【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ

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舞踏会編だよ!

教えるよ




「よぉし、ダンスも曲も演出もかんぺき!
 というわけで、俺は応援しよう」

 いそいそ推しうちわを作りはじめる透夜に、ジゼとヴィルが瞬いた。

「トゥヤ、それは?」

「?」

 ふしぎそうなふたりに、透夜は、作りかけのうちわを掲げる。

「ここに推しの名前を書いて、応援するんだ。こんな感じ!」

『わがきみ♡』ちゃちゃっと描いた透夜が、うちわを振る。

「おお!」

 ジゼとヴィルの目が、きらきらしてる。

「つくる」

 ヴィルが、やる気だ!

「では俺も」

 ジゼも、やる気だ!

「面白そうだな」

 のぞきこんできたルァル殿下にも、透夜は推しうちわの作り方を伝授した。


「俺の場合は『わがきみ♡』ですが、ジゼさまの場合は『リト♡』ヴィルは『ノィユ♡』だな」

 ついヴィルには常体で話してしまう。当たり前みたいにヴィルがうなずいてくれるから、よしとしよう。

 ……だめだったかな? 目で聞いてみたらルァル殿下が身を乗りだした。


「俺もつくる。だいすきな方の名を入れるのだな」

「そうです。ルァル殿下は?」

「……ないしょだ」

 くぅ……!

 リアルな推しが、恋をしている──!

 切ないけど、尊い──!

 とりあえず拝んだ。


「俺たちにも作り方を教えてくれないか」

 涼やかな、やさしい声なのに、圧倒的すぎる魔力に圧し潰されて死ぬかと思った。

 息をのんだ透夜が、ぎょっとして振りかえる。
 目の前のヴィルも、硬直していた。

 背後に立たれたことさえ、わからなかった。
 まるで気配がしなかった。
 そのうえ、この喉をおしひしぐような魔力だ。

 透夜とヴィルが力をあわせて闘っても、勝てない。

 すさまじい、人間を遥かに凌駕する力だ。

 ぼうぜんと見あげたら、真紅の瞳が伏せられる。

「……だめ、か……?」

「ちょっと! 教えてくれるくらい、いいでしょ!? うちの可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛いザィハをいじめないでくれる!?」

 ザィハをかばうように前に出てきたのは、きらっきらのかんばせの……いやこれ、ほんとに光ってない……!?
 ほんとうに輝いてる人の、膨大な魔力に、圧倒される。

 ……この人にも、ヴィルと力を合わせたって勝てないだろう。

 なんだこの人たち──!

 きらきらしすぎだ!
 絶対、絶対、人間じゃない──!

 仰け反って硬直した透夜の前に出たのはジゼだ。


「ご来訪、心より感謝もうしあげます、ザィハさま、ラヴァリアさま」

 …………ラヴァリアって言った……?

 この世界の伝説の光の精獣……?

 な、なんてものが来るの、ドディア帝国──!


 ひきつる透夜とヴィルの前で、ジゼが微笑む。

「リトのご両親だ」

 ……………………。

 リトたん、かわいいだけじゃなかったね。
 ご両親、とんでもなかったね。

 そりゃ光魔法、使えるよな──!

 主人公よりチートじゃないか……!

 驚愕の絶叫をのみこんだ透夜は、ひくひくする頬で微笑んだ。


「じゃあ皆で、推しうちわを作りましょう」

 魔王っぽい方と、伝説の精獣と、大陸最強の騎士と、大陸を支配する帝国の帝太子と一緒につくるのが、推しうちわだよ──! どうなってるの!?

 しかも教師が自分なんですけど──!


「もしかして、振るの? 光るようにしてあげようか」

 魔道具の天才ノザも来て、推しうちわが、推しの瞳の色で光るようになりましたよ! なんだこれ、すごい!


「皆で、踊るんです。ぜひ、応援してください」

 透夜が言わなくても、めちゃくちゃ応援してくれそうな方々に微笑んだ。

「異世界の踊りか」

「楽しみにしてる」

 ぜんぶ、ご存知みたいです。さすが伝説。







 わがきみロロァさまと、リトたんとノィユが踊るのは、舞踏会の最後だ。

 それまではドディア帝室招聘舞踏会の最高指揮官だというジゼとリトが、招待した外国からの諸侯や国内の高位貴族、大商会のトップなどにあいさつして回るらしい。

 透夜とよい子の隠密団の皆は、闇衣で会場に溶けて警護かな、と思ったら、皆でおそろいの闇色の燕尾服みたいな、腰からやわらかにすそが広がるかっこいー服をドディア帝国が(たぶんルァル殿下が)作ってくれました!

「おぉお!」

 よい子の隠密団の皆が、はじめてのつやつやの衣に、真っ赤になってる。かわいい。

 今までずっと、食べ物と住むところで手いっぱいで、服にまでお金をかけてあげられていなくて、ごめんよ……!

「とーや、おそろい!」

 飛び跳ねてくれるロロァが、透夜の顔が溶けるほどかわいい。







 舞踏会でいちばんにあいさつされたのは、敵国ネメド王国のノィユとヴィルだ。

 なごやかだった舞踏殿がざわめくほどの衝撃だったらしい。

「ネメド王国より、ヴィル・ヴァデルザさま、ノィユ・バチルタさま、ロダさま、ようこそ、ドディア帝室招聘舞踏会へ。最高指揮官を務めておりますジゼ・ディオ・ジェディスにございます」

「リト、で、ござ、まし」

 ぽふぽふしてるリトたんが、かわいすぎる。
 緊迫が一気に、なごんだよ。さすが、もふもふ!


「ご招待、ありが、とう。ヴィル・ヴァデルザ、です」

「お招きくださいましたこと、恐悦至極にございます。ノィユ・バチルタにございます」

『ごめん、3歳なノィユのほうがしっかりして見えるぞ、がんばれ、ヴィル!』

 目力を送ってみた。
 ヴィルが、ぷるぷる首を振ってた。

 無理なんだって。わかる。

 ちっちゃなノィユが、ちっちゃな胸を張る。

「皆々様にはネメド王国に対する並々ならぬ、わだかまりがあるかと存じます。それは我らも同じこと。それを乗り越えて、ドディア帝国とネメド王国との親善が叶いますよう、尽力する所存にございます」

 ドディア帝国の敬礼で膝を折るノィユは、完璧だった。ヴィルが隣で拍手してた。わかる。

「親善の証に、舞踏会の最後で、ドディア帝国のリトさまと、バギォ帝国のロロァさまと一緒に踊らせてください」

 微笑むノィユに、ぴょこんとロロァが飛びあがって、あわてたように敬礼してた。かわいい。

 ジゼがやわらかに微笑んだ。

「ぜひ」

「がんば、ましあ!」

 ぽふぽふリトたんが、癒しです。


「がんばり、ます!」

 闇色の衣をまとい、真っ赤な頬で手をあげる、ちっちゃなわがきみが、今日もさいこーにかわいーです!








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