兄をたずねて魔の学園

沙羅

文字の大きさ
20 / 24

20

しおりを挟む

この1カ月間嘘をつかれていたと知った時、最初に湧いたのは怒りだった。
兄のああいう姿を見ながら、どうしてそんな先延ばしにするようなことをしたのかと。

でも理由を聞いていくうち、徐々に湧いてきた感情は安堵だった。
告白をしておきながら、俺と離れる準備は淡々とこなす彼を信用しきれていなかったから。実際は準備なんて出来ていなくて、1日でも俺と居ようとした結果だと分かったから。

「先輩の言葉から、ずっと逃げててすみません」

好きになった瞬間、離れることになるのが怖かった。
この学園での生徒会というものを毎日見ていれば、『サポーター』という立場なしに彼と居るのは無理だと分かっていたから。
あんなに理解できないと思っていた『サポーター』も、恋人を周りの目から守るために作られたものが起源だと思うとしっくりくるとまで思った。

「俺も、『サポーター』がなくなって、天先輩と一緒に居る未来が想像できませんでした。天先輩は何でもできるし、人気者だし、その上思ったより性格悪くないし。普通に生活してたら俺とは交わらない人です。そんなすごい人からの「好き」は正直気の迷いだと思っていましたし、長続きしないと思ってました。だから、返せなかったんです」
「そんなこと……」
「はい。天先輩も離れないようにって考えてくれてるのを知って、おかしな話ですけど、少しだけホッとしました」

「そんな風に言われると、期待しちゃうんだけど」
「期待してください」

最初は、冷徹な人だと思った。
ちょっと嘘をついたくらいですごく圧をかけてくる人間不信だし、自分にメリットがないからといって困っている人を見て見ぬふりする合理主義者だし。
良いところなんて、1つもないと思っていた。

でも天先輩が孤独な人だと知ったとき、それは自分を守るための力なのだと分かった。
環境によってつくられた殻の中を覗いたとき、彼が本来は優しい人なのだと知れた。

「好きです、天先輩のことが」
「う、そ」
「嘘なんか、つく理由がないです。兄のことは何もなくてもどうにかしてくれる予定なんでしょう?」

そう言って腕を広げれば、天先輩が抱き着いてくる。いつもは自信満々なこの人が自分なんかに縋りついてくるのが、面白くて可愛かった。

「なんで笑うの」
「だって、先輩がなんだか小さく見えるから」

少しの間じゃれついて、お互いを確かめ合う。
気持ちが同じなんだと安心した俺は、みんながハッピーエンドになる未来を夢見ながらこんな提案をした。きっと彼なら、実現させてくれるから。

「『サポーター』制度、廃止にするんじゃなくてルールを厳しくしませんか。俺たちや……うまくいっている生徒会の人たちが、離れ離れにならないように」
「なるほどね。両想いの『サポーター』なんて自分には縁のないものだと思ってたから、検討してなかったな」
「それは……伝えるのが遅くなってすみません。ともあれ、現状、『サポーター』制度は生徒会役員が上の主従関係になってます。それを『サポーター』自身も受け入れているんならいいんですけど、せめて契約の破棄だけは対等な制度に変えられないかと思って」
「んー。制度として明文化はできると思うし、運用も難しくはないとは思うけど、断られた時の生徒会役員からの報復が怖いね。俺が力を持っているうちは簡単にクビに出来るからいいけど、それを代々制度化するとなると……」
「役職の剥奪とかは、やっぱりできないもんなんですかね」
「この学園で一番力を持っているのが生徒会だからねぇ……。会長がロクでもない奴だと厳しかったりするかも。まぁでも、生徒会役員を決めるのも結局は生徒たちだから、残りの任期で価値観を築き上げるしかないね」

そのあとも『サポーター』の意思確認はどのように行うか、その頻度はどれくらいにするか。などなど、明日の発表に向けて2人で意見を出し合った。

寄り添って精一杯考えてくれる天先輩は、いつも以上にカッコ良く見えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

僕を嫌っていた幼馴染みが記憶喪失になったら溺愛してきた

無月陸兎
BL
魔力も顔も平凡な僕には、多才で美形な幼馴染みのユーリがいる。昔は仲が良かったものの、今は嫌われていた。そんな彼が授業中の事故でここ十年分の記憶を失い、僕を好きだと言ってきて──。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった

BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。 にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。

処理中です...