79 / 148
おやつ?
しおりを挟む「だって眠れる美男だよ。絶対めちゃくちゃかっこいいよ。はじめてのちゅうで、起こしてあげるのって最高じゃない?」
こそこそささやく僕に、アーシェがうろんな目になってる。
「……あのねえ、ちゅうは、だいすきな人とだけするんだよ──!」
そのとおりでした、ごめんなさい!
「ちっちゃいふたりが仲良くしてるのって、めちゃくちゃ可愛いな」
のーすちゃんが、なごんでる。
「うぅん! おにーたまの、うわきものさん!
ぼくは、もっちもっち、ひとすじなんだから!」
ぎゅうっと抱きついてくるくーちゃんのほうが、可愛いです。
「治癒魔法が効かないかもしれないのは、わかってるんだ。
それでもどうか、どんな様子なのか見に来てくれるだけでもお願いできないかな」
顔面力を最大に発揮した、真剣なトトラの懇願に、ちょっと赤くなったアーシェが、うなずいた。
「お力になれるかどうか、わかりませんが。拝見するだけなら」
さすが主人公!
困っている人がいたら、助けようとしてくれる。
「アーシェくん、やさしいね!
治癒魔法、がんばってきてね!」
アーシェの手をにぎったら、にぎり返されました。
「何言ってるの。ユィリくんも行くんだよ」
…………………………。
「………………へ…………?」
ぽかんとする僕に、アーシェが僕だけに聞こえるように声をひそめた。
「セゥス殿下の、おなかが痛いの、治してあげたんでしょう?
ユィリくんのほうが、奇跡じゃないか」
……セゥスさまから、聞いたのかな?
ちょっと、ちくちくする胸で、僕は首をふる。
「……え、それはなんか多分、お祈りみたいな、気のせいみたいな?
あ、そうだ、ぷらせーぽ?
本当は小麦粉なのに『とってもよく効く薬ですよ』って医士に処方してもらうと『すごく良くなりました。やっぱりお医者さんで薬を処方してもらうと違いますね!』って効いちゃう、あれ!
緑の光がふわふわしたら、たぶん治った気になるんじゃ?」
にこにこする僕に、アーシェがつっこむ。
「プラセボで胃穿孔は治らないよ──!」
「………………そ、そうなの?
よく知ってるね。さすがアーシェくん!」
拍手する僕に、ちょんと赤くなったアーシェくんが叫ぶ。
「とにかく僕より奇跡っぽいから、ユィリくんも行くの。わかった!?」
「は、はい!」
さすが主人公、圧が強いです。
「そして僕の初めてのちゅうを守って!」
ぴんくの瞳が、真剣です。
「……そんなこと言っておいて、あまりにかっこよくて、『きゃ──!』ってなって、喜んでちゅうしちゃうんじゃ?」
「そんな恐ろしいフラグ立てないでくれる──!?」
しかられました。
「アーシェさん、ユィリおぼっちゃまは病みあがりでいらっしゃいますので」
割って入って止めてくれるカイが、今日もやさしいです。
「隣の国だからすぐだよ。1週間くらいで行って帰って来れると思う」
にこにこトトラが手配してくれて、アーシェと僕と、カイと、のーすちゃんで、ラゼン王国に行くことになりました!
のーすちゃんも、ついてきてくれるんだよ。
「何かあった時に、圧を出せるのは俺だから」
やさしい!
僕は、アーシェくんの、はじめてのちゅうを見届けるために行くんだけど、前世から数えても、はじめての外国旅行だよ!
すごい!
「バナナは、おやつに入るのかな?」
「……ばなな……?」
聞かれたカイが、困ってる!
1,380
あなたにおすすめの小説
夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。
伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。
子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。
ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。
――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか?
失望と涙の中で、千尋は気づく。
「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」
針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。
やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。
そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。
涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。
※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。
※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー
エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。
生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。
それでも唯々諾々と家のために従った。
そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。
父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。
ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。
僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。
不定期更新です。
以前少し投稿したものを設定変更しました。
ジャンルを恋愛からBLに変更しました。
また後で変更とかあるかも。
完結しました。
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
【第一部・完結】毒を飲んだマリス~冷徹なふりして溺愛したい皇帝陛下と毒親育ちの転生人質王子が恋をした~
蛮野晩
BL
マリスは前世で毒親育ちなうえに不遇の最期を迎えた。
転生したらヘデルマリア王国の第一王子だったが、祖国は帝国に侵略されてしまう。
戦火のなかで帝国の皇帝陛下ヴェルハルトに出会う。
マリスは人質として帝国に赴いたが、そこで皇帝の弟(エヴァン・八歳)の世話役をすることになった。
皇帝ヴェルハルトは噂どおりの冷徹な男でマリスは人質として不遇な扱いを受けたが、――――じつは皇帝ヴェルハルトは戦火で出会ったマリスにすでにひと目惚れしていた!
しかもマリスが帝国に来てくれて内心大喜びだった!
ほんとうは溺愛したいが、溺愛しすぎはかっこよくない……。苦悩する皇帝ヴェルハルト。
皇帝陛下のラブコメと人質王子のシリアスがぶつかりあう。ラブコメvsシリアスのハッピーエンドです。
望まれなかった代役婚ですが、投資で村を救っていたら旦那様に溺愛されました。
ivy
BL
⭐︎毎朝更新⭐︎
兄の身代わりで望まれぬ結婚を押しつけられたライネル。
冷たく「帰れ」と言われても、帰る家なんてない!
仕方なく寂れた村をもらい受け、前世の記憶を活かして“投資”で村おこしに挑戦することに。
宝石をぽりぽり食べるマスコット少年や、クセの強い職人たちに囲まれて、にぎやかな日々が始まる。
一方、彼を追い出したはずの旦那様は、いつの間にかライネルのがんばりに心を奪われていき──?
「村おこしと恋愛、どっちも想定外!?」
コミカルだけど甘い、投資×BLラブコメディ。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる