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舞踏会編だよ!
ひかりのきみ
しおりを挟む光の海で、ロロァが踊っている。
ちいさな手をあげて、くるりと回って、透きとおる声で、歌ってくれる。
皆が歓声をあげて、手を叩いた。
『わがきみ♡』心をこめて描いたうちわを振りながら、透夜は泣いていた。
ロロァは、悪役令息だ。
ひどいことをした罰として悲惨な目に遭うことを楽しまれる存在で、未来は無残な最期しかなかった。
でもロロァを陥れる人は、きっと、もういない。
大陸の覇権をにぎるドディア帝国の舞踏会で、こんなに大勢の人を前に、リトとノィユといっしょに歌って踊るロロァは輝いて、まるで主人公だ。
……ロロァはきっと、もうひとりでもやっていける。
もう透夜は、いらないのかもしれない。
輝くロロァに、うれしい気もちと、さみしい気もちが押し寄せて、泣いてしまった透夜の隣で、ヴィルも、ジゼも、リトのご両親も泣いていた。
ああ、皆、だいすきな人が輝いているのは、うれしくて、さみしくて、痛い。
だからこそ、もっと、あいしてるが輝いて。
もっと、傍にいきたくなる。
「とーや、僕、ちゃんと、おどれた?」
駆けてきてくれるロロァを、抱きとめる。
「……完璧でした。歌声も、とっても透きとおって、輝いてた。……ロロァさまは、もうおひとりでも──」
くしゃりと透夜の視界が揺れる。
おおきな藍の瞳を瞬いたロロァが、笑う。
「皆、ひとりで、やっていけるよ。
でも僕は、とーやと一緒がいい」
ちいさな手で、抱きしめてくれる。
「とーやは?」
「わがきみと、いっしょが、いいです」
すがるように、抱きしめた。
あなたが羽ばたいて、遠いところに行ってしまおうとするなら、一緒に飛べるようにがんばるから。
だからずっと、おそばにおいてください。
俺は、あなたのものだから。
舞踏会は大成功!
ノィユとヴィルへの攻撃は未然に防げたし、ネメド王国への帰路も、よい子の隠密団の皆で護衛して掃討したのでだいじょうぶ。
最初に提示されていた報酬も目が飛びでるほど高額だったのに、異世界の踊りがあまりに斬新で、ものすごい話題になって、ネメド王国との親善が爆発的に進みそうだということで、さらに報酬が、2倍に!
「きゃ──♡♡♡」
これで、よれよれになった魔導士の皆も、なかなか人間らしく戻れない元暗殺者の皆も、食べていけるよ!
もだえた透夜は、はっとする。
「いやでも、天才魔道具士ノザさまと、ノィユとリトたん、わがきみが頑張ったんだよ」
「作詞作曲振りつけトゥヤだろう」
ジゼに突っこまれました。
……そうでした。忘れがち。
「また困ったときはお願いする賃も入ってる」
ふうわり笑ってくれるルァル殿下、前世の最愛の推しが、尊いです──!
「とーや、うわき──」
ぷっくりふくれるロロァを、抱きしめる。
「まったく全然してません。わがきみひとすじですから」
ちゅ
ちっちゃなおでこに口づけて、笑う。
「これだけお金があったら、皆の治療費も出るから、ロロァさまの負担が減る!
土地を買って、畑を作って、訓練場を作って、鳥麺屋を充実させて、元暗殺者の皆が回復したら就職もあっせんしたい!」
夢は、どんどんふくらんで
「トゥヤについてく」
「ね!」
常葉が、藤が、柳が、紅蓮が、空が、山吹が、皆が笑ってくれる。
「ずっと、いっしょだからね、とーや」
ロロァが、笑ってくれたら
「はい、わがきみ」
どこまでだって、ゆける気がするのです。
────────────────
半年ものあいだ、ずっと読んでくださって、ありがとうございました!
お気に入りや、いいねやエール、ご感想に、とても励まされて、とてもうれしく、あっという間の半年でした。
びっくりなのですが、透夜とロロァがお気に入り2900に……!
いやすぐ減るかもしれないのですが(笑)今は!(笑)
ダークな気もちは全然なかったのですが(笑)ダークファンタジー? みたいな感じになって、せっかくの悪役令息なのに(笑)ぜんぜん悪役令息じゃないロロァと、チートな透夜のお話で(笑)書いてる人はとても楽しかったのですが、連載しているときは、あんまり皆さまのおすきな感じじゃないのかなと思っていたのです。
もっとポイントが低いお話を連発したので(笑)透夜とロロァがどれだけ頑張っていて、どれだけ読んでくださった方がいらしたのかを知りました。
感謝の気もちでいっぱいです!
ありがとうございます!
舞踏会編はこれで完結です。
今、『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』というお話に透夜とロロァとよい子の隠密団の皆が出張しているので(笑)せっかくなので、そのお話を、ちょこっとだけ、向こうのお話が終わるころに? 更新できたらな、と。あと季節のお話とか、何か思いついたら更新できたらいいなと思います。
ずっと透夜とロロァといっしょに冒険してくださった、あなたさまに、心から感謝もうしあげます。
ほんとうに、ありがとうございます!
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