悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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みとめました

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 大怪我で昏睡しているはずの僕が、元気に、のーすちゃんとお茶を飲もうとしてると、びっくりしちゃうよね!

 真っ青になるお父さんノクに、僕が口を開くよりはやく、さっとカイが前に出た。

「ユィリおぼっちゃまは頭に大変な怪我を負われ、一週間ものあいだ意識が戻らず昏睡なさいました。今も記憶の混乱があられるのです。病床をおしての訪いにございます」

 流れるような答弁!
 優秀なカイに、感謝だよ。

「た、大変だったね……! 身内が大変なことを……」

 泣きそうなノクさまに、僕はぶんぶん首をふった。

「あ、あの、僕が、ショックで……あ、えと、衝撃で、ちょっと……」

「かわいそうに──!」

 泣いてくれるノクさまの隣で、ノゥスがぶっすりしてる。


「とりあえず、座れば?
 お茶、いれる」

 ノゥスがちいさな台所に立とうとするのに、あわあわ僕は駆け寄った。

「僕が、いれようか?
 王族に、お茶をいれてもらうなんて、何さまだよって話だよね??」

 しかられるお話だよ!

「……は?
 いつも俺がいれた茶を飲んで、俺が作った菓子を食っておいて、それを言うのか」

 むにににに! 僕のほっぺを引っ張るはずだったノゥスの指が、のびたカイの腕に阻まれる。

 切れ長のカイの闇の瞳が、凍えるような闘気を放った。

「ユィリおぼっちゃまは、今、療養中でいらっしゃいますので。
 ご配慮を、お願いいたします。
 あまり、ゆりさまを興奮させたり、おさわりになりませんように」

 バチリとノゥスの視線とカイの視線が重なって、火花が散った気がした。
 張りつめるような緊張をこわしたのは、のどかな声だ。

「そうだよ、ノゥス!
 ゆりちゃんは、今、大変なんだから!
 いくらぷにぷにほっぺが可愛くても、いくらむにむにしたくても、今はだめ!」

 ノゥスをしかってくれるノクさまも、僕のほっぺを、むにむにしたいらしいです。


「お茶いれるの、僕、おてつだい、する?」

 ことりと首をかしげた僕に、ノゥスはちいさく笑った。

「いっつも、そう聞いてくれるけど、手伝ってくれると大惨事になるんだよな。不器用満開だろ」

 くしゃりと僕の頭をなでようとしてくれたノゥスの手も、カイの腕に阻まれた。


「いちど、見逃しましたので。
 二度目はありません」

 にっこり微笑むカイと、陽の瞳をほそくするノゥスの視線が、バチバチしてる気がする……!

 ど、どうしたの……!?

 なんか、あんまり仲よくなれない感じがするとか、そういうことなのかな??

 初対面なのに、ちょっと、うーん……っていうこと、あるよね。
 わかるけど、さみしい……!

 僕がもだもだしてる間に、のーすちゃんが、しゃしゃっとお茶をいれてくれました。

 すばやい。

 いー匂いする。

「ほら、ゆーりの、すきなお茶」

「わあ……! 覚えててくれたんだね、ありがとう、のーすちゃん」

 一緒に出してくれたお茶菓子も、僕のだいすきな、さくさくのクッキーだ。

「おぉお!」

「ノゥスちゃん、いつも用意してあるんだよ。いつ、ユィリちゃんが来てくれてもいいように」

 おとうさんの言葉に、息をのむ。


「…………え…………?」


「そ、そんなわけないだろ! 兄貴の伴侶(予定)だったのに!
 このみが一緒なだけだよ。うまいじゃん、これ」

 ぼりぼりクッキーをかじるノゥスの耳が、真っ赤だ。

 カイの目から、ブリザードがあふれそうなんですけど……!

 きゃ──!


「……で? 身体も頭も大変なところをわざわざ来たのが、光の魔力がいるから? なんで?」

 ちょっと赤い頬のノゥスに聞かれた僕は、正直にお話した。


「僕、ちっとも修練したことがなくて、魔素を集める感覚がわからないの」

 ノゥスの目も、おとうさんの目も、点になる。

「はァ──!?」

 ……そ、それくらい、ありえないことなんだね……!

 ……僕、ほんとのほんとに、なぁんにもしなかったんだなあ……悪役令息以前の問題なんじゃ……いや、立派な悪役令息になるために……? おさぼりが生まれたときから進行したの……!?

 きゃ──!


 ひとりあわあわな僕を、カイも、のーすちゃんも、よしよししてくれました。

 やさしい。

 お茶とクッキーで元気を取り戻した僕は、素直なお話を再開する。


「それでね、カイに教えてもらおうと思って、水の魔力を注いでもらったら、もらいすぎちゃって、たぷたぷになったの」

 いつもより300%くらい、ぷにっぷにだよ!


「……はぁあぁ……!?」

 ノゥスの顎も、おとうさんの顎も、落ちそうになってる。


「何とかするには、光の魔力をもらって、治癒魔法を使うしかないって、魔導士のおじいちゃんが」

 ノゥスも、おとうさんも、天を仰いだ。

「……うへえ」


「それで、もらいに来たの」

 とっても率直に、お願いしたよ!


「あんぽんたんだろう──!」

 指されました。


「………………はい………………」


 認めちゃった!






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