【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ

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舞踏会編だよ!

だいすき

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「ノィユさまは、故郷の話をしたいのでしょう。なら昼間に、伴侶のヴィルさまと一緒にお茶でもいかがでしょう」

 微笑んでみた透夜に、ノィユはヴィルを見あげる。

「あ、あの、前の世界の話をしたくて……ヴィルは訳がわからないだろうし、あの、あんまり、こちらの世界の人に聞かせるのは、よくない、かと思って……」

 電気とかビルとかスマートフォンとか色々、機械文明? そういうのの話を、転生者以外にするのをためらうのは分かる。

 悪気なんて全然なくても、ちょっとした拍子に『それノィユが言ってた』とか『ノィユなら知ってるかも』とか『天才的なひらめき!』とか技術革新を思いがけず誘発したりすることを心配してるんじゃないかな。


 ノィユの言葉にしょんぼり眉をさげるヴィルに、ちっちゃなノィユが抱きついた。

 こしょこしょふたりでお話してる。かわいい。

 前世持ちを理解してくれる伴侶だなんて、さすがヴィル。


 強いなあ。
 闘いたいなあ。
 ちっちゃな3歳のノィユがほんとに大すきで、守りたくて、やさしいんだろうなあ。

 ぽうっとしてたら

「とーや!」

 ちっちゃなロロァさまが、抱きついてくれました。

「ぼ、僕も、とーやのこと、知りたい」

 ちっちゃな手で、紅い頬で、想いを伝えてくれる。

 まっすぐな藍の瞳を見つめ返した透夜は、うなずいた。

 隣のふあふあリトも、決意した目をしている。



 前世のことを、ちゃんと話そう。



「わがきみ。夜に、お時間、いいですか」

 ささやいたら、真っ赤な頬でロロァがうなずいてくれた。



 治水ダムの見学を終えて、市場で売っている野菜やお肉をめちゃくちゃノィユが観察したら、本日の宿にご案内です。

 敵国との国境の町なので、ドディア帝国としては立派な宿屋ではないらしいけれど、ノィユは

「めちゃくちゃ立派です──!」

 踊ってくれた。

 ドディア帝国の『立派じゃない』は、バギォ帝国の『めちゃくちゃ立派』だよ──!

 ロロァも、よい子の隠密団の皆も踊ってた。

 ちっちゃい皆が、輪になって踊るとか、かわいすぎる……!

 と思ったら、ふあふあ獣人リトまで、ぽふぽふしっぽで一緒に踊りはじめたよ──!

 ちょ、かわいいの暴力──!


 ジゼも、ヴィルの執事だというおじいちゃんロダ(かなり強い)も、透夜も、もだもだした。
 ヴィルも赤い頬で、ちょっと踊りたそうにしてた。かわいい。




 警護はよい子の隠密団の皆が交代で立ってくれる。

「ちょっと、わがきみと話をしたくて。常葉と柳、俺の代わりにしばらくお願いしてもいい?」

 聞いた透夜に、常葉の緑の瞳が輝いた。

「おやつ! おやつ作って!」

 常葉はタダではお願いを聞いてくれないみたいです。柳もこくこくしてる。

「……んー、じゃあ、帰ったらドーナツでも作るか!」

「どーなつ??」

「楽しみにしてて」

 笑う透夜に、常葉も柳も胸を叩いてくれた。



「精霊さん、ちょっと防音の結界張ってくれる?」

 透夜とロロァ以外が出払った宿屋の部屋で呼びかけた透夜に、精霊さんたちがきらきら揺れる。

『どーなつって何!?』

 大切なのは、そこらしいよ。

「今度、皆に作ってあげる!」

『防音!』

『防音!』

『してあげるー!』

 キィン──!

 結界の精霊さんが輝いて、音を遮断する結界が、透夜とロロァを包みこむ。

 寝台に座った透夜は、ロロァを抱きあげてひざに座らせた。

「えへへ」

 きゅう、と抱きついてくれるわがきみが、たまらなくかわいいです。

 短い藍の髪をやさしくなでた透夜は、ちゃんとロロァに話したことがなかった前世を口にする。


「俺が時々言う前世っていうのは、俺がこの世界で生まれる前の、別の世界の話なんです」

「……うまれる、まえ……?」

「死んだら、また生まれ変わってくるのかもしれない。俺には、別の世界で生きた記憶があるんです、ロロァさま」

 藍の瞳が見開かれて、透夜を見あげる。

「透夜、というのは、前世の名前です。この世界の俺は49番だったから」

 藍の瞳が、くしゃりと歪んだ。

 ちいさな手が、透夜を抱きしめる。

「とーや」

「……きもちわるい、ですか……?」

 そっと聞いた透夜に、ロロァは首を振った。
 ぶんぶん振った。


「とーやは、まえの世界で、しあわせだった……?」

 ちいさな手が、透夜の頬をつつみこむ。

「よい子の隠密団といっしょに、ロロァさまのお傍にいられる今のほうが、しあわせです」

 ささやいた。

 真っ赤になったロロァが、笑ってくれる。


「とーや、だいすき!」

 ちいさな手で、抱きしめてくれる。


「……俺が昔、無理やり暗殺をさせられていても、俺に別の世界の記憶があっても……?」

「どんなとーやも、とーやだから」

 赤い頬で、笑ってくれる。


「とーやが、僕を、たすけてくれた。生かしてくれた。ずっとそばで、守ってくれる。忘れることなんて、絶対ない」

 おおきな藍の瞳をほそめて、笑ってくれる。


「だいすきだよ、とーや」


 泣いてしまのうは、ゆるしてください。



 ……その言葉を聞くために

 あなたに、逢うために

 生まれてきたんだ







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