119 / 132
舞踏会編だよ!
とろける朝
しおりを挟む透夜とよい子の隠密団の皆で警護、兼、監視を行ったけれど、敵国ネメド王国の使節に、おかしな動きはない。
ネメド王国からの攻撃の気配も、侵略の様子もない。
結界の精霊さんに頼んで、宿屋の食堂の一角に防音結界を張ってもらった透夜は、朝の光とともに朝食に降りてきたジゼを招いた。
「あまり油断するのはよくないかもしれませんが。率直な意見として言わせていただくと、ノィユとヴィルは腹芸ができる質ではないでしょう。ヴィルに仕えるロダは、ヴィルを裏切ることはないでしょう」
報告する透夜に、ジゼは蒼の瞳をほそめる。
「すこし話しただけで、早計ではないか?」
透夜はちいさく笑う。
「真っ暗な人は、見たらわかるでしょう。ジゼさまも」
蒼の瞳を瞬いたジゼも、ちいさく笑った。
「おそらく、ネメド王国に攻撃や侵略の意図はないかと」
「そう願いたいものだ」
微笑んだジゼが手を挙げる。
「ノィユとヴィル、ロダの性質は把握した。だがゆめゆめ警護を怠ることのないように」
「御意」
胸に手をあてた透夜は、首をかしげる。
「ゆうべは、眠れませんでしたか?」
「……いや……ああ、すこし」
ジゼの瞳が、ふわふわのしっぽを追いかける。
「リトと何かありましたか?」
蒼の瞳に射られた透夜は『色恋的な意味で、リトを狙ってるわけじゃないですよ!』目に籠めながら、首を振る。
「警護対象の状況を正確に把握することは、守るためにとても有用なのです」
「……なるほど」
ジゼの唇が、笑みをえがく。
「リトのことを、ひとつ知るたび、自分の想いの深さを自覚する。楽しいよ。とても」
微笑むジゼが、愛にあふれていて
「おあよ、ござまし、透夜しゃん」
あいさつしてくれるリトを、ジゼの腕が抱きしめる。
「じ、ジゼしゃま、あの、朝の、ごあぃしゃつ、なのでし。ちゃんとすゆ、でし!」
ジゼをたしなめるのに、しっぽがぶんぶんのリトに笑った。
抱っこされたのが、めちゃくちゃうれしいのだろう。しっぽは正直だ。
リトのしっぽを目にしたジゼが、とろけてる。
「おはよう、リト。よかったな、愛されてて」
ふわふわの耳まで赤くなったリトが笑う。
「あい。透夜しゃんも」
透夜の服のすそをにぎるロロァに、透夜もとろけて笑った。
「早起きですね、わがきみ」
「……とーや、いない、から……うわき、かと、思って……」
人聞きがわるい!
「報告です。よい子の隠密団の任務ですよ」
「そ、そか」
おっきな藍の瞳で、照れくさそうに笑ってくれる。
「ロロァさまが心配しなくていいくらい、めいっぱい愛しています」
ぎゅう
抱きしめたら、真っ赤な頬で笑ってくれる。
「とーや、だいすき!」
最愛を抱きしめたら、食堂に降りてきたノィユとヴィルが笑った。
「いちゃらぶだ! 僕も!」
ぎゅう
ヴィルに抱きつくノィユに、ヴィルもとろけて笑ってる。
「なんかさ、警護する意味がわからなくなってきたんだけど、僕だけ?」
常葉が首をかしげてる。
「では本日から、帝都に向かいながら、農地をご案内する、ということでよろしいでしょうか?」
微笑むジゼに
「畜産や酪農も拝見したいです!」
ちっちゃなノィユが両手をあげてる。
全然貴族らしくないのだろう希望にジゼが一瞬ひきつって、すぐにやわらかな笑みに戻った。
「領地改革してるんだっけ」
笑う透夜に、ノィユも笑う。
「そうなんだ! ぜひぜひ、ドディア帝国の農業を拝見したいですー! よろしくお願いしますー!」
ちっちゃな3歳が、やる気です。
530
あなたにおすすめの小説
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 ほぼ毎日お話のことを登場人物の皆が話す小話(笑)があがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる
ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。
この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。
ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる