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うなれ!
しおりを挟むおじいちゃん??
目を閉じたまま、びっくりする僕の後ろで、海の声がする。
「じいさま! ごめん、無理を言った!」
おじいちゃん魔導士? に、海が駆け寄る音がする。
走ってきてくれたのだろう、切れた息で、ぜえぜえしながら、おじいちゃんのしゃがれた声がした。
「あなたが、治癒士、ユィリ殿ですな。
……海さまが、手荒な真似でお連れしたと。申しわけありませんでした」
胸に手をあてて、膝を折ってくれているのかもしれない、おじいちゃんの衣擦れの音に、目を閉じたまま僕は首をふる。
「その話は後で。光の魔力の補給をお願いします!」
「うけたまわりましたぞ!」
海とおじいちゃんが、かがんでくれる気配がする。
ふたりに、首にちゅうされるけど、浮気じゃないからね、セゥスさま……!
どきどきしつつ、お待ちした。
どきどき
……どきどき
どきどき?
………………???
あれ?
ごつごつの手と、しわしわのやわらかな手が、僕の手をにぎってくれる。
???
「…………え…………? あ、あれ? 首に、ちゅうっとするんじゃ……?」
きょとんとする僕に、海と、おじいちゃんが、息をのむ音がした。
「……いや、うん、それは……まあ、効率はいいんだけど……する?」
はずかしそうな小さな声で、ぽそぽそ告げる海の隣で、おじいちゃんが、跳びあがる音がする。
「危険ですじゃ! わしは、ユィリ殿とは初対面です。
魔脈にじかに魔力を注ぐと拒絶反応が出て、激痛が走ります。絶対してはいけないことですじゃ!」
……な、なるほど……?
絶対してはいけないことだった!
それで、くーちゃんのときは、めちゃくちゃ痛かったんだね!
「手をつないで魔力補給は、効率は落ちますが、痛みも随分とましになります。手で、ゆきましょう。
あまりに痛いと、治癒魔法を使うどころではありませんでしょう」
そのとおりです!
あぎゃぎゃぎゃぎゃ……! って僕がなってたら、穴をふさぐ意識が飛んじゃう!
それに海くんに、ちゅうしてもらったら、いくら緊急事態で、多紀くんの命をちょっとでも助けるためとはいえ、セゥスさまが泣いちゃったら大変なので!
……泣いてくれるかな……?
しかられちゃうかも……!
きゃ──!
でも泣かれても、しかられても、痛くても、苦しくてもやるつもりでしたが、手をにぎって魔力補給ができるなら、それに越したことはないのです!
僕の手を、おじいちゃんのしわの手と、海くんのごつごつの手が、にぎってくれる。
海くんの、ひんやり冷たい水の魔力と、おじいちゃんの、あたたかな光の魔力が、僕のなかに、そうっと入ってくる。
痛くしないように気をつけてくれているのだろう、少しずつ、少しずつ入ってくる魔力は、ビリビリ痛い、はずなのに。
ふたりの、多紀くんを思う気もちが、僕のことを思いやってくれる気もちが、痛みを抑えてくれる。
カラカラだった僕の身体に、やさしい魔力が満ちていく。
生まれてからずうっと、何の修練もしてこなかった僕は、魔素を練りあげて魔力にするのがまず下手っぴで、頑張って作った魔力も、いまいちっぽい……
せつない!
でも、この僕がうまくつくれない魔力を、熟練の皆さまに補給してもらうと、僕、めちゃくちゃパワーアップなのです!
りにゅーあるだいふくユィリ!
チョコ生クリーム入りましたみたいな?
元気10倍!
勇気100倍!
魔力10000倍!
「ふにににに──!」
僕の髪が、舞いあがる。
緑のひかりが、噴きあがる。
真っ暗な穴に、僕のひかりが満ちてゆく。
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