悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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おやつ?

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「だって眠れる美男だよ。絶対めちゃくちゃかっこいいよ。はじめてのちゅうで、起こしてあげるのって最高じゃない?」

 こそこそささやく僕に、アーシェがうろんな目になってる。

「……あのねえ、ちゅうは、だいすきな人とだけするんだよ──!」

 そのとおりでした、ごめんなさい!


「ちっちゃいふたりが仲良くしてるのって、めちゃくちゃ可愛いな」

 のーすちゃんが、なごんでる。

「うぅん! おにーたまの、うわきものさん!
 ぼくは、もっちもっち、ひとすじなんだから!」

 ぎゅうっと抱きついてくるくーちゃんのほうが、可愛いです。

「治癒魔法が効かないかもしれないのは、わかってるんだ。
 それでもどうか、どんな様子なのか見に来てくれるだけでもお願いできないかな」

 顔面力を最大に発揮した、真剣なトトラの懇願に、ちょっと赤くなったアーシェが、うなずいた。

「お力になれるかどうか、わかりませんが。拝見するだけなら」

 さすが主人公!
 困っている人がいたら、助けようとしてくれる。

「アーシェくん、やさしいね!
 治癒魔法、がんばってきてね!」

 アーシェの手をにぎったら、にぎり返されました。


「何言ってるの。ユィリくんも行くんだよ」

 …………………………。

「………………へ…………?」

 ぽかんとする僕に、アーシェが僕だけに聞こえるように声をひそめた。


「セゥス殿下の、おなかが痛いの、治してあげたんでしょう?
 ユィリくんのほうが、奇跡じゃないか」

 ……セゥスさまから、聞いたのかな?
 ちょっと、ちくちくする胸で、僕は首をふる。

「……え、それはなんか多分、お祈りみたいな、気のせいみたいな?
 あ、そうだ、ぷらせーぽ?
 本当は小麦粉なのに『とってもよく効く薬ですよ』って医士に処方してもらうと『すごく良くなりました。やっぱりお医者さんで薬を処方してもらうと違いますね!』って効いちゃう、あれ!
 緑の光がふわふわしたら、たぶん治った気になるんじゃ?」

 にこにこする僕に、アーシェがつっこむ。

「プラセボで胃穿孔は治らないよ──!」

「………………そ、そうなの?
 よく知ってるね。さすがアーシェくん!」

 拍手する僕に、ちょんと赤くなったアーシェくんが叫ぶ。

「とにかく僕より奇跡っぽいから、ユィリくんも行くの。わかった!?」

「は、はい!」

 さすが主人公、圧が強いです。

「そして僕の初めてのちゅうを守って!」

 ぴんくの瞳が、真剣です。

「……そんなこと言っておいて、あまりにかっこよくて、『きゃ──!』ってなって、喜んでちゅうしちゃうんじゃ?」

「そんな恐ろしいフラグ立てないでくれる──!?」

 しかられました。

「アーシェさん、ユィリおぼっちゃまは病みあがりでいらっしゃいますので」

 割って入って止めてくれるカイが、今日もやさしいです。



「隣の国だからすぐだよ。1週間くらいで行って帰って来れると思う」

 にこにこトトラが手配してくれて、アーシェと僕と、カイと、のーすちゃんで、ラゼン王国に行くことになりました!

 のーすちゃんも、ついてきてくれるんだよ。

「何かあった時に、圧を出せるのは俺だから」

 やさしい!


 僕は、アーシェくんの、はじめてのちゅうを見届けるために行くんだけど、前世から数えても、はじめての外国旅行だよ!

 すごい!


「バナナは、おやつに入るのかな?」

「……ばなな……?」

 聞かれたカイが、困ってる!






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