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惚れなおした?
しおりを挟む「レイティアルト殿下が危ない。
ひとりで駆けつけるなど、共に死ぬだけだ。
なのにザイン殿までいないなんて──……!」
コルタは輝く銀の砲を腰から抜き放ち、天に掲げた。
撃ちあがる銀の光が、王宮の闇を翔る。
「光騎士、緊急召集弾だ。
一刻も早くレイティアルト様のもとへ!」
頷いたリイはセレネの茂みに駆け戻り、レミリアの小さな手を握りしめた。
「レミリアさまはどうか宮殿でお待ちください。
レイティアルトさまを必ず、命にかえてもお護りします」
リイの目を見つめたレミリアは、あざやかな星の瞳で笑った。
「リイと一緒に行く」
「レミリアさま!」
細い指が、リイの指をにぎる。
「私は戦力になる。兄さまを守りたい。
それに宮殿は危険だわ。
ラトゥナの手の者が充満してるはずよ。
今度こそ殺されちゃうかもしれない」
レミリアの言葉は、真実だ。
ラトゥナがロエナの光国を望むなら、レイティアルトもレミリアも殺すに違いない。
レミリアを一人残すのは、危険だ。
「レミリアさまの御身に危険が及びそうなときは、コルタにレミリアさまの警護を頼み、俺がレイティアルトさまの元へ行きます。
いいですね」
レミリアは細い指を腰に当てる。
「わらわを誰と心得る。
始祖レイサリアの血を継ぐ千年光国レイサリアが王女、レミリア・レファーリア・レイサリアなるぞ!」
ふんぞり返るレミリアの瞳が輝いた。
「リイより強いわ」
きらめく星の瞳に、光騎士二人の目がまるくなる。
「行くわよ!」
拳を掲げるレミリアに、こんな時なのに笑顔がこぼれる。
駆けだす星のひめの踵を、追いかけた。
夜の雪に沈む、白亜の宮殿を駆け抜ける。
闇に溶けるように潜み、襲いくる刺客を、先陣を切るリイの剣が光となって斬り裂き、
「来いやあ!」
突撃する敵を、コルタの白銀の盾が止め、
「我が眼前の敵を滅ぼせ!
ヴィゼリア!」
レミリアの銀の炎が焼き尽くした。
レミリアの魔術が素晴らしいのは知っているが、凄まじいのはコルタの防御だ。
中々手の内を明かしてくれないコルタの、リイとは違う鍛えられ方にようやく納得した。
小柄で愛らしい美少年コルタが掲げる銀の盾は、襲い来る刺客の猛攻を完璧に止めた。
凄まじい剣戟を受けてさえ、一歩も下がらない。
その衝撃と風圧から守るようにコルタの周りを闘気が取り巻いて、胡桃の髪が舞いあがる。
「…………すごい」
茫然と呟くリイに、コルタは胡桃の瞳をひらめかせた。
「えへへえ。
惚れなおした?」
こんな時もいつものコルタに、笑みが零れる。
うん、と頷こうとしたリイは、吹きつけるブリザードに固まった。
………………花のきみの星の瞳が…………恐ろしいことになってる…………
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