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うなれ!
しおりを挟むあわあわしつつ、魔力を補給してもらった僕は、手をあげる。
「ありがとう! もう大丈夫! 再開します!」
「……もう?」
つまらなそうにとがるセゥスのくちびるに、ちゅうしたくなって、こまる。
熱い頬で、僕は魔力を集中する。
「ふににににに──!」
全力で、魔力の糸を、最高速度で、最高圧力で、同じところに叩きつける。
カツン──!
カツン──!
カツン──!
弾かれていたのが
コツ……!
グ……!
ぐぅ──!
「おぉお! ちょっと入るようになってきたよ!」
しかし魔力は、カラカラです!
「魔力補給お願いします!」
目を明けて手をあげる僕に、カイが微笑んでくれる。
「かしこまりました、ユィリおぼっちゃま」
「待って、そんなにつづけて魔力を補給したら──!」
僕を心配してくれるセゥスに、微笑む。
「僕はもう、よわよわじゃなくなるんだ」
僕はそっと、息を吸う。
「あなたに、ふさわしくなるために」
ささやいて、ちいさく笑った。
「でも、きんにくひめのことは、僕の欲じゃなくて、僕の真心でがんばるから!」
むん!
力こぶを盛りあげてみた!
ぽよん
なんか、ぷにぷにしてた……
「……ぶ……!」
ふきだすトトラを、セゥスさまと、のーすちゃんと、カイとサザお兄ちゃんが、ひかりの速さでぽこってる。
ちょっと鼻をすすった僕は、がんばるのです!
「魔力の補給をお願いします!」
がんばりたくても、補給してもらわないと、タンクがカラカラな僕。
せつない……!
「苦しくなったら、すぐにやめて。
ラディのためにユィリが倒れるなんて、絶対、絶対、絶対、絶対、だめだから」
泣きだしそうなセゥスに、抱きしめられる。
広い背に腕をまわした僕は、セゥスの香りを吸いこんで、笑う。
「セゥスさまを、泣かせないように、がんばるね」
「そうして。ほんとに泣くから。また胃の腑に穴が開くから」
ぎゅうぎゅう僕を抱っこしてくれるセゥスの肩が、ふるえてる。
「ユィリおぼっちゃま、無理なさらないでくださいね」
「ゆりちゃん、無理は絶対、だめだから!」
「苦しくなったら、すぐに言うんだぞ、ゆーり」
「倒れそうになる前に止めるんだよ」
カイが、サザお兄ちゃんが、のーすちゃんが、アーシェくんが、心配してくれる。
「……お兄ちゃんは、きっと、ユィリくんを倒れさせてまで、たすかりたいって言わないよ。……だから、無理、しないで」
涙のにじむ瞳で、トトラが微笑んでくれる。
悪役令息な僕には、ともだちなんて、ひとりもいなくて、僕のことを心配してくれる人なんて、ひとりもいないと思っていた。
心配をかけてしまうのは、とても心ぐるしいけれど。
とびきり、うれしい。
「えへへ。ありがとう。無理しないように、がんばるね。
魔力をお願いします!」
カイと、セゥスさまが、僕のうなじに口づけてくれる。
やさしい魔力が、からっぽな僕を満たしてくれる。
「いきます!」
ほそい、ほそい、糸みたいな魔力でも。
何十回、何百回、何千回と全く同じところに当てれば、きっと。
ザシュ──!
「開いた──!」
ちいさな、ちいさな僕の魔力が、きんにくひめの大きなコブに、ちいさな、ちいさな穴を開けた。
────────────────
ずっと読んでくださって、ほんとうにありがとうございます!
がんばるユィリの魔法の動画をつくろうと思ったら、蚊取り線香みたいになって(笑)きんにくひめが、ぜんぜんきんにくひめじゃなくなったのですが……!(笑)
もしよかったら、プロフのwebサイトからどうぞです!
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