちゃな手が、魔道具を起動する。
撃ちあげた光は、青い天に大陸共通語をえがいた。
『招待しといて、ぽこる気かよ。ぽこり返しちゃうぞ♡』
……………………。
陛下が、喧嘩をする気、満々でした……
最強なヴィルで威嚇して、下手したら喧嘩をさせちゃうなんて『こら──っ!』て後で叱らないと!!
ツーとホー、ロダさんとヴィルが怪我したら、泣いちゃうんだから──!
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