【完結】お義父さんが、だいすきです

うさちゃんとリルとトェルとももちゃんのしあわせ暮らし

おともだち？

　おとうさんに抱っこされるのは、とってもうれしいけれど、ちょっと恥ずかしいので、ちゃんと僕も歩くのです。

「……えぇえ……トェル……」

　あたたかな腕から降りたら、泣きそうになるリィフェルが、たまらなく可愛い、おとうさんです。

「きゅ」

　ぽふぽふ前足で慰めてあげているうさちゃんも、とっても可愛くて、やさしいです。




　魔界の不思議な植物の海を、うさちゃんとおとうさんと一緒に歩く。

　不思議な香りを吸いこんで、しばらくゆくと、魔界の瘴気が濃くなったのが僕にも分かった。

「リル、だいじょうぶ……？」

　心配で聞いたら、リィフェルが微笑む。

「もうちょっと行ける。だいじょうぶ」

「きゅ」

　うさちゃんが心配そうに見あげてくれる。

「つらくなったら、我慢しないでね。
　無理は絶対にしたらだめ」

　ぎゅ

　両手でリィフェルの手をにぎったら

　ぎゅう

　にぎり返してくれる。

「わかった」

　こっくりうなずいてくれる、おとうさんが、とってもかわいいです──！


「うさちゃんのお友達、まだまだ遠い？」

　聞いた僕に、うさちゃんがふわふわの前足をあげる。

「きゅ」

「もうちょっとだって。
　気持ちわるくなったら、すぐ引き返そうね」

「わかった」

　こっくりしてくれるおとうさんと手をつないで、うさちゃんと一緒に歩く。


　当たり前みたいに思える平和な日々が、全く全然当たり前じゃないことを、僕は知ってる。

　知っているから、毎日がこんなに輝いて、毎日がこんなに愛しい。



「おとーた」

　あまえるように、ささやいたら

「トェル」

　あなたがつけてくれた名を呼んでくれる。

　ふうわり、抱きあげて、抱きしめて、笑ってくれる。

　最愛が、おとうさんにも、伴侶にもなってくれるだなんて、しあわせすぎて、めまいがする。




「きゅ」

　ふわふわの前足でうさちゃんが天を指す。

　ぐぅにゃり、時空が揺れた気がした。


「…………え……？」

　びっくりする僕を、リィフェルが守るように抱きしめてくれる。


　うさちゃんが、前足を叩く。
　後ろ足で、大地を踏み鳴らす。

　タタントトンタントトン
　トタタントンタタントタタントン

　不思議なリズムと一緒に、うさちゃんのちいさな角が、きらめきはじめる。

　うさちゃんの紅い瞳が輝いて、天空が割れた。

「えぇえ──！」

　のけぞる僕に、うさちゃんが、ちいさな鼻を鳴らす。

「きゅ」

　笑ったみたいだ。



　うさちゃんが切り開いた時空の向こうには

「きゃ──！」

　びっくりするほど大きなうさちゃんが、紅い瞳を輝かせていた。

「わー！　ふあふあ！
　でっかい！　すごい！」

　ぴょんぴょん飛び跳ねる僕の背中で、翼がぱたぱた揺れる。
　見あげるほど大きなうさちゃんは、僕とうさちゃんが一緒に作った庵くらいの大きさがありそうだ。


　めちゃくちゃ、おっきい。

　めちゃくちゃ、かわいい。


「きゃ──！」

　もだもだする僕の隣で

「……私も、かわいいと思う……」

　すねたみたいに僕の小指をにぎるおとうさんが、今日もたまらなく可愛いです──！



「うさちゃんの、おともだち？」

　聞いたら

「きゅ」

　ふるふる、うさちゃんが首をふる。

「……おかあさん？」

「きゅ！」

　ぴょこんと僕は飛びあがる。


「は、はじめまして、うさちゃんのおかあさん！
　うさちゃんに命を救ってもらったトェルです！」

　胸に手をあてたら

「きゅ」

　うさちゃんとおそろいの紅い瞳で、笑ってくれた気がした。