【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ

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うさちゃんとリルとトェルとももちゃんのしあわせ暮らし

……え……?

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 ももちゃんの下で、うさちゃんの毛づくろいをお手伝いしている僕の頭を、おとうさんがなでてくれる。

「ミーレが造ってくれた精霊の泉が素晴らしいから、精霊界の水と比べてみたい。
 ちょっとくんで、すぐ戻る」

 一刻で大変なことになってしまったから、リィフェルが精霊界にゆくときは、いつも極限まで時間を少なくしてくれる。

「はい。お気をつけて。
 いってらっしゃい」

 ちゅ

 頬に口づけたら、月のひかりをきらきらさせて、笑ってくれた。


『いってらっしゃいのときは、ちゅうするんだぞ』

 教えてくれたのは、ミーレだ。

 おとうさんが、きらきらしてるから、正しかったみたいだ。よかった。


『はやく帰ってきてね♡ 抱っこつきだと、なおよい』

 教えてくれたとおりに、リィフェルを抱っこする。


「はやく帰ってきてね♡」

 ちゅうも、おまけにつけた。


 ぱちりと月のひかりが、魔界を翔る。



「……行くの、やめようかな……」

 ぎゅう。

 抱きしめてくれる、おとうさんが、気に入ってくれたみたいです?


 ミーレ、すごい!



「きゅ!」

 うさちゃんの角が、きらきらして、振りかえった僕は、眉をさげた。

「うさちゃんが、ミーレの泉は、僕と、ももちゃんと、うさちゃんには充分だけど、おとうさんには、ちょっと瘴気が混じってるから、つらいかもって。
 ミーレにも、ちょっとお水をくんできてあげてって」

「……そうか、わかった」

 うなずいたリィフェルの、ふわふわの唇が、僕のおでこに降ってくる。


「ちゅ」


 あまい音が鳴るたび、あなたと唇を重ねるたび、だいすきと、あいしてるが、あふれてゆくのです。







「いってらっしゃい!」

「すぐ帰る」

 僕を抱きしめて、口づけてくれた月のひかりが、魔界の天へと舞いあがる。

 見えなくなるまで、ずっと、ずっと手をふった僕が振りかえると、ふんぞり返るような、清かな水の気をまとう少年が立っていた。

「……え……?」

 ……精霊……?

 落ちてきた?

 びっくりする僕の前で、長い水の髪が、魔界の瘴気に流れる。
 切れあがる水の瞳が、僕を射た。

「お前だな、精霊を異形に堕とす魔族の子!」


「……え……?」

 ぽかんとする僕に、ちっちゃい子が鼻を鳴らす。

「聞いたんだぞ! お前の血を飲んだ魔精が、異形になったって。
 あれから精霊界は、おかしくなったんだ。
 お前の血が、精霊界を穢したんじゃないか?」

 ──ちがう。

 言い切れない僕は、うつむいた。


 ……僕のおなかをえぐった、あの魔精は、異形になったの……?

 おかあさんの精霊樹の思いは、はっきりと言葉にされたものじゃない。
 僕が感じ取ったものだ。
 もし、おかあさんの気もちを、僕が読み間違っていたら……?


「……わからない。……それを言いに、魔界まで? 危ないのに?」

 力のある精霊ほど清浄で、魔界の瘴気はつらいらしい。

 一刻で命を落としてしまうという。

「話を聞きに来たんだよ。
 精霊界が、今、大変なのは知ってるか?」

「ちょっと?」

 ミーレが話してくれた。

「お前が来てから精霊界はおかしくなって、お前がいなくなっても、おかしくなり続けてる。
 起点がお前なんだ。
 話を聞きたいと思うのは、当然だろう。
 なのに、月のきみも、息子も過保護でな、話もさせてくれんのだ!
 抜き打ちで来るしかなかろう!」

「おとうさんに、ないしょで来たの?」

 水の精霊らしき少年は鼻を鳴らした。

「リィフェルがいない隙を狙って来たに決まってるだろう。
 あんぽんたんみたいに強いんだぞ。
 戦闘力のないのが多い水の精なんて、ビビって誰も近づけねえ。仕方ないから俺が来てやったんだよ。
 月の精だって戦闘力ないはずなのに、なんだよあの化け物母子」

 居丈高な物言いに、ぷくりとふくれる。


「おとーたと、おばあちゃんを、わるく言う精霊は、帰って、ください!」


 ……あ。

『おばあちゃん』言ったら、だめだった!






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