兄をたずねて魔の学園

沙羅

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17 ~天Side~

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「じゃあ……今の俺がお願いすれば、『サポーター』制度は廃止にしてもらえるんでしょうか」

そんな秋弥の言葉を聞いて、急に現実に引き戻された感覚がした。
恋を自覚したことと、秋弥が自分のことを思い身を張ってまで守ってくれた事実。さすがに両想いだと思い込むほどには浮かれてはいなかったけれど、それでも判断力が鈍るまでには浮かれていた。
同じ「好き」ではないにせよ、「好意」は抱いてもらえていると思っていた。

でも、それは幻想だった。

もともと俺と秋弥は、生徒会長と『サポーター』というだけの関係。
たとえ彼に喜んでもらうために『サポーター』制度を廃止したとしても、その後の俺と秋弥の関係はどうなる……?
交わる可能性など万に一つもない状態に、戻るだけだ。
彼は目的を達すればもう、俺の隣に居る必要がない。

……どうしてこんな簡単なことに、気付かなかったのだろう。

口から出てしまった言葉はかき消せない。好きだと述べたことを冗談だと誤魔化すなんて、あまりにもカッコ悪すぎる。
だからといって、秋弥を手離すなんて俺にはできない。

なんとか、なんとか現状を打開する術はないだろうか。自分でもずる賢いところがあると自負している脳みそをフルにまわして、様々な手を考える。
思いついた中でも最善だと思われた方法は、あまりにも卑怯な手段だった。

「『サポーター』制度廃止の件だけど……いくら会長が言うことでも、根回しも無しに伝統を潰そうとすると反発が出てしまう」
これは、全くの嘘ではない。嘘ではないけれど、誇張表現ではある。
確かに元生徒会長と真くらいは脅威になりえるが、他の人間の反発程度なら今動いたところでいくらでもかき消すことができる。そもそも秋弥の言う通り、この制度に賛成している生徒よりも反対している生徒の方が圧倒的に多いのだから。

生徒会長として学園全体のことを考えているようで、実際は自分の都合の良いように事実を曲げて無知な新入生に教えているだけ。
「そこまで考えているなんてすごい」とでも言いたげにキラキラした目で見てくる彼が、かわいそうで可愛かった。

秋弥はこの話を信じ込んでいるから、少なくとも1カ月くらいはまだこの関係を続けられるだろう。そして更に関係を引き延ばすために、もう1つの嘘を重ねる。

「だから、まずは会長の人脈を使って、『サポーター』がいかに酷いことをされているかって噂を流すことにするよ。ただそれだと、秋弥は聞かれたくないことを聞かれたり、また噂を本気にした変な輩に襲われたりするなんてことも起こるかもしれない。だから、君には明日からこの部屋だけで過ごしてほしいんだ」

噂の内容が性暴力的な内容であれば、興味本位に聞いてくるバカもいるだろうし、俺たちに一泡吹かせたくて奪ってやろうという気持ちになるバカもいるだろう。
前者については、嘘は言っていない。

でも、その解決策がこの部屋で囲うというのでは笑ってしまう。そんなことをしなくとも、人脈を使って準備さえしっかりしていれば対応は可能だというのに。
普段の自分ならば絶対にやろうとしないこと。なんなら、それをやっていた生徒会役員を心の中で軽蔑していたこと。……授業さえも行かせず『サポーター』と四六時中いる道を自分が選ぼうとしていることが、自分でもおかしくてたまらなかった。

「好き」って、こんなにも思考を狂わせるのか。
今までの自分のポリシーすら、変えてしまうほどに。

この提案を拒まれたらどうしよう。本当は「噂を流すつもりなんて毛頭ないから」、秋弥に外に出られると厄介だった。

もう二度と君が傷ついた姿を見たくないからだと、誠実に泣き落とそうか。彼はそういうのには弱そうだから、まずはその手でいってみるのがいいかもしれない。
それでも無理だったら、どうしよう。今度は自分の知り合いに声をかけて、少しだけ怖い目に合わせようか。そうしたら傷つけ方を自分でコントロールできるし、次は秋弥の方から外に出たくないと言ってくれるかもしれない。
そんな最低な代替シナリオだって、頭の中には浮かんでいた。

「分かりました。天先輩が大丈夫だって判断するまで、ここに居ます」

でも彼が発したのは、自分のことを信頼しきった言葉だった。

受け入れてもらえて嬉しいのに、そんなに簡単に受け入れるなよと怒りも湧く。彼の信頼を裏切りたくないのに、彼と一緒に居るためには裏切り続けるしかない。

愛しい人と過ごす、矛盾だらけの地獄のような日々が、始まった。
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