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うさちゃんとリルとトェルとももちゃんのしあわせ暮らし
ひぃい?
しおりを挟む落ちてきた精霊さんは、うさちゃんに、ちゃんと謝ってくれました。
「ほんとうに、ほんとうに、ごめんなさい!
こんなにすさまじい瘴気のところにいるから、ちっちゃいけど、ものすんごく強くて、瞬殺されるんだろうと思ったんだ」
ぷるぷるしてた。
リィフェルが来られる範囲だから大丈夫かと思ったけれど、精霊にはかなり辛い、濃い瘴気らしい。
飛ぶのも辛そうだし、僕が抱っこできるのは、うさちゃんと、おとうさんだけなので(愛のちから?)仕方なく、ももちゃんのところまで皆で歩くことになりました。
「誤って落ちてくるには、ここはかなり魔界の深部だが」
月の眉をひそめるリィフェルに、精霊がうなずく。
「落とされたんです。魔族と交わったことが水のきみにバレて」
僕は、しげしげお兄さんを見あげる。
ちょっと長めの水の髪に、水の瞳の、白い衣がよく似合う、涼やかな顔立ちのお兄さんだ。
「もしかして、精霊界の門で、魔族のお兄さんと、いちゃいちゃしてたお兄さん?」
「やっぱり、あの時の子か! おっきくなったな!
俺はミーレ。水の精霊だ」
「トェルです」
「よろしくな!」
わしゃわしゃ頭をなでてくれるお兄さんに、魔族の血をひく僕に対する厭悪は見えなかった。
うれしくて笑う僕に、リィフェルの唇が、すねるみたいに尖ってる。
「私は寡聞にして知らなかったが、精霊門では魔族と……その、なかよくするのは、よくあることなのだろう?」
「門での常識は、精霊界の非常識だったりするんです。
今、精霊界は急進派と保守派に分かれてて」
「急進派?」
首をかしげる僕とリィフェルに、ミーレがうなずく。
「月のきみ、陽のきみが、魔族との融和を説いてるんです。
精霊樹が弱ったのは、我らが憎しみと怨みで魔族を攻撃したからだと。
我らがそのような真っ暗な気もちをいだく限り、精霊樹は弱り続け、我らも魔精に堕ちるだろうと」
「真実だ」
告げるリィフェルに、ミーレは目をみはる。
「……やっぱり?」
うなずくリィフェルと僕に、ミーレは目を伏せた。
「……でも今まで魔族をずっと憎んできた精霊たちには受けいれられないみたいで。月の精や陽の精にも離反するものが現れて……魔族の撲滅を唱える保守派の水のきみと地のきみに賛同するものが増えてるんです」
リィフェルは高い鼻を鳴らした。
「精霊界は、遠くないうちに滅びるだろうな」
「……!
やっぱり……?」
うなずくリィフェルと僕に、ミーレは肩を落とした。
「自分の行いは、自分に返ってくるんだ。
真っ暗になった水のきみも、地のきみも、魔精に堕ちて、母上に討伐されるんじゃないか?
そうすれば多少は風通しが良くなるだろう」
なんでもないことみたいに告げるリィフェルに、ミーレがカタカタしてる。
「あ、あの……緑のきみは?」
聞いた僕に、ミーレは吐息した。
「トェルを排斥しようとした手前、いちおう中立だけど……お孫さんの進言もあって、トェルを殺そうとしたことを反省なさって、急進派の考えに賛同しているらしいよ。
……トェルと月の宮、リィフェルさまを攻撃した精霊たちはみんな、具合が悪いって」
「そろそろ魔精になるんじゃないか?」
楽しげに唇を吊りあげるリィフェルに
「ひぃい──!」
ミーレが、カタカタしてる。
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