【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ

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うさちゃんとリルとトェルとももちゃんのしあわせ暮らし

ぷっくり

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「……月のきみは、いつも正しい。まっすぐで、ひかりに満ちて……そういうのが、つらくなること、あるだろう」

 ウェザの声が、ちいさく消える。
 首をかしげる僕に、ウェザはふくれた。

「あるんだよ」

 こっくりうなずいた僕に、ウェザは続けた。

「正しいってわかってるのに、気もちが追いつかないってことがあるだろう?」

 首をかしげる僕に、ウェザが、ぷっくりする。

「あるんだよ!」

 こっくりうなずく僕に、ウェザが続ける。

「まっすぐで、やさしい精霊たちは、月のきみに賛同してる。陽のきみも。精霊たちも。
 トェルのこと、何にも知らなくても、それでも暴虐はひどい、仲よくしたいって思ってる精霊も、また、いるんだ」

 目をみはる僕に、ウェザが微笑む。

「ひどいのばっかり、目につくけど。やさしいのも、いるんだ。……そういう精霊たちは、すくなくて……魔族をずっと憎んで、忌みきらってきた今までを、急激に変えられない精霊たちが、ほとんどだ」

 さみしくうなずく僕に、ウェザはささやく。

「そういう精霊たちを切り捨てるのが、かわいそうだって。……だから地のきみは、わざと月のきみに対抗して、変われない精霊たちの受け皿になろうとしてるんだ。……ほんとうは、やさしい精霊なんだ。うちひしがれていた俺を、慰めてくれた」

 ちらちら水のひかりに揺れるウェザを見つめた僕は、微笑んだ。


「だいすきなんだね」

 ぱちりと、水のひかりが弾ける。


「……うん」

 こっくりうなずくウェザが、水の飛沫で、きらきらしてる。


「変われない精霊たちを守ってあげようとする地のきみを、至高五天のなかでひと精にしたくなくて、それで、うーは、地のきみに賛同してるんだね」

「……え……?」

 水の瞳が、瞬いた。


「うー、水のきみ、でしょう?」

 見開かれた水の瞳が、揺れる。


「……どうして」

「力の強い精霊じゃないと、魔界の底まで降りられない。消えてしまう。
 ももちゃんが守ってくれているとはいえ、ちょっと瘴気もあるここで、平気な顔をしてるから」

 微笑んだら、ウェザはちいさく笑った。

「トェルは、かしこいな」

 ふるふる首をふる。

「勉強、にがて」

 ウェザは笑った。楽しそうに。


「……お茶を、ありがとう」

 立ちあがるウェザを、見あげる。


「僕を、殺そうとしないの?」

 ふり返ったウェザは、微笑んだ。


「トェルを殺したら、きっと精霊界はほんとうに崩壊をはじめる。
 ……よく、わかったよ。
 リィフェルが、トェルを想う気もちも。
 月のきみが、あんなにトェルをかばうわけも」

「……おばあちゃんが……?」

「それ、言ったらリヴァリゼが噴火するから」

 あわあわ口をつぐむ僕に、ウェザは声をたてて笑った。


「……ひどいことばかりを、すまなかった。
 変わってゆけない精霊たちを擁護するのではなく、憎しみを助長するのではなく、やさしい方へ、皆で向かえるよう、がんばってみる」

 胸に手をあて、謝罪してくれたウェザが、つぶやいた。


「……ミーレは……元気で、やっているか。……あの魔族に、逢えただろうか」

 ちいさな、ちいさな声だった。

 僕は、微笑む。


「ふりむいて」


「…………え…………?」

 ふり返るウェザに、ミーレの顔がゆがむ。


「……ひいおばあさま」

「そう呼ぶから、お前のことが気にくわないんだぞ。わかってるのか!」

 叫んだウェザの、ちいさな顔がゆがんだ。


「……無事で、よかった……!」

 水のひかりが、揺れる。
 ミーレのひかりも、揺れている。


 魔界の空から舞い降りたリィフェルが、僕を抱きしめてくれた。


「よくがんばったな、トェル」

 おとうさんの顔で、笑ってくれた。





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