兄をたずねて魔の学園

沙羅

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19 ~天Side~

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嘘で固めて手に入れた、秋弥との2人きりの時間。
それでもこの嘘が長く続かないことは自分でも分かっていて、1カ月を限度にしようと途中で決めた。それまでに彼が自分を好きになってくれないのならば、潔く手放そうと。そうでないと、お互いに不毛な時間を過ごすことになるからと。
もちろん、好きになってくれたとしても、ネタばらしをすれば「嫌い」って言われてしまう可能性だってあるのだけど。

自分を好きだと言った自分を使っているという罪悪感はあるのか、彼は今の学校の様子を聞いてこない。時折、自分の方が話題を振ることで信用を得ていた。

でもそれも、今日でおしまい。
俺は秋弥に、好きにはなってもらえなかった。

「今日の夜、大切な話がある」
自分がいざとなった時に怖気づくのを予想して、昼のうちからそう伝えた。
でも意外に、やっぱり言いたくない、という気持ちはならない。どうせこの望みが叶わないならいっそ、こんな関係壊してしまいたい。そんな諦めにも似た自暴自棄な気持ちが、自分の中に芽生え始めたから。

「ずっと、秋弥に隠してたことがある」
ソファに横並びになって、種明かしを始めた。顔を見ない方が、淡々と事実を伝える酷い人間になれると思ったから。
「隠してたこと、ですか?」
「うん。薄々は気付いてたかもしれないけど、この1カ月間のことは全部ウソ。『サポーター』制度の廃止には時間がかかるとか、俺がそのために尽力してるとか。それは、全部ウソだったんだよ」

「嘘……?」
「うん。『サポーター』制度の廃止なんてね、もとから俺が一言言えば簡単に変えられる話なの。周りの声なんて、この学園では怖くない。俺は、1カ月間の間君のお兄さんを無駄に苦しめ続けたんだよ」
「どうして……そんなこと」

意味なんて考えず、騙すなんて最低だと怒ってくれればカッコもつくのに。
自分で言葉にするなんて滑稽だなと思いつつも、他に良い理由も見当たらない。

「君と、一緒にいる時間を作りたかったからだよ」
秋弥は目を見開いて、それから少し申し訳なさそうな顔をする。もっといじわるをしたくなって、余計な一言を付け足した。
「告白を受け取ってもらえなかった俺では、『サポーター』って関係がなくなったら君とは他人になっちゃうから」

潔く悪者になるつもりが、彼を責めるような言い分になってしまう。
下を向く彼にさすがに申し訳なく思って、理由を語るのはやめた。

「罪滅ぼしになるかどうかは分からないけれど、明日ちゃんと『サポーター』制度は廃止することにするよ。だから、その点は安心して」

明日からは、また1人で生きる生徒会長だ。
人の上に立つことに慣れた優しさを忘れた仲間と、信者のように自分を遠巻きに見る生徒たち。気を抜けば、自分の足元を救おうと虎視眈々と狙っている反生徒会派の人間。
秋弥だけが、自分を自分として接してくれたのに。

「こんな人間と同じ部屋なんて嫌かもしれないけど、今日だけの辛抱だから、赦してね。明日になったら、朝陽たちの部屋に戻してあげるから。顔も見たくないだろうから、俺はちょっと外を歩いてくるよ」

話は終わりだとソファから立ち上がった。扉に手をかけた、その時だった。

「待ってください」

後ろから彼の呼び止める声が聞こえたのは。

「らしくないですよ。俺の言葉を聞く前に逃げるようとするなんて」
「責められるのには慣れてないからね」
「責めるつもりなんて……ないとは言えませんけど、これに関しては俺も共犯です。俺だって、この関係が終わる時のことを考えないようにしていたから」

てっきりお兄さんのことで責められると思っていたのに、彼はそれを共犯だと言う。
彼の思考は、いつまで経っても説明してもらわないと分からないものだなと思った。

「天先輩のことは許せません。兄が苦しむ期間を伸ばしたこともそうだけど、それ以上に、俺にあなたの葛藤を話してくれなかったことが。俺だって、同じ心配をしていたかもしれなかったのに」
「そんなわけ……」
「そうですよね。俺はずっと告白を保留にしていて、天先輩から見たらいやいや一緒に居るようにしか見えなかった。だから、共犯なんです」

「俺たち、もっと話をすれば良かったですね」
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