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しおりを挟むこの1カ月間嘘をつかれていたと知った時、最初に湧いたのは怒りだった。
兄のああいう姿を見ながら、どうしてそんな先延ばしにするようなことをしたのかと。
でも理由を聞いていくうち、徐々に湧いてきた感情は安堵だった。
告白をしておきながら、俺と離れる準備は淡々とこなす彼を信用しきれていなかったから。実際は準備なんて出来ていなくて、1日でも俺と居ようとした結果だと分かったから。
「先輩の言葉から、ずっと逃げててすみません」
好きになった瞬間、離れることになるのが怖かった。
この学園での生徒会というものを毎日見ていれば、『サポーター』という立場なしに彼と居るのは無理だと分かっていたから。
あんなに理解できないと思っていた『サポーター』も、恋人を周りの目から守るために作られたものが起源だと思うとしっくりくるとまで思った。
「俺も、『サポーター』がなくなって、天先輩と一緒に居る未来が想像できませんでした。天先輩は何でもできるし、人気者だし、その上思ったより性格悪くないし。普通に生活してたら俺とは交わらない人です。そんなすごい人からの「好き」は正直気の迷いだと思っていましたし、長続きしないと思ってました。だから、返せなかったんです」
「そんなこと……」
「はい。天先輩も離れないようにって考えてくれてるのを知って、おかしな話ですけど、少しだけホッとしました」
「そんな風に言われると、期待しちゃうんだけど」
「期待してください」
最初は、冷徹な人だと思った。
ちょっと嘘をついたくらいですごく圧をかけてくる人間不信だし、自分にメリットがないからといって困っている人を見て見ぬふりする合理主義者だし。
良いところなんて、1つもないと思っていた。
でも天先輩が孤独な人だと知ったとき、それは自分を守るための力なのだと分かった。
環境によってつくられた殻の中を覗いたとき、彼が本来は優しい人なのだと知れた。
「好きです、天先輩のことが」
「う、そ」
「嘘なんか、つく理由がないです。兄のことは何もなくてもどうにかしてくれる予定なんでしょう?」
そう言って腕を広げれば、天先輩が抱き着いてくる。いつもは自信満々なこの人が自分なんかに縋りついてくるのが、面白くて可愛かった。
「なんで笑うの」
「だって、先輩がなんだか小さく見えるから」
少しの間じゃれついて、お互いを確かめ合う。
気持ちが同じなんだと安心した俺は、みんながハッピーエンドになる未来を夢見ながらこんな提案をした。きっと彼なら、実現させてくれるから。
「『サポーター』制度、廃止にするんじゃなくてルールを厳しくしませんか。俺たちや……うまくいっている生徒会の人たちが、離れ離れにならないように」
「なるほどね。両想いの『サポーター』なんて自分には縁のないものだと思ってたから、検討してなかったな」
「それは……伝えるのが遅くなってすみません。ともあれ、現状、『サポーター』制度は生徒会役員が上の主従関係になってます。それを『サポーター』自身も受け入れているんならいいんですけど、せめて契約の破棄だけは対等な制度に変えられないかと思って」
「んー。制度として明文化はできると思うし、運用も難しくはないとは思うけど、断られた時の生徒会役員からの報復が怖いね。俺が力を持っているうちは簡単にクビに出来るからいいけど、それを代々制度化するとなると……」
「役職の剥奪とかは、やっぱりできないもんなんですかね」
「この学園で一番力を持っているのが生徒会だからねぇ……。会長がロクでもない奴だと厳しかったりするかも。まぁでも、生徒会役員を決めるのも結局は生徒たちだから、残りの任期で価値観を築き上げるしかないね」
そのあとも『サポーター』の意思確認はどのように行うか、その頻度はどれくらいにするか。などなど、明日の発表に向けて2人で意見を出し合った。
寄り添って精一杯考えてくれる天先輩は、いつも以上にカッコ良く見えた。
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