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やるよー!
しおりを挟む「ま、魔力、補給したよ……!」
トトラが、よれよれになりました!
「よく頑張ってくれたね! ありがとう!」
手を握ったら、うれしそうに笑ってくれる。
……ちょっと、ちゅうし過ぎだったけれどね……!
お口が、よだれまみれだけどね……!
お兄ちゃんも、よろこんでるといいな……!
どきどきする僕の前で、きんにくひめは眠っている。
トトラの魔力をぜんぶ吸っても、ぴんぴんしているみたいだよ。
つやつやが増したみたいだ。
さすが、きんにくひめ!
「……いや、この後に俺が、ちゅうとか……ないよな……?」
トトラの唾液まみれの、きんにくひめの首に、のーすちゃんが、切ない目になってる!
「よし、ユィリくん、やってみよう!
何にもできないかもだけど、いちおう僕もいるからね!」
手をにぎってくれるアーシェくんが、やさしいです!
「う、うん……! が、がんばるね!」
お返事は、したけれど……!
うぅううう……!
ど、どきどきする……!
で、でも、たぶん、僕の魔力は世界最弱なので、蛇口がおっきくなるわけじゃないので、カイとセゥスさまの魔力を補充してもらっても、たぶん、だいじょぶな、はず……!
いや、きっと!
トトラくんも協力してくれて、きんにくひめの筋肉もつやつやしてるし、魔力コントロール、がんばる──!
ぷるぷるする手をにぎった僕は、目を閉じる。
さあ、やるよ!
うなれ、僕の、ちっちゃな治癒魔法──!
目を閉じる、僕の髪が、やわらかな緑のひかりに、舞いあがる。
もったいない……!
そうそう、使う魔力は、てのひらに集中!
きんにくひめの体内へと、やさしく、やさしく、入るのです。
ほそい、ほそい、糸のような僕の魔力になじんできてくれたのか、きんにくひめの魔脈が、するする僕の魔力を通してくれる。
カツン──!
あたった!
よし、ここだ。
目を閉じたまま、僕はそっと口を開く。
「カイ、セゥスさま、準備はいい?」
「だいじょうぶです、ユィリおぼっちゃま」
「緊張しないで。きっとユィリならできる。
ずっと、傍にいるからね」
やさしく抱きしめてくれるセゥスのいい匂いに、うっとりしてる場合ではないのです!
……いや、ちょっと、うっとりしちゃったけど。
つい、おでこを、すりすりしちゃったけど……!
ごめんね、きんにくひめ!
がんばるから!
僕は魔力を集中させる。
ほそい、ほそい、糸の魔力に、魔力タンクから一気に圧力をかけた。
カツン!
弾かれる。
さすがきんにくひめ、かたい──!
目を閉じた僕の視界が、きんにくひめの魔脈になる。
かたい、かたい塊に、ほそい、ほそい魔力をぶつける。
できるだけ、圧力を高く。
できるだけ、速く。
まったく、おなじところに。
針に糸を通すように。
「いけ──!」
最大出力です──!
「ふんににににに──!」
がんばる僕!
悪役令息じゃなくなる僕!
よわよわじゃなくなる僕!
全魔力をふりしぼる……!
のに、きんにくひめ、かったいよぅ──!
さすが、もりあがる筋肉!
魔脈まで、ガッチガッチだよ……!
きゃ──!
僕の魔力タンクが、あっという間に空に……!
「カイ、セゥスさま、魔力を補給お願いします!」
「かしこまりました、ユィリおぼっちゃま!」
「がんばって、ユィリ」
右の首の魔脈にカイが、左の首の魔脈にセゥスが口づけてくれる。
かわりばんこに、おんなじところは、いやみたいだよ。
唾液がね。混じりあうよね……!
「……ユィリくん、いいな……」
アーシェくんのつぶやきが聞こえる……!
これ、間違いなく主人公ポジだよね。
ごめんよ……!
ほんとの主人公は、アーシェくんだから!
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