僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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ほんもにょ?

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「いらっしゃい」

 しゃがれた声で迎えてくれる、おじいちゃんを、ムニャといっしょに僕は見あげる。

 そうっと見回してみた店は飴色の家具で統一された落ちついた雰囲気で、育てられた鉢植えから緑の葉っぱが伸びて色どりを添えていた。

 すぐに目に入るのは、てんびんだ。
 磨きぬかれ、隣に置かれたちいさな重りや大きな重りといっしょに、冬の朝のひかりをやわらかに弾いた。

 そのてんびんの奥の壁には、王家から承認を受けた認可証が掲げられ、ふしぎな虹色にきらめいていた。
 ひかりを振りまくように、魔力が揺らめく。

 下町のおじちゃんが僕に、ほんものの店と、にせものの店の魔紋を見せてくれたから、知っている。
 にせものは魔力が通っていないから、揺らめかない。

 ぴょこんと僕は、跳びあがる。

「ほんもにょ!」

 指して叫ぶ僕に、おじいちゃんが笑う。


「よく知ってるなあ。ちっちゃいのに感心だ」

 しわの手をのばして、僕の頭をなでてくれた。

「な、なでなで……!」

 びっくりした僕に、おじいちゃんは、あわてたように手を引っこめる。


「ああ、ごめんよ、いやだったかい?」

 ふるふる首をふる。

「び、びっくり、した、の。ぼく、ほめて、もらぅ、こと、なくて……」

「僕が、ほめたよ!」

 すねたみたいに唇をとがらせるムニャの頬が、ほんのり朱い。

「……むーちゃん? おこ?」

 首をかしげたら、首をふりかけたムニャが止まる。

「……ちょっと、むっとした」

「ごめんなしゃい?」

 首をかしげたら、ムニャが首をふる。

「ぽては、なんにもわるくない……!」

 叫んだムニャが、僕の頭を、なでなで、なでなでしてくれる。


「い、いや、ほんとうに、すまなかった……!」

 お店の奥で、おじいちゃんが、あわあわしてる。



 こほんと咳払いしたムニャの、おこが治まったみたいなので、僕はおじいちゃんを振りかえる。

「ぴかぴか、りょうがぇ、できましゅか?」

「金貨かな。もちろん」

 微笑むおじいちゃんの目を見つめた僕は、こっくりうなずいた。

「ムニャ、してみゆ?」

「う、うん。あ、あの、こ、これを……」

 おこが治まったら、内気さんになったらしいムニャが取りだした、ぴかぴかに、おじいちゃんの目がまるくなる。

「……これは……」

「だめ、でしゅか?」

 眉をさげる僕に、おじいちゃんは、手をあげる。

「ちょっと待っておくれ」

 磨き抜かれた、てんびんの右のお皿に、おじいちゃんがムニャのぴかぴかを置く。
 左のお皿に、店の奥から取りだした、紋様の異なるぴかぴかを置いた。

 ムニャのぴかぴかをのせたお皿が、わずかにさがる。

 ちいさな重りをとりだしたおじいちゃんは、左のお皿に重りをのせた。

 ぴったり、つりあう。

 確かめるように見つめたおじいちゃんは、つめていたのだろう息を吐きだした。

「これは王陛下から直にたまわる金貨だね。意匠が違う。誰も売らない。
 換金するのは家が潰れるとか、しないと生きていけないとか、そういう切羽詰まったときだけだ」

 僕はムニャを見あげる。
 さみしそうに、ムニャは微笑んだ。

「換金しないと、今日のご飯もありません」

「それは──」

 おじいちゃんの白い眉がさがる。

「……うちは小さな両替商でね、ふつうの金貨の1.5倍しか出せない。それでも換金するかい?」

 僕はムニャを見あげる。
 ムニャはうなずいた。

「お願いします」

「わかった。金貨1枚で銀貨100枚になるところを、150枚で渡す。すこし待ってくれ」

 確かめるように僕を見るムニャに、うなずく。

「おかね、100まぃ、きらきら、1まぃ。
 ぴかぴか、1まぃ、きらきら、100まぃ! きいた、こと、あゆ!」

 ぴかぴかなお金なんて、一生見ることがないと思っていたのに、ムニャが見せてくれた。
 覚えたことが役に立つなんて、すごい!

「てすうりょ、1まい。
 にせもの、りょうがぇ、かぞえさせて、くれなぃ。にせもの、まぜゆ。しかられゆの、ぼくたち。きけん、なの!」


「ぽて、ほんとうに、すごい!」

 夜の瞳をまるくした、むーちゃんが、僕を抱っこして、笑ってくれる。


 なぐられたことも、けられたことも、叫ばれたことも、なにもかもが、しゅわしゅわ溶けて。

 あなたにつながる、ひかりになる。







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